表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
努力の実る世界  作者: 選択機
第2章 ティンバー・ウルフローナ王国
101/406

第77話 羊毛

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます


10/13 改稿あり 加筆アリ

「あのアリがくわえている白い玉みたいな物、なんだと思います? かなり大切そうに運んでますけど」


「そうですね・・・何でしょう? アリの卵とかでしょうか?」

 リョウタロウさんが首をかしげながら答える。


「そうですね、アリの卵ですかね? 巣のほうに持って帰ってるように見えますし」


「でも1つだけってのが変ですよね? アリなら大量に卵を産むんじゃないですかね?」


「ねぇねぇ~、カナちゃん。卵ならさ、動物生まれるのかな~? もしくは魔物~? ペット欲しかったんだよね~、助けてあげられな~い?」

 アカネさんが、卵を指差しながら言う。


「アリが生まれるかもよ? それでも良いの?」


「違うと思うよ~? なんとなくだけど~、助けて欲しがってる気がするから~助けてあげて」


「じゃあ、そうしてみよっか・・・ケイタ君」


「何でしょうか?」


「気づかれずに行って卵を保護できる? 噛み砕かれたらことだし」


「了解しました。行ってきます」


 近くの木に登り、木を伝ってアリの上まで行く・・・物音が殆どしない、すごいな。

 ギフトと魔法の身体強化を使い蝙蝠の様にくるっと回ると、木の枝をけり勢いを殺さず、ダガーでアリの顎を裂き卵を取り木に登る。

 アリが遅れて気が付き、ケイタ君が登った木に向かっていく。


「卵の回収完了です。皆さん下の掃除をお願いします」


 ケイタ君の木に群がるアリをウィンドカッターやストーンアローで倒す。


「アカネさん、どうぞ」

 ケイタ君が、直接アカネさんに卵を手渡す。


「え? あ! ありがとうございます、大事にしますね」

 アカネさんがモジモジしながら卵を受け取る。


 イケメン効果か? 顔が赤いし、話し方も違うし、対応も違うんだよなぁ・・・仕方がないんだけどさ。

 でも、鶏の卵にしか見えないな・・・何の卵なんだろう? 大事にしますってことは、育てるのか?


「何の卵かわかる?」


「う~ん・・・全然解んな~い、鶏の卵なのかな~?」


「とりあえず持って帰るんでしょ?」


「なんとなくだけど~、持って帰ったほうが良い気がするし~」


「了解、倒したアリも回収しちゃおうか」


 アリを集めマジックバッグの中に入れる・・・卵も入れようとしたが、入らなかった・・・生き物だからか?


