第8話 九死に一生を得る
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6/7改稿あり、加筆あり
捕まえた動物が捌けるかどうか・・・筋違いだと思うが、元料理人の忠さんに聞いたほうが良いかな?
元料理人だし、出来るかもしれない・・・出来てくれるとうれしいな・・・
でも、罠って言ったら足引っ掛けて吊り上げるのと、落とし穴ぐらいしか解らないなぁ・・・
吊り上げる罠は作り方なんてまったく解らないしね。
「すみません、忠さん、動物って捌けますか?」
「解体って事か? 一応出来なくはないぞ、熊みたいなでかいのは体力的に無理だがな」
「そうですか・・・よかった、さっきウサギを見たので、食べれないかな? って思って・・・まぁまったく、捕まえられる気がしないんですけど・・・あと、皆さんの中で白竹で籠を作れる方いませんか?」
「私なら籠は作った事はないんだけど、ザルとか簡単な物なら作った事があるから出来るわよ」
「本当ですか? いや~良かった、これで、ビニール袋を温存できますね! では、白竹を近くに持ってきますのでお願いします」
白竹の加工は、匠君、佳さん、忠さんがやってくれることになり、火の番は、伊三雄さんがやることになる。
食料探索班は、近場が茜衣さん、好未さん、亜矢子さんが担当、遠方は、俺、瑞稀さん、有華さんが担当することになった。
図らずも、両手に花になった!! 顔に出さないように、心の中で『よっしゃぁ!』って叫んでおく。
しかし、伊三雄さんが、急に遠方の班に入ってやるって言い出しやがって、俺は・・・心の中で涙を流しながら、お願いしますと言ったよ・・・
遠方の人には、青銅のショートソードを持っていってもらうことにして、白竹の加工は、ハルバードとカッターで行うことにした。
何となく感覚でお昼位になったら、一度戻って来て貰い食事にしようと言っておいた。
出来るだけ安全に、一つずつ進んでいけば・・・何とかなるさ・・・
いつものように、トラブルっていうのは、軌道に乗りそうなときにやってくる・・・
「く・・熊だ!! 熊だー! 誰かー! たすけ・・・たすけて・・」
その声を聞き、ハルバードをもって駆けて行く・・・その時は、何も考えていなかった・・・考えられなかったというのが正しい。
そこには、熊にしては小さいし、色は白地にシマウマ柄の動物がいて、一瞬熊か? と思ったが、近づいていくと、小さいが見た目は完全に熊そのものだった・・・
不味い、野生の熊に勝てるはずが無い・・・どうする? どうすれば良い? 考えろ! 思考を止めるな、頭を使え!
熊は立ち上がって、伊三雄さんを威嚇していて、こちらに気が付いていない・・・気づいていないと思いたい・・・気づかないでいてくれ。
足! いや、膝の部分に一撃当てれば動きが鈍るか? 考えてる暇は無い・・・やるしかないんだ・・・ああ、くそ! 何なんだよ! 逃げたい! マジで逃げたいってんだよ!
ハルバードの石突付近を持ち、体重を全部乗せるつもりで斜めに足に向けて打ち付ける・・・だが、斧の部分ではなく、先端の剣の部分に当たってしまう・・・
チッ! くそ! やばいな、浅かったか!
熊は、こちらを睨み咆哮する・・・
あぁ不味い不味い不味い・・・どうする? どうするんだよ!
逃げる? 逃げれる? 逃げ切れなきゃ死ぬ!・・・熊、熊は下りだ!
たしかに、熊は下り坂の方が遅いと言われているが、あくまでも若干である。
「にげろぉぉ!」
そう叫びながら下り坂を駆けて行く。
木や草が多く生えてる細い道を選び、下り始める・・・顔等にかすり傷を負いながら・・・
熊は、攻撃した俺を標的としたのか追ってくるが、幅が大きいこと、足を若干引きずっていること、背が低いことから追いつかれない・・・ギリギリだった・・・
このままでは、死ぬ・・・どうする?・・・反撃? 怖い・・・無理・・・死ぬ・・・
そう思っていると、傾斜が急勾配になっていく。
足をとられ、前転をして転がり落ちる・・・武器もそのときに落としてしまった・・・
木の根が! やばい! そう思い小さくなって避けると、下は葉っぱの絨毯のようで柔らかかった。
後ろを見ると、熊は避けるのに失敗して、木の根の隙間に挟まって、身動きが出来なくなっていた。
よし! 逃げれる! 助かる!
少しほっとして、熊から離れるために、立ち上がり逃げようとしていると
ぐろぉぉぉぉぉ! と熊が大声で咆哮する。
すると、さっきまでいた場所にバスンという音が鳴り、振り向くと、葉っぱが撒き散らされていた・・・マジかよ!
