第79話 ワイバーン討伐(2PT)
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◇◆ ケイタside(ケイタ視点)
「リョウタロウさん! すみませんが、預けてある武器を出していただいてもよろしいですか?」
僕は、リョウタロウさんを呼び止め言う。
「え? あ! はい、このバスターソード(F〇7に出てきた剣)と片刃の剣(柳包丁の大きくしたような形の物)の2本ですよね?」
「はい、そうです。お願いします」
マジックバッグから出してもらった剣を受け取ると、バスターソードをタクミ君へ渡し、他の2本を自分が持つ。
「引き止めて申し訳ありません。皆さんもお気をつけて」
「はい、そちらの皆さんも気をつけてください」
そう言い合い、PTごとに分かれる。
「皆さん、最初にこの剣の説明をします。これは最近開発した超振動ブレードです。この剣の刃の部分にカーボンナノチューブの単層体複数が埋め込んであり、そこが超高速で縦振動する武器です」
「それじゃあ、それで切ればスパッと一刀両断! ってことですか?」
アカネさんは剣を振る動作をする。
「カーボンナノチューブ単体だと上手くいったので、そうなる確率は高いとは思います・・・ですが、この剣は試作品なのです」
「え? 試作品ですか? 完成しているように見えるんですが」
「1度だけ、この剣の前に作ったのですが、耐久性に難があり1度しか使えませでした。僕達の付加魔法を魔鉄には付けられなかったので、今回も1度限りの使用と言えます」
「え? 1度って一振りってことですよね? 不味いんじゃないですか? 大丈夫なんですか?」
「いえ、一振りと言うわけではなく、1度発動すると5分程度は使えます。使用時間5分が過ぎる前に倒さないと危険な状態になりますね」
「でも、ケイタさんは自信あるように見えますから、信じています!」
「ありがとう、アカネさん。この剣も実践で使えば改良の糸口が見出せるかもしれません! タクミ君もちゃんと性能を見極めてください」
「やっぱり僕も前に出るんですか?」
タクミ君が不安そうに言う。
「大丈夫ですよ。僕が囮になり、その隙に首を落としてください。いつもの通りに動けば出来るはずです。お願いします」
「りょ・・りょりょりょ了解です」
「ユカさんとアカネさんは、後方で援護とワイバーンが空に飛び上がらないようにお願いします」
「はい! 任せて下さい! ケイタさん!」
アカネさんが、拳を握り締めて笑顔でいう。
「あの、遠距離から魔法で倒すのがいいんじゃないですか?」
ユカさんが小さく手を上げていう。
「噂ですが、ワイバーンは魔法が効き難いらしいのです。そうなったら接近戦しかありません」
「そうですか・・・解りました。でも、怪我しないでくださいね」
「はい、善処します」
作戦が決まり、僕達はワイバーンに向かって走っていく。
一番近いワイバーンは上空で旋回を続けている・・・獲物を選んでいるのかもしれない。
「作戦通り囮になるので、魔法を撃ちます。地面に降りるまで、皆さんは待機しててください」
そう言い、僕だけワイバーンの下へと駆けて行き「サンダー」を放つ・・・一瞬身じろぎしたがあまり効いていないようだ。
やはり、魔法が効きにくいと言うのは本当のことのようですね。
でも、僕を敵だと認識してくれたみたいですので、作戦通りと言えます!
そう思っていると、ワイバーンは僕を目掛けて滑空してくる。
「罠の警戒もせず、周りを確認もせず、ただ突っ込んでくるんですか・・・知能はあまり高くないようですね」
そうつぶやくと、ワイバーンと自分の間に土の壁を作り出す。
ワイバーンも、すぐに気が付き避けようとしたが・・・時すでに遅く、足から壁に激突し地面を転がった。
やれやれ、頭から突っ込んでくれれば楽だったんですが、仕方がないですね。
そんなことを考えながら、ワイバーンに向けて走り出し、後ろからタクミが走ってくる事を確認する。
ワイバーンは転びながらバタバタと動き、うなり声を上げている。
まだ立ち上がっていないワイバーンの羽に向けて剣を振るう・・・切れないことはないが翼膜は思ったよりやわらかく切りにくい。
普通に切るのは難しいと言うことですか・・・厄介ですね。仕方ない、超振動を使いましょう。
超振動を使うと、それまでが嘘のように翼膜が切れていく。
ここまで違う物ですか・・・楽になったんですから文句も言えませんね。
今の内に、飛ばれないように羽を落としましょう!
そう思い、右羽をずたずたに切り裂いて行く・・・だが、ワイバーンは咆哮を1つすると羽を動かし、翼膜が体に当たり僕は吹き飛ばされる。
転がりながら、ワイバーンを観察する。
羽根を無理やり動かして体勢を立て直しましたか・・・チッ、両方の羽を切りたかったんですがね!
