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傷/ビニール傘/home
傷/
薄い紙きれで
薄い切り傷がついた
薄い血が滲めば
きっと
そそくさと
癒えてしまうのに
なかったことには
出来ない
絆創膏の内側に
押し込める
薄い
痛み
ビニール傘/
骨格の脆さも
代替のきく無個性も
やすやすと
誰かに奪われてしまう
儚さも
弱く
頼りないものに思えるのに
速やかに雨の
流れる景色を捉える
打ちつけた
水滴の引き摺る
跡
痕
あと
まるで
束ねられない
花の散るさま
歪んだ視界
隠せない
隠さない
ピンと張った
頭上十五センチの
透明な空
home/
背の低いソファと
型落ちのテレビ
狭い内階段と
まだ白さを保った壁紙
たたみかけの洗濯ものと
水切りに入れっぱなしの食器
私たちの空気が
少しずつ澱み
染みついたそこに
ふたり
帰る場所が
同じだということの
安堵
そして
僅かな違和感
見慣れたもの
すべてが
まるで
見知らぬものへと
生まれ変わる
恐怖
そして
僅かな恍惚
歪んだ夜に
帰りたい
小さく呟く
あなたの背中




