川島夕の大作戦(チーム)
お久しぶりです。
「今日は授業返上で宝探しゲームをします」
校長先生の言葉に水を打ったようになった校庭で、一番最初に反応したのは教頭先生だった。
「いやいやいや! 何おっしゃってるんですか!? 校長!」
「では、ルールを説明します」
「話を訊けぇ────!!!」
叫ぶ教頭先生にその場にいた全員が心中で合掌したと思う。
ただでさえ、普段の校長の無茶ぶりに胃と毛根に絶大なダメージを受けているというのに・・・・・・ほんと、御愁傷様です。
「早速ですが、校長先生は昨晩夜なべして校内に沢山の罠を仕掛けました。大変でした」
「だったらやるな! つーか、何してるんですか、あんた!!」
「そして、宝箱をいっぱい隠しました。ダミーもありますが、中身は開けてからのお楽しみです。そして、時間内に宝物をたくさん見つけたチームが優勝です。では、まず四人一チームになって下さい。他のクラスの子とでもいいですよ。あ、先生方も全員参加です。しなかったら──まぁ、減俸という事で」
「「「ふざけんなぁ────!!!」」」
教師陣からのクレームが飛び交う中、生徒たちは校長の思いつきに付き合わされるのはいつものことと、各々すぐさま近くの人と組始めた。
私は知代ちゃんに腕をくいっと引かれた。
「夕ちゃん、一緒に組も」
「うん! あと二人か、誰にしよう」
辺りを見渡すと、もう大体チームができている。早いな、おい。
「あー、穂香ちゃん、奈乃ちゃん達と組んじゃった。残念」
「穂香ちゃん、運動得意だし、体力あるもんね。こういう時に頼りになるから」
「運動神経なら負けないんだけどね。というか、早く残り二人決めなきゃ。んーまゆちゃんは他のクラスの子と組んでるし、なっちゃんは──インテリグループと組んでるよ! 参加する気ゼロだよ!」
「おーい、夕っち、高科さーん!」
遠くで呼びかけられた。誰かなんて確かめなくても分かる。私をそのふざけたあだ名で呼ぶのは、一人。
「ちょっと、加藤君! だからその呼び方やめてって言ってるでしょ!」
「さっきぶり~。ていうか、最近それいうの忘れがちだよね」
忘れがちというより、諦めがちだよ。
なんで、断固としてその呼び方貫くの。
私は卵型携帯ゲームじゃないんだけど・・・・・・。
「それはそうと、俺らもまだ二人なんだ。一緒に組もう」
「ん、まぁいいけど・・・・・・やっぱダメ」
「え~、何で?」
ダメなものはダメ。
うっかりしてたけど、加藤君が真っ先に組むのって──
「おい、空良。勝手に行くなよ──って、川島かよ」
「なぁに? 居ちゃ悪い?」
「別に」
古泉はそっぽを向いた。
なんだか、今日機嫌悪いな。昨日の今日だというのに、顔を合わせりゃいつも通り。
まぁ、兄さんがいつも通りがいいって言ってたし、別にいっか。
にしても、ムカつくな。
ムカムカしながら古泉を睨んでると、加藤君が古泉の肩を組んで引き寄せた。
「これで、四人揃ったね」
「いや、だから組まないって。私と古泉が組んでも事故るだけだよ。四年の時の雪だるま大会みたいに」
「大丈夫でしょ。最悪事故っても俺と高科さんがフォローするし、ね?」
「そうですね。二人のことは私がフォローします。けど、貴方のことは知ったこっちゃないので、ご自分の面倒はご自分で見てくださいね。それぐらいは出来るでしょう?」
加藤君が知代ちゃんに同意を求めるが、知代ちゃんはすかさず加藤君限定毒舌で切り返した。
「知代ちゃん、刺々しいよ。てゆーか、二人ともなんで組めてないの。すぐできそうじゃん。新木君とか」
「彦は人数合わせに女子に引き込まれてた」
「・・・・・・気弱いもんね、彼」
「てゆーか、お前らこそすぐ人数集められるだろ」
「そうでもないよ。私はいつも知代ちゃんと組むし、なんか皆私はすぐ誰かと組んでそうだから敢えて声かけないんだってさ」
「俺も似たようなもん」
ふむ、私も古泉も人とは広くそこそこ深く付き合うタイプだからかね。そんなイメージを持たれるのは。
それより──
「そこまで、おっしゃるなら貴方だけ別のチームに入れて頂いたら如何ですか? 古泉君は確かに役に立ってくださいますが、貴方はそれほどでもないですし」
「そんなことないよ? 俺って結構、探し物とか得意だし、割りと校内の死角になるとことか知ってるし。どこかの誰かさんより役立つと思うな」
「私が役に立たないと?」
「ん? そんなこと言ってないよ」
バチバチっと二人の間に火花が飛び散っているのが見えるよう。
だから、なんでこの二人は仲が悪いの! いや、人のこと言えないけどさぁ……。
そうこうしているうちに、校長先生は全員組終わったと思ったらしく、運動会用のピストルを手にして、
「では、スタートです!」
乾いた音が校庭に響き渡った。