ワイバーンは無理やり羽を動かしたせいで、右羽が折れてぶら下がってる状態になった。
僕が転がった場所にタクミ君が駆け寄り、手を出してくれる。
「やっぱりすごいですよ、ケイタさん」
タクミ君は嬉しそうに笑いながらいう。
「いえ、出来れば両方やりたかったんですが・・・おっと! タクミ君は折れてる羽のほうへ」
ワイバーンは、こちらを見据えて火球を放つ。だがその前に、僕達は左右に分かれて走り出していた。
ワイバーンは羽を切られた怒りもあるのか、僕を見据え咆哮する。
その隙に、ぶら下がっている羽へとタクミ君が近づき、超振動を発動し切り飛ばす。
痛みで、ワイバーンは悲鳴のような咆哮をあげる。
その隙を見て僕も喉に近づき、剣で切ってみるが、肉を切っている・・・と言う程度の感触はあるものの別段切れないこともない。
超振動で切ってもそこまで深く切れませんか・・・厄介ですね。
そんな考え事をしていると、首が持ち上がり、体全体で僕を潰そうとしたのか倒れてくる
不味い! 隙が多すぎたか・・・避けれない!
武器を上に持ち上げ防御するが、爆発音が響き、ワイバーンは僕を避けるように横倒しとなる。
後ろを見ると、ユカさん、アカネさんが、魔法で援護してくれたようだった。
「ケイタさん!」
タクミ君がこちらへ走ってくる。
「大丈夫です! 僕の武器はもう使い物になりません! タクミ君、今のうちに首を落としてください!」
僕は、走ってくるタクミ君を大声で制止する。
「は・・・はい!」
タクミ君はビビリながらも真っ直ぐワイバーンに向かって走り出す。
僕は砕けてしまった剣を捨て、後ろの腰に挿していた山刀とナイフに持ち替え、ワイバーンの首に向かって走るタクミ君を追いかける。
タクミ君は傍から見ても腰が引けているが、一直線に首に向かっている。
ワイバーンは片翼が無いので上手く起き上がれないようだ。
タクミ君は勢いそのままに、横たわっているワイバーンの首目掛けてバスターソードを振り下ろす・・・だが、浅い!
力が入りすぎてしまったのか、少し手前で振ってしまい首を軽く切っただけだった。
「もう1度! もう1度です! タクミ君!」
「はい!」
しかし、ワイバーンは首をもたげ火球を放とうとしてくる。
不味い! どうする!?
ワイバーンの下から土がせり上がり、頭を上向かせる・・・火球はあさっての方向へと飛んで行き、難を逃れる。
「今だ! タクミ! 振り下ろせぇ!」
「りょぉぉぉかいぃぃ!!」
今度はワイバーンの首をきっちりと捉え両断し、血しぶきを浴びながらだが勝利を収める。
「うぉぉぉ!! やった!! やった!! 僕! やったぁぁぁぁ!」
タクミ君は、両手を天に上げ喜びをあらわし咆哮する。
「やりましたね! タクミ君! 本当にギリギリの戦いでした。握っている武器を見て下さい」
僕はタクミ君の手を指差していう。
タクミは武器を握っていた手を見るが、武器の姿は無く掌を開くとボロボロになった破片があるだけだった。
「あ・・・危なかったんですね・・・良かった」
そんな話をしていると上のほうからゴロゴロッと音がなり、土で持ち上げられたワイバーンの頭が2人の上に落ちてくる。
急なことで固まってしまい、2人は避けられずにお腹の上に頭が乗っかってしまった。
「ブフッあっはっはっはっは」
僕は思いっきり笑い出してしまった。
「あっはっはっは」
釣られて、タクミ君も笑い出してしまう。
「最後の最後に気が抜けてクリーンヒットしてしまいましたね。この防具を作って無ければ大怪我しているところでしたよ。家に帰るまでが遠足というのを思い出しますね・・・全く」
「子供のころに良く言われましたね。それが当たっちゃうなんて、ビックリするほど締まらないね」
「まぁ、怪我も無く生きてるんですから良いんですよ。あと、今度から呼び捨てで呼んでください。年齢とか関係なく仲間なんですから」
「ぼ・・・僕のことも呼び捨てでお願いします」
「敬語も使わなくていいですよ、タクミ」
「了解。じゃあ、ケイタも敬語はやめてね」
「そうですね。僕のは癖ですので、なれるまでは無理です。何はともあれ、頭をどかしましょうか」
「了解です。いっせーの」
その後、ユカさん、アカネさんが合流し、血で汚れてしまったため軽くシャワーを浴びることになった。
タオルをもっている人がおらず、体を乾かすのに難儀したが少しぬれてる程度で洋服を着ることができた。
ワイバーンをどうするか考えていると、カナタさんがやってきて、バッグにしまってくれた。
と言うより、カナタさん達はまったく汚れていない。どうやってワイバーンを倒したのだろうか?
僕達みたいに剣を開発していたわけでもなく、どんなことをしたのか・・・いつもカナタさんには驚かされるが、本当に人間なのだろうか?
考えても仕方が無いか・・・
誰も怪我がなく、ワイバーン討伐を終わらせられたのだから、それでよしとしよう。