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パレード・デイズ  作者: ふみわ
小学五年生 一学期
5/26

川島夕の月曜日(体育)

いよいよ(?)夕と古泉君のバトル開始です。

 体育の時間。


「とりゃあああー!」


 私は手にしたボールを憎たらしい古泉のお腹目掛けて、思いきり投げた。


「おっと! やっ!」


 しかし、古泉は私渾身の一球をキャッチし、こちらに投げ返してきた。私もすかさず、その球を取る。

 くぅ! さすが男子。球が重い。手が痛い!

 手に響く痛みを堪えて、もう一度古泉を狙って投球し、またそれが返ってくる。その応酬だ。

 幾度となく、投げて、キャッチしてを繰り返していると、小林先生がピピーッと笛を鳴らした。


「そこ! 川島さんと古泉君! ボールを独占しない! キャッチボールじゃないのよ」

「はーい」


 注意を受けて、別の子にボールを渡す。その子は外野にパスし、外野たちがボールを回して敵陣を攻め始めた。

 そう、これはドッチボールだ。

 チームは出席番号の奇数と偶数で構成されている。私は奇数チーム。正直、古泉と別チームだったらなんでもいいんだけど・・・・・・。

 同じドッチでも、勝負の方法は毎回違う。

 先にボールが当たった方が負けの時もあれば、当たってもチームが勝てば勝ちというときもある。今回は後者だ。なので、守備にも用心している。


「あっ!」

「よっしゃ! 川島、覚悟!」

「あっはっは! そんな球当たるわけ──うわっ!」


 外野から奪い返したボールを古泉が投げてくる。もちろん、私はキャッチする気満々だったが──痛恨のミスを犯してしまった。足が縺れてよろけたのだ。

 体勢を立て直そうとしていたら、ボールが肩に命中。痛い。

 バランスは完全に崩れ、私は背中から地面にひっくり返った。


「あぅ~、やらかした!」

「やったぜ! ほらほら、川島、当たったんだから、さっさと外野に行けよ」

「わーってる!」


 鬼の首を取ったように喜ぶ古泉に促され、私は石灰で引かれた線の外に出た。

 古泉め、あいつにぶつけて、すぐに戻ってやる。

 今回のルールでは、元外野以外はボールをぶつけたら自陣に戻れるのだ。ちなみに、元外野は終了五分前に中に入る。


穂香(ほのか)ちゃん! ボール回してね、多く残った方が勝ちなんだから!」

「りょーかい。じゃあ、ちゃっちゃっと敵陣削りますか!」


 同じ奇数チームでポニーテールが素敵な町屋(まちや)穂香ちゃん。運動神経がよくて、いつも男子に混ざってサッカーとかしている。敵だとおっかないが、味方だと頼もしい友達だ。

 ふふふ、今回は多く生き残った方が勝ち。

 穂香ちゃんのスピードと私の腕力で押しきってみせる!!


 その後、私は別の男子にボールを当て、自陣に戻った。

 今のところ、うちは六人、向こうは五人。元外野は三人ずつ・・・・・・と。一人差で勝ってる。

 このまま、残り八分守りきれば、私の勝ちだ。


「よぉし! 絶対勝つぞー! おー!」

「おー!!」


 私が気合いを入れるために拳を突き上げると、皆も真似する。うちのクラスはノリがすごくいい。

 なんだか、楽しくなってきた!


 そのあとの私はノリノリで、ボールを投げまくり、敵陣の人員を次々と削った。

 古泉も古泉で追い詰められるとノッてくるタチだから、どんどん攻めてきて、五分をきったところで入ってきた元外野も私と古泉が当てて早々に退場。


「ハァハァ・・・・・・やるな・・・・・・」

「そ、そっちこそ・・・・・・ハー」


 一対一の勝負はどちらも引かず、もうお互いに汗だくで、息も苦しい状態だった。

 残り時間は一分。コート内には私と古泉だけ。

 つまり、先に当たった方が負ける!

 負けたくない! そうだ! 兄さんが教えてくれた必勝法を使ってみよう!

 思うや否や、私は古泉に大声で提案していた。


「古泉ー! せっかくだから、賭けしない?」

「あー? 賭け?」


 古泉は額の汗を拭いながら、頭上に疑問符を浮かべる。


「そう! 今日の給食のデザートって、焼きプリンでしょ?」

「おう、あれメッチャ美味いよな!」

「うんうん」


 それには大いに賛同!

 私、あれ大好き。もー甘くてトロトロで、舌まで溶けちゃいそうなんだよね~。焼きプリンサイコー! 焼きプリン万歳!

 そんな焼きプリンを二倍にできる大チャンスを私は提案しよう!

 兄さんが大事なものを賭けたり、ご褒美があったりすると絶対負けられないって気になってくるって言ってたもん!


「だからさ、負けた方は勝者に焼きプリンを献上するってどう?」

「なに?」


 古泉の目がギラリと光る。

 ふふふ、古泉も焼きプリンは大好物だ。勝負好きの古泉なら、絶対この話に乗ってくる!


「おっしゃ! 乗った!」


 ほーらね。

 勝負は私の方が有利。

 だって、ボールを持ってるんだもの。

 例えキャッチされても取ることができれば、問題なし! しかも、時間的にはもう一度投げられる。


「いくよ!」

「来い!」


 大きく振りかぶって、足を踏みしめ、投げる!


「──うわっ!」

「やったぁ!!」


 当たった! ヤッタ!

 正確には古泉がボールを掴み損ねて落としたんだけど、それでも勝ちは勝ち!


「焼きプリン──!」

「やったね、夕ちゃん」

「おめでとー!」

「ありがと~」


 狂喜乱舞モードの私の下に、知代ちゃんと穂香ちゃんが来て共に喜んでくれる。

 わはははは! どーだ、古泉よ。これが私の実力だい!

 勝利宣言でもしてやろうと思い、古泉を見やる。

 すると──


「古泉? どうしたの!?」

「──っ」


 手を押さえて蹲っている古泉に駆け寄る。古泉は指を掴んで小刻みに震えている。ひょっとして・・・・・・


「突き指?」

「・・・・・・」


 訊ねると、コクリと頷いた。


「大丈夫──じゃ、なさそうね」

「・・・・・・いてぇ」


 古泉なら掠れ気味に言った。

 あー、それは痛いよねぇ。私も前になったから分かる。あの痛みはなってみないとわからないよ。

 私は痛みに耐えている古泉を立ち上がらせ、小林先生を読んだ。ジャージ姿の先生がすぐに駆けてくる。


「古泉君、どうかしたの?」

「突き指しちゃったみたいです」

「大丈夫?」

「いや、確実にアウトでしょ」


 古泉が辛うじて首を縦に振るが、大丈夫じゃないのは誰が見ても明白だ。強がるな。

 小林先生は眉を八の字にして言った。


「そう、じゃあ保健室に行って手当てしてきてもらいなさい。川島さんは確か、保健係だったわよね?」

「はい」

「じゃあ、付き添ってあげて。授業はもう終わるから、そのまま教室に戻っていいわ」

「わかりました。古泉、行こ?」


 私は古泉を支えて歩き出した。天敵と言えど、自分の投げたボールで怪我をされていい気はしない。皆も心配そうに古泉を見ている。

 焼きプリンの喜びはとっくにどこかへ消しとんでいた。

古泉君、大丈夫でしょうか・・・・・・。


諸事情により、次の話は来月になります。

申し訳ございません。

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