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パレード・デイズ  作者: ふみわ
小学五年生 一学期
2/26

川島夕の月曜日(遅刻)

少し短いと思います。

 そっと、そーっと静かな廊下を身を屈めて歩く。

 現在の時刻は八時四十分です。

 つまり、すでに朝の会が始まってるってことですよ、奥さん!

 白い悪魔(牛乳)のせいで遅刻を余儀なくされた私だが、今は高利貸しから隠れるように身を潜めるのに精一杯だ。

 教室のドアには小さな窓があるから、屈まなきゃ見つかる。五年生にもなって遅刻は恥ずかしい。

 しかも、この晴山小学校は自由をモットーにしているが、ルールとかには結構厳しい。遅刻とか論外だ。遅刻者は宿題増えるんだよねぇ。やだなぁ。


 そんなこんなで陰鬱な気分になってるうちに、教室の後ろのドアの前に到着。

 私のクラスは五組だ。

 中を、そっと覗いてみる。

 美人で優しいと評判の担任の小林先生が何かのプリントを配っている最中だった。皆の注意はプリントに逸れている。

 これはまたとないチャンスだ。こっそり入って注目されるのだけは避けよう。もし、注意されでもしたら──いや、お説教はきちんと受けるよ? 遅刻したのは、私が悪いし。 だけどねぇ、教室で怒られるのだけは御免蒙る。

 だって、そんなことになったらあいつ(・ ・ ・)が──

 って! やな奴、思い浮かべちゃったよ。やめやめ。さっさと中に入っちゃお。

 てことで、夕、出陣しまーす・・・・・・。

 音を立てないようにドアノブを開いて、ハイハイの要領で中に入る。


「夕ちゃん?」


 頭上から声をかけられて心臓が跳ね上がる。

 顔をあげると、サラサラとした長いお下げの可愛い親友の高科知代(たかしなちよ)ちゃんが私を見下ろしてた。

 その目は真ん丸で、驚きが満ちている。普通はおどろくよねぇ。

 いたたまれなさを感じたが、とりあえず、挨拶はしとこうと思った。


「あー・・・・・・おはよう、知代ちゃん」

「おはよう。遅刻なんて珍しいね?」

「うん・・・・・・ちょっとねぇ」


 気まずい。これは気まずいぞ?

 軽く冷や汗が首筋を伝う。


「夕ちゃん、早く席に行きなよ。そんな格好、颯人(はやと)君に見られたら──」

「知代ちゃん、ストップ! それ以上は言わないで。考えただけで頭が噴火しそう」

「あ、ごめんね」


 私を指差して高らかに大笑いする天敵の顔が目に浮かぶ。考えただけでムカムカしてきた。

 まぁ、奴は真ん前の席。私は前から三番目の席だから、目撃されることはないだろう。後で、色々言われるのは避けられないだろうけど・・・・・。決定的な瞬間を見られるよりはマシ。

 安堵の息を吐きながら席へ向かう。

 さぁ、ゴールは目前。椅子の背凭れに手をかけ、あとは座るだけ──と、その時、中腰で立ち上がった私に不幸が襲った。蹴躓いたのだ。なーんにもないとこで。

 私はよく転ぶ。運動神経は悪くないはずなのに、なんでかなぁ?

 下らないことを考えてるうちに、体はバランスを失い、派手に転んだ。こう、バターンと。

 衝撃で瞼の裏でひよこと星がくるくる踊り、体に激痛が走る。


「いった────い!」


 ヤバいヤバい! めっちゃ痛い! 咄嗟に腕で顔庇ったから顔面は無事だけど、それ以外は完璧アウトだわ。これ泣くわ。

 もう、朝っぱらから私は不幸のどん底だ。しかし、不幸は重なるもので、更なる不幸がやってきた。


「川島さん!? 大丈夫?」


 真っ白なブラウスに身を包んだ小林先生が私に気づいて、心配そうに駆け寄ってくる。クラスメイトたちも心配そうに私を見ている。

 いやぁ、心配してくれる人がいるのはありがたい。

 しかし、今の私の頭はそれどころじゃない。あることに思い至り、痛みも吹っ飛んだ。

 私が勢いよく教卓の前の席を見るのと同時に、奴の笑い声が教室内に響いた。


 ・・・・・・も、やだ。


 私は心の中で今日は厄日だと確信した。

次回は天敵君が登場します。

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