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空と舌
青い空を薄く削って
氷にかけた
しゃくしゃくと
それを食べたら
青く染まった舌先が
帰りたい、と
泣き出した
夕焼けをとろり煮詰めて
りんごにかけた
かりかりと
それを食べたら
紅く染まった舌先が
帰りたい、と
泣き出した
夜の星を軽く炙って
弾けたそれを指で摘まんだ
口にしようとする度に
流れて消えて
夜はたちまち
真っ暗になった
すると何だか
悲しくなって
僕の舌先が
帰りたい、と
泣き出したから
空を畳んで涙をぬぐった
ひとしきり泣いたあと
うちに帰って
空を干すと
しとしと雨が降り出した
舌先に触れたしずくが
涙の味に似ていたから
僕の舌は何も言わずに
ただ
静かな雨の音を聞くことにした




