第78話 ワイバーン討伐(1PT)
ブックマーク・評価していただいている方、いつも読んでいただいている方
本当にありがとうございます。
ワイバーンのイメージは、モン〇ンのリオレ〇スだったりします。
完全に同じ形でイメージはしていませんが、なんとなく解りにくいかと思いましたので書かせていただきました。
10/14 改稿あり 加筆あり
「カナタさん! あれです! あそこを飛んでいる魔物が見えますか?」
リョウタロウさんは、空を指差して言う。
指差された方を見ると、遠くから空を飛んでくる3つの影が見える。
ギュギャァァと言うような咆哮も聞こえる。
やっぱりか・・・ギルドマスターの話を聞いていたときにフラグが立ったのか? まぁ、出会ってしまったものは仕方がない、どうしようかねぇ・・・
「あれってドラゴン!? あれってドラゴンですか?」
「ドラゴンじゃないよ、ワイバーンだよ。良く見て、前足と翼が一緒になってるでしょ?」
「落ち着いて説明しないでくださいよ! 逃げないんですか!?」
コノミさんが、大声で叫ぶと立ち止まってしまった。
「そうだよ~! 逃げよ~!」
アカネさんも、こちらに叫ぶ。
「今のままでは、街まで連れて行く事になりかねません。倒すしかないかと」
ケイタ君が、皆に向けて言う。
「たぶんですが、1番最初に街に向かった人が報告をして増援がくると思います。ですが、大丈夫ですか?」
リョウタロウさんが、不安そうな顔をして言う。
「そうですね。う~んと、じゃあ、3PTに分かれましょう。無理しないで時間を稼いで、街から増援が来るのを待つ。それが1番だと思うけどどうかな?」
「現実的にはそれしかないかと思いますが、冒険者たちが少々邪魔ですね」
ケイタ君が、腕を組んで言う。
「そう言わないで、逃がせるんだったら逃がしてあげてね」
ケイタは面倒くさそうに、ふぅ・・・とため息を吐く。
「飛んでるトカゲ・・・いや、恐竜か? 倒しちまっても良いんだろ?」
ショウマ君が、嬉しそうに笑う。
「絶対に無理はしないでね。怪我したら元も子もないし」
「おう、任せとけ」
ショウマ君が、拳を握り締め言う。
「それじゃあPT編成を言うよ。1PT、俺、タダシさん、ヨシさん、アヤコさん。2PT、ケイタ君、タクミ君、アカネさん、ユカさん。3PT、リョウタロウさん、ショウマ君、ミズキさん、コノミさん、でどうかな?」
「妥当なところではないですか?」
ケイタ君が頷く。
「ああ、楽しくなってきやがった!」
ショウマ君が、左の掌にこぶしを打ちつける。
「1PTが奥の、2PTが真ん中、3PTが曲がって飛んでったやつ、OK?」
「はい」「うん」「ああ」など了承の言葉が聞こえる。
「1番最初に出てったPTが街まで走っているようです。戻ってくるのはいつになるか分かりません。無理はしないでくださいね」
リョウタロウさんが、皆に向かって言う。
「最後に、今ここに居る冒険者達より俺達はたぶん強い。ワイバーンは、セントバードの上位種より少し強いくらいだと思うから、足止めくらいなら十分出来ると思う。皆も無理だけはしないでね! じゃあ、行きましょうか!」
皆がかけだすと、俺達も一番奥のワイバーンに向かって走っていく・・・
「移動しながらですが、タダシさん、ヨシさん、アヤコさん、作戦を伝えます。まずは、俺が前に出て引き付けます。次にワイバーンを濡らしますので、ワイバーンの近くを冷やしてください」
「おいおい、凍らせるって事か?」
タダシさんが、呆れた様に言う。
「あれは、所詮羽の生えたトカゲです。変温動物なら動けなくなりますし、違っても動きが鈍くなるはずです」
「なぁ、カナタの近くで凍らせて大丈夫か?」
「この洋服には、温度調節があるじゃないですか。大丈夫ですよ、思いっきりやってください。ただ、飛びそうになったら土や風での阻害もお願いしますね」
「凍らせて動きを鈍くしたその後はどうするの?」
ヨシさんが、軽く手を上げて質問してくる。
「鼻と口だけ水で覆います。駄目だった場合は首を落としますよ」
「出来るの?」
「そうですね、勝算は7割って所です。まぁ、怪我しないように頑張りますよ」
奥のワイバーンを見ると、冒険者の腕を銜え引きちぎっているところだった。
たぶん肉眼で事細かく見えるのは俺だけ・・・あぁ、気持ち悪い・・・
「アヤコさん、あそこら辺に腕がちぎれた冒険者がいるんで、止血と回復魔法できますか?」
そう言いながら、マジックバッグから綺麗な手ぬぐいを出す。
「ああ、分かったよ。すぐに行って戻ってくる。無茶するんじゃないよ!」
「了解です。お願いします」
アヤコさんは、冒険者に向かって走って行ってくれる。
さて・・・久しぶりだな・・・死が隣にある・・・怖い怖い怖い! あぁ怖い!