熊のほうを見ると、透明な玉のようなものが、熊の前にある・・・
なんだ?・・・あれ・・・じっと見たため、一瞬立ち止まってしまう。
再び熊が、ぐろぉぉぉぉぉ! と咆哮し、玉が飛んできた・・・
前転して何とか避けたが、熊を見ると飛んできた玉と同じ物が、既に作り出されていた・・・・
魔法か? 魔法なのか? くそ! 逃げれないか! くそ! 死ぬ。
此方を睨み、ぐろぉぉぉ! ともう一度咆哮するが、前転で避けて体勢を崩していた俺は、玉が近づいてきているのに動けなかった・・・・もう駄目か・・・くっそー!
そう思ったとき、自分の後ろから人が飛び出し、熊に向かっていく。
あぶない! と思ったが、その人は剣を振るうと玉を両断し、そのまま熊の頭まで行き、頭を切り落とした。
一気に気が抜ける・・・助かった・・・死ぬかと思った・・・
熊の頭を切り落としたその人は、皮のところどころに金属で補強した防具を着ていて、兜にネコ耳っぽいものが付いている。ネコ耳兜かわいいな・・・そして心の中で、熊殺しさんと名付けていた。
「□☆? ▽★」
熊殺しさんは、こちらに何か言ってくる・・・まったく何を言っているか解らない。
「助かりました、ありがとうございます」
そう言いながら頭を下げるが、熊殺しさんの方も言葉がわからないようだった。
「△▽△!!」
熊殺しさんの仲間と思われる、ゴブリンと同じ位背の小さい人が現れた。
背の小さい人も同じような装備をしている。
2人が話し合っているが、会話が全くわからない・・・規則性すらつかめない・・・
うわぁ・・・どうしよう・・・
熊殺しさんが、熊を指差しながら何かを語りかけてくる。
熊が欲しいのかな? 手のひらを上にして、どうぞどうぞとジェスチャーする。
熊殺しさんが、兜を取って右手を胸に当てて頭を下げてきた・・・伝わったらしい。
え? お・・・女の人? 気が付かなかった・・・美人だが、ネコ耳?? いや、犬耳?? え? 獣人?
ファンタジーきたこれ!
熊殺しさんが歌いながら近づいて、手を顔に近づけて一言呟くと顔が温かい・・・
走っていたとき、ぶつけたりしていた所の痛みがなくなる・・・顔を触ってみると傷が・・・治ってるよ! すっげー! まじかよ! 魔法か? そうだ! 回復魔法だろ!
魔法があるってことは覚えられるかもしれない! ヒャッホイ!
小さい人が熊に近づき、かばんを開く。
かばんをを熊に当てると、熊がかばんに吸い込まれていく・・・
アイテムバッグ!? か? いや・・・アイテムボックス? なのかな? どっちでもいいか。
ますますファンタジーじゃないか!
驚いていると、落ちていたハルバードを拾って持ってきてくれた。
そのまま無言で渡してきた。いい人かもしれない。
2人は何かを相談するように喋り、こちらを向きどこかを指差しながら、なんか喋っていた。
全く解らないので、頷いていたら歩き出し手招きをしてきた。
付いて来いって事だろうけど、皆のことを話したほうがいいのか? う~ん、どうしよう・・・
ただ殺すだけなら、見捨てたら良かったんだし、殺したいって事はないと思う。
しかも、武器を返してくれたから、いきなり敵対はしないだろうから大丈夫だと思う・・・思いたい。
そんなことを一瞬で考えたが、捕虜や奴隷になるなら一人でかな・・・そう思い付いて行くことにした。
そういえば、リュックだけでも持って来ればよかったな・・・水もないし・・・おなかも減った・・・
早足位の速度で、進んでいく・・・体力が上がっているっぽいから、遅れたりはしなかったが、山道にはそこまで慣れていないため数回転んだ・・・恥ずかしい・・・
俺の様子を、振り返りながらちらちらと見てくれる熊殺しさん、いい人だな。
それにしても、喉渇いたし、お腹減ったなぁ・・・川とか無いのか? この際、生水でもいいんだけど・・・少し口に含むだけでも・・・そう思いながら進む。
う~ん、どの位歩いたんだろう? 精神的にどっと疲れた感じだから休みたいけど、言葉が通じないんだよなぁ・・・
あら、小さい人の方がもう限界っぽいなぁ・・
そう思っていると、2人は話し合い始める。
話し合いが終わると、こちらに食べるジェスチャーだと思うものをする熊殺しさん。
頷いておくが、食べ物が無いので座っていると、瓢箪っぽいものに入った水を差し出してくれた。
土下座みたいになりながら頭を下げると、肩を叩かれて微笑んでくれた。
そんな事されたら惚れちゃうよ・・・まぁ、俺には、熊殺しさんのような美人は無理だろうけど。
俺の顔がイケていないことは、重々承知してますよ!
喉がものすごい渇いていたが、我慢をして出来るだけゆっくり飲む・・・美味しいな・・・ただの水なのに・・・
クマの魔物:???
クマ殺しさん:獣人の女性。 かなりの美人で、白いストレートヘアー。
従者:小人族? の男性。 1.2m位の身長。
マジックバック?:ファンタジーお決まりの物っぽいが、不明。