中編
思ったより早く書き終わったので投稿します。
後編も今日中に投稿できるとおもいます。
そんな私達の関係に変化が生じたのは、高校に入って二回目の冬だった。
ある日突然、今日は先に帰っててくれ、と言われたのだ。
小学校から続いていた登下校の習慣が初めて崩れた日だった。
『彼』がいない通学路は、色褪せていて、とても静かなものだった。
その日以来、週に3~4回は帰りが異なるようになった。
最初は特に気にしていなかった周囲も、ケンカでもしたのかと気にかけてくれるほどに珍しいものだった。
その頃からだろうか。
『彼』が遠くに感じられるようになったのは。
『彼』の存在の重さに気づいたのは。
そんな日が続いて、11月のころ。
『彼』が、幸せそうに私の知らない少女――『彼女』と歩いていたのを、偶然見かけた。
見て、しまった。
『彼』と『彼女』を見たとき、私の身体はまるで凍りついてしまったかように動かなかった。
目を反らしたいのに、反らせなかった。
どうして、どうして私以外の誰かが『彼』の隣にいるの?
どうして私じゃないの?
どうして、どうして――?
そんな考えが頭の中に広がった。
身体の硬直が解けたのは、二人が見えなくなってから数分経ったあとだった。
ふらふらと家に帰った私は、きっと病人のように青白かったと思う。
ぱたり、と制服のままベッドに倒れこむ。
制服がくしゃくしゃになったが気にしない。
さっき目にした光景が脳裏に焼き付いて離れなかった。
『彼』のあの優しい目が好きだった。いつも見守ってくれているような、あの目が。
『彼』の手が好きだった。寒いときには私の手を抱えこんでくれるあの手が。
『彼』の声が好きだった。どんな時でも安心させてくれるようなあの声が。
あぁ、そうか。
私は『彼』が好きだったのか。
それは、遅すぎる気付きだった。
『彼女』は今までの彼女とは違う。
『彼』の心は、もう『彼女』のものなのだと、あの少しの時間でわかってしまった。
勝てない、と思ってしまった。
それでも、頭の中の声は止められない。
――どうして、私ではないの?どうして『彼女』なの?どうして、どうして――?
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