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私と彼の恋模様  作者: 辰野
44/224

44.

 「なんて書いてるように見えるって、あんたもしかして読めないの。痴漢よちかん(..)。よくこの文字を読めてなくて話についてきてこれたわね」

 「お前こそこれよく読めたな。こんな狭いところに書かれてるのに」

 「あんたはなにが言いたいの…………よ」


 最初は堀口がなにが言いたいのかよく分からなかった

 本気で痴漢という文字が読めないのかと思った

 けど違う。重要なのは漢字の読み方ではなく、読めること自体だ


 これをやった犯人はなんで 『痴漢女』と書いたのだろうか

 画数が多くて潰れてしまうかもしれないのに


 「それに、相手もよく痴漢って文字を書けたよね。俺ならひらがなて書きたくなるけど」

 

 人には読めるけど書けない漢字が存在する

 画数が多くて書く事自体が珍しかったり、当て字を使っていたりするからだ

 それに最近ではパソコンやスマホが普及しすぎて文字が書けなくなってきているという


 痴漢という文字もそれに当てはまらないだろうか


 もしテストで『ちかんという文字を漢字で書きなさい』と言われたところで書けるだろうか

 たまたま痴漢の『痴』が分かったとしても『漢』はぱっと思い浮かぶようなものではない


 「……つまり相手は漢字に強い人だって言いたいの」

 「それにとても器用な人だ。この文字も少し滲んでいるのに苦もなく読める。そんな人が本気で人をいじめようとしたらだいぶ酷いことをしてるだろうね」

 「明美…………」

 「いつからこんな状態なのかは分からないけど随分とまいってると思うよ。そんな時こそ支えてあげるのが友達なんじゃないの」

 「……そうね。明美に電話して聞いてみる」

 「そうしてあげて。じゃあ俺は先に正門にいるから電話が終わったら……」

 「別にいいじゃない、ここにいて。明美のことが心配でここまで首を突っ込んだんでしょ。なら最後まで突っ込みなさよ」

 「……そうだね。そうさせてもらうよ」

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