「リョウタロウさん、アリの巣は近くにあります?」


「いえ、同じ方向からアリが来てるので巣の方向は分かるんですが、たぶんかなり先ですね」


「そっか・・・じゃあ、他の魔物を倒しに行ったほうが良さそうですね」


「そうですね、草原のほうに向かったところに見た事のない魔物の反応があります。しかも群れで草原に向かっているようです」


「了解しました。皆でそこに行ってみましょうか」


「待って待って、カナタ君! もうお昼になるから、パンを食べながら進みましょうよ」

 ヨシさんが、笑顔で言う。


「あれ? もうそんな時間ですか? じゃあ、そうしましょうか」


 コロッケパンやコーンマヨパンなど、調理パンを食べながら草原に向け進む。

 向かう途中にアリを数匹見つけ一気に食べたので、パンをのどに詰まらせそうになったのは秘密だ。

 倒したアリをマジックバッグに収めて、進んで行く。


 森と草原の境目で、布の服の獣人の冒険者たちが小声で話していた。

 こちらに気がつき、リーダーっぽい人が話しかけてくる。


「おい、あんたら、この先には行かないほうが良いぞ」

 冒険者が手のひらを前に突き出して言う。


「何かあったんですか?」


「ラムダーマトンの群れだよ。しかも、上位種のテンダーラムダーマトンに、レア種のホゲットラムダーマトンまでいやがる・・・まいったぜ」


「結構大きな群れなんですか?」


「ああ、最近じゃ殆ど見る事のないほどの大きさだな・・・たぶんだが、あの一回り大きいのが上位種で、パッと見ただけでも数匹はいるだろう」


「なるほど、マトンの弱点ってありますか?」


「弱点は火の魔法だと聞いたことがあるが、素材を取れなくなるって言ってたな。あと、群れで襲ってくるから囲まれたらヤバイって事くらいか?」


「火の魔法ですか・・・他の属性の魔法は効きますか?」


「魔法を使えねぇからわかんねぇな・・・すまねぇ」


「いえ、貴重な情報ありがとうございます」


「良いって事よ! もう帰るしな、あんたらも気を付けな」


 みんなのところへ行き、今の情報を元に作戦会議をする。


「リョウタロウさん、マトンの周りに冒険者の反応ってあります?」


「いえ、たった今話していたPTだけですね」

 リョウタロウさんが、頷いてから言う。


「了解です。じゃあ、何かいい作戦を思いついた人いる?」


「前と同じサンダーで全体攻撃が良いのでは?」

 ケイタ君が、指から雷を出して言う。


「うん、そうだね、そうしようか」


「ここまで広範囲に魔法を行き渡らせるのは難しいですね。もう少し寄ってくれれば良いのですが・・・」

 ミズキさんが、羊を指差しながら言う。


「そっか・・・う~ん・・・あ! ユカさん、雷でこっそり麻痺させるような魔法はあります? 医療的知識を元にしたような・・・」


「え!? えっと・・・皮膚麻酔のようなものなら、出来なくも無さそうですが・・・」

 ユカさんが困ったように言う。


「そうですか・・・じゃあ、ミズキさんが作った広範囲麻痺魔法のサンダースパークを覚えましょうか。魔力眼があれば、すぐ覚えられると思いますので。

 で、作戦は土の壁で囲いを作って、その囲いの上に立ち自分たちは濡れない様にして、雨を降らせて電気のとおりをよくする。最後はサンダースパークで麻痺させる、それで良い?」


「では、水をかける僕達は出来るだけ等間隔に並んだほうが良いですね」


「俺達を含めた皆の位置取りとかは、ケイタ君とリョウタロウさんにお願いします。サンダースパークの発動のタイミングは、ミズキさんが発動したらで良いですか?」


「待ってくれ、それだとバラバラになっちまうんじゃねぇか?」

 ショウマ君が、首をかしげて聞く。


「その時は、ミズキさんにサポートして貰うんだよ。だから1番最初」


「そうなのか、了解だ!」


「ケイタ君とリョウタロウさんが6人ずつの移動をお願いね。俺とミズキさん、ユカさんも等間隔でお願いします・・・何か質問は?」


「ちょっと待ってください。もう少しで習得できると思います」

 ユカさんが、ミズキさんと並んで地面に向かって魔法の練習をしながら言う。


「じゃあ、ユカさんを1番動かないところに誘導して、みんなはマトンを囲むように配置。良いですか?」


 了承を貰い、背の高い草や木に隠れながら移動を開始する。

 こんな作戦でうまく行くのか? いつもみたいに失敗したときの案まで考えてないけど・・・大丈夫かな?

 そんな事を考えながら移動し、遠巻きにマトンが見える位置にやってくる・・・ただ、待っているだけだと悪い事ばかりが浮かんでくる。

 土の壁は、畳返しのように表面を立てる魔法なのだが・・・どちらに立てるとかの綿密な打ち合わせはしていない・・・ぶっつけ本番で穴だらけに思えてくる。


 奥のほうで土の壁が競りあがるのが見える・・・本番か・・・うまくいってくれよ。

 祈りながら土の壁を発動する・・・少しずれたりしていたが概ね成功! 皆それぞれ囲いの強化と隙間を無くす・・・マトン達はパニックになり壁にぶつかったり仲間にぶつかったりしている。

 程なくして、水が振り注ぐ・・・ミズキさんとユカさんのサンダースパークが発動したのを見て、慌ててサンダースパークを放つ・・・すっかり忘れてた。


 動かなくなった固体の頭をストーンアローで突き刺していく・・・ほとんど傷などがなく綺麗な状態で回収していく・・・一回り大きな個体・・・テンダーラムダーマトンが4体、それよりも大きな個体・・・ホゲットラムダーマトンが1体いた。

 1番大きな個体は、痺れながらも起き上がろうとしていた。

 そこに、ショウマ君が駆け込んできて足払いをして転ばせ、ケイタ君が槍を投げ頭を突き刺した。

 ろくに攻撃も反撃もさせて貰えずに亡くなったマトンに、少しだけ同情してしまった。

 マトン達が食べていた、クロウラーなども綺麗な物は一応バッグに入れておく・・・魔石が無事かもしれないし・・・なければ肥料にすればいいし。


「こんなに羊毛が取れるなんてついてるね! これでまた色々と作れるさね」

 アヤコさんが、羊の毛を触りながらニヤニヤしている。


「毛糸ですか?」


「毛糸はもちろんさ。他にもフェルトに、ムートン、寒くなったら毛布も作れそうだね」


「織り方とか解るんですか?」


「解る訳ないさね。今から独学で勉強すれば良いんだよ!」


「なんか楽しそうですね」


「針子の現場へ来てみるかい? 女しかいないから男は居辛いだろうがね。がっはっは」

 アヤコさんは笑いながら、俺の肩をバシバシたたいてくる。


「女の人しかいないって事は、ハーレム気分を味わえそうですね。気が向いたらいきますよ」


「ああ、いつでもおいで、がっはっは」


 そんなこんなで全部回収が終わり、地面を元に戻していると、


「気を付けて下さい! 空から敵襲です! あっちの冒険者が多くいるところに向かっています! 数は3、どんな魔物なのか分かりません!」

 リョウタロウさんが慌てたように俺達に叫ぶ。


「え? 空から? セントバードとかじゃないんですよね?」


「はい、全く分からない魔物です」


「了解です! 確認は必要だと思いますので、向いましょうか」


 あぁ、この流れはテンプレの予感・・・嫌だなぁ・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