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私と彼の恋模様  作者: 辰野
202/224

202.

 「はぁーー、やらかした」


 誰もいない神社の境内の中で、私は一人座っていた

 二人とはぐれてしまったとき、私は人ごみに流されて金魚すくいのところに来てしまっていた

 明美たちを呼び止めても人ごみによってかき消されてしまったのか、二人がこっちを向いてくれることはなかった


 かといって今からこの人ごみの中をかき分けて二人に追いつけるはずがない

 仕方がないのでゆっくりと二人の方に向って歩いていた時


 「あれ、私の帽子は?」


 いつの間に落ちたのだろうか、さっきまでかぶっていた帽子が見当たらない

 周りを見渡してみると、金魚すくいのところに私のものらしき帽子が落ちているのが見えた

 たぶん押された拍子に落ちてしまったのだろう

 気づくのが早くてすぐに見つけることができたが、もっと遅ければ見つけられるかどうかさえ分からない

 胸をなでおろして一息ついた時である


 「あれ、私どっちから来たんだっけ?」


 帽子を探すのに必死で二人がどっちに行ったのか分からなくなってしまったのだ

 えっと、えっと…………そう、こっちから来たんだ!

 よかった。これならまだ二人に合流できるよ

 …………っと、来た方向に向かって歩み始めた


 今になって思ったら何をバカなことしてるんだって思う

 来た方向を思い出したのなら、その逆方向に向かって歩き出せよこのバカ!!


 もちろん二人に会えることもなく、いつの間にかほとんど人気のない神社にたどり着いてしまっていた

 今更気づいたところでもう遅い。どう頑張っても合流なんてできない

 仕方がないので浜口に電話してここまで来てもらうことにした


 「さて、ここからどうするかな」


 問題は、浜口が来るまでどうしておくかだ

 ここから動くなと言われても、こんな暗いところに一人でいるなんて私が耐えきれるはずがない

 隣に誰かいたりしたら別だけど、一人だけで神社に居るなんて恐怖しか襲ってこない

 ましてや夜の神社なんて明らかになにかが出てきそうなシチュエーションである

 電話では見栄を張っていたけれど、あれでも声が震えていなかっただけ奇跡だ


 「早く来てよ、浜口…………」

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