だからこそ! 命を捨てろ! 今俺は死んだ! だから! だからこそ! あいつの命を奪って生き返れ! 命を食らえ! 目の前のトカゲをブチ殺せ! 笑え笑え! 生きる為に!
満面の笑みでにやりと笑う。
「大丈夫か? 悪い顔になってるぞ」
タダシさんが、俺の顔を見て言う。
「怖いから、自己暗示してたんですよ。笑うのは筋肉の硬直を解くためです」
「まぁ、いいが・・・無茶だけはするなよ」
「はい、了解しました」
苦笑しながら、答える。
「フレアボール(ファイヤーボールの爆発する版)を打ち込みます。行きますよ」
フレアボールを顔に当てると同時にサンダーも発動させる・・・やはりどちらも効果が薄いように感じる。
魔法が当たるとワイバーンはこちらを向き、咆哮し始める・・・選択集音では、やはり音を小さくする事は出来ないか。
咆哮中にウォーターボール(特大)を食らわせ、雨も降らせる・・・完全に俺が敵だと認識したらしい。
動かれると厄介なので、土を足や羽に絡ませて動きを阻害する。
こんな時は、ダウンバーストだ! 土を操りながらだが出来るかな? というか・・・危ない魔法だから練習してないんだよなぁ・・・やってみるか!
結果・・・出来ませんよ? 風が上から出てくるだけですけど? やってみたかっただけですよ・・・本当に。
自分自身に言い訳をしている場合じゃないか。
ワイバーンは身じろぎしながら動こうとしているが、ヨシさんやタダシさんも氷を絡ませて身動きできなくしていく・・・思ったよりも簡単にいきそうだな。
ワイバーンはどんどん動きが遅くなり、次第に動かなくなっていく。
ふと気がつくと、アヤコさんも戻って氷で覆ってくれている。
装備と臭いがキツイ魔物がいたら嫌だから作った、エアヴェール(自分中心に空気の幕を作り出す。断熱、防臭、長時間は使用不可)で気温の変化もほとんどないし。
じゃあ、俺も絶対零度とか出来るかな? 危なくて出来なかったんだけど、試すなら今だな!
結果・・・失敗・・・いや、無理! 難しすぎる・・・
たぶんワイバーン近くの気温がマイナスにはなってると思う・・・草が凍っているし。
でも、酸素や窒素などは液化していないし・・・まぁ、エアヴェールなどの魔法を解除してワイバーンの近くに行く勇気はない。
ワイバーンがほとんど動かなくなり鼻と口に水・・・いや、氷を作り出しふさぐ。
数分経ち、マジックバッグに入れようとするが・・・入らない? 生きているって事?
もしかして、風の力を使って空気を体内で循環させている? それだと窒息させるのに時間がかかりすぎる。
仕方ない・・・首を落とそう・・・綺麗なまま素材がほしかったんだけどなぁ。
マジックバッグから槍を取り出し突いてみる・・・ガコっと言う音が鳴って刺す事が出来たが、硬い。
やはり、テンプレ通り、水刃が良いかな? 肉が切れていく・・・飛び散る水が氷に成ってキラキラ輝く・・・綺麗だ・・・
うぅ寒い・・・一気に首を切らないと風邪を引くな。
表面以外はそこまで硬くないみたいだな・・・表面だけ先に切ってみると、中身の方が柔らかい。
でも、寒いなぁ・・・早く終わらせる為には・・・そうだ! 丸ノコ! そう思い、マジックバッグから巾着のようなものを取り出す。
巾着の中身は、魔鉄の鉄粉だ・・・これを円形にした風魔法に混ぜて高速回転させていく。
この丸ノコは、木工のときに長く真っ直ぐな板を作り出す為に作った魔法で、本来は鉄粉などを使用しない風で作った丸ノコなのだが、ワイバーンの皮や鱗を切るため攻撃力をあげるのに使う。
鉄粉入りの風を丸ノコ状にしていく・・・薄くきれいな丸になると、ワイバーンの首を切ってみる。
思いの外さっくりと切れていく・・・最終的にはワイバーンが動くことなく首を切ることに成功した。
タダシさん達に、魔法を止めても良いと言う意味を込めて大きく手を振ると、寒さが和らいでいく気がする。
ワイバーンを凍り漬けのままマジックバッグにしまうと、タダシさん達の所にいく。
「やりましたね! 皆さんお疲れ様です」
「怪我もないし、完勝って言えるんじゃないか?」
タダシさんが、笑顔でそう言う。
ヨシさん、アヤコさんも笑顔で「怪我が無くてよかった」「勝てるもんなんだね」などと言って笑顔で話している。
「はい、そうですね。他のみんなの所へ向かいましょうか・・・トイレへ行ったら」
「ああ、行って来い。みんなが心配だから早めにな」
「はい、頑張ります」
トイレで何を頑張るのか分からないが、初めてのワイバーン討伐は終わった。
ケイタ君達がここから近いから、そこに向かうか。




