4.
こいつもすでに抵抗する気はないのか何もすることなくおとなしくついてきた
電車から降りると事情を説明し、駅員室に連れて行ってもらった
部屋に入ると女の駅員さんに変わってもらってから電車の中で何をされたのか事細かく話した
もちろん、財布を盗られたことではなく痴漢のことを、である
「彼女はこのように証言されていますがあなたは犯行を認めますか」
「いや、認めないね。この子が言ってることは全部嘘だ。冤罪だ!」
くっ、ここまできてまだ認めないのか
私もいい加減頭にきたぞ
だけどこのおじさんが痴漢をしたという確かな証拠がない
こちらも負けじと言い返すが何を言っても俺はやってないの一点張りだった
流石に駅員さんも困惑気味である
もちろんお兄さんも証言してくれた
けど、最近では女性が痴漢をでっちあげることがあるらしくて被害者の証言も信用しづらいのだそうだ
かといって私もだいぶ怖かったし、はいそうですかと許せるほど私の心は広くない
「ねぇ君、こいつを許してあげるつもりはない」
隣に座ってたお兄さんが私にだけ聞こえるように耳打ちしてきた
痴漢にあったこともあってか、お兄さんは悪い人じゃないと分かっているのに体が強ばってしまっている
「い、いえ。あの……すいませんが許してあげるつもりはない……です……
私も怖い思いをしましたけど……おじさんが反省せずに他の子に手を出したらその子に申し訳ないので……」
「そっか…………よし、いい答えだ。少し恥ずかしいかもしれないけど我慢しろ」