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私と彼の恋模様  作者: 辰野
56/224

56.

 (どうしたんだろう、あんなところで)


 授業はもうとっくに始まっている時間

 ってことは、堀川は保健室で休んでいたわけじゃなくて本当にサボっていただけってことなのか

 でも何故かこの決定的な状況を見ても堀川が授業をサボるような人には思えなかった


 不良には不良なりの風習というか共通点がある

 髪を染める、授業をサボる、眉毛を剃る、ピアスをつける、かかとを踏んづけて歩く、不登校になる

 あげればあげるほど出てくる項目の中で誰しもが何個かは当て嵌ってしまうかもしれないだろう

 俺だって神を染めてみたいと思ったことが何度かある


 けど、彼女にはそんな感じには思えない

 どちらかというと学級委員長をしていそうな雰囲気だ

 そんな人こそ裏では黒いことを考えているってことだろうか


 堀川が上履きも履かずにこちらに近づいてきたので急いで隠れる

 もしかしたら見つかってしまったのかもと思ったが俺を素通りし、雑巾をとってからトイレに入ってしまった


 掃除でもするのかと思いながらも急いで下駄箱へと向かう

 堀川がいない間に帰ってしまったほうが良さそうな気がしたからだ


 「えっ…………」


 堀川とは同じクラスだし出席番号も近くで下駄箱もすぐ隣

 だから自分の下駄箱を空けるのにどうしても視界の中に入ってきてしまった


 黒いサインペンで落書きされた上履きに大量の紙くず

 それにこれでもかと言わんばかりに真っ黒にされている下駄箱の壁

 よくよく見るとその壁も文字でできているのが分かる


 この光景を見て一瞬にして分かった

 自分が受けているものとは別の種類であるいじめだということに


 俺が受けているのはあくまでも暴力的ないじめ

 殴られたり蹴られたりと直接的ないじめだ


 けど堀川が受けているのは精神的に痛めつけてくる間接的ないじめ

 俺のことじゃないのに思わず泣いてしまいそうなほど胸が苦しくなった


 下駄箱の中に詰められている紙くずを取って、開いてみるとそこにも心をえぐるような言葉ばかり


 『誰にも話すな』『淫乱女』『可哀想にwww』『面白かったよwww』


 見ているだけで吐き気を覚えてしまう

 堀川さんが無意識に持っていった雑巾はいつも濡れていて不思議に思っていたあの雑巾

 こんなにも辛いことを堀川さんは毎日のように受けていたのか…………


 そう思ったらもういてもたってもいられなくなった

 誰にも話すなと書かれているから直接コンタクトを取れないけど、少しでもいいから陰ながら堀川を支えてあげよう

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