48.
「あの、さっきはごめんなさい。いきなり殴りかかってしまって。てっきり浜口くんが犯人なのかと」
「いや、別に気にしなくていい。こっちこそなにも知らせなくて悪かった」
浜口くんにはほんとうに悪いと思っている
いくら苛立っていたからって無実の人に殴りかかろうとしてしまったなんて人として恥ずかしい…………
しかも女の子が殴りかかるなんて…………
穴があったら入りたい……今からでもいいから穴を掘って入っときたい……
「で、その浜口が気づいたんだけど、その犯人はもしかしたら女子じゃないかってことなの」
「え?こんなことするやつなんて男子じゃないの?」
「男子が毎日、下駄箱に悪口書きに来ると思う?しかも上履きの中敷きに書かれた文字だってすごい丁寧じゃない」
言われてみればそうだ
たぶん誰がこの文字を見てもすんなり読める
読めない人は元からこの文字をなんて読むのか分からない人だ
私も上履きに名前を書くときはとにかく気を使う
それでもやっぱり汚くなってしまっていつも歯がゆい気持ちになる
上履きに字を書く事でさえ随分と難しいのに中敷に書くならなおさらだ
「じゃあこれをやった人は女子…………」
「まだ決まったわけじゃないけどね。あくまでもその可能性が高いってこと」
「……そっか」
私は痴漢にあって男性がものすごく怖くなった
相手が何を考えてるのか私になにか危害を加えようとしているのではないかと考えてしまうのだ
今ではだいぶましになってるけど、まだ初対面の人とは話しきれない
そんな状態なのに女子も怖くなってしまったら私はいったい誰と話せばいいんだ
いや、違う!女子が怖いんじゃない。あくまでも悪いのはその人個人だ
痴漢にあった時もそうだ、男性全てが怖いってわけじゃない。だって白崎さんは私を助けてくれたんもだもの
そう、怖いのはその人個人、海音ちゃんだって私を支えてくれてるんだし女子全員が怖いってわけじゃ…………
「……けみ、明美!!」
「えっ!あ、ごめん。ちょっと考え事してた…………」
やっぱり私はまだあのときのトラウマを乗り切ってはいない
冷静になるんだ、私
ここで取り乱してしまったらせっかく治りかけていた男性恐怖症が復活してしまう
もしかしたらこれ以上にひどくなってしまう可能性だってあるんだ
私の男性恐怖症の症状はだいぶ浅いほうで治るのも早いはずなのに、それでも先が遠く感じられる




