銃騎士物語 Ⅳ
大会最終日の朝。
朝食を済ませ、森のさらに奥へ進んだディージェイとガデットは、別の参加者に出会った。去年の勇者、町随一の貴族の息子、ロブ・フォリオとそのお供三名。
彼の手には最新型のツーバレルライフルが握られていた。
「おはよう、ガデット。今日もいい天気だね。ところでどうだい? 調子のほうは。いのししくらいは狩れたかな?」
ロブとお供が大声で笑った。
「今時、剣を使って大会に出る奴なんて、じじい達の他は君くらいじゃないか? 君もそろそろ銃を手に入れて、銃騎士になるための修行を始めたほうがいいんじゃないの?」
「う、うるせぇ!」
応えるガデットの声は、ロブのお供の笑い声でかき消された。ディージェイは「あたしには関係ない」という顔で離れて立っている。
飾りの沢山付いた銃をガデットの目の前で二度三度振り回しながら、ロブ・フォリオが続ける。
「今回、僕が勇者になったら、リッシュちゃんは頂くよ」
「な? ななな、なにぃ!」
血走った目でガデットがロブを睨む。握られたこぶしがわなわなと震えている。
「彼女みたいな素敵な女性が、今時、剣士や騎士なんて田舎者についていくわけないじゃないか。彼女にふさわしいのは強くて勇ましい、誇り高き銃騎士さ。僕のようなね。ま、君も少しは頑張りな。その古ぼけた剣でね」
笑い声と共に貴族集団は去っていった。
手近の岩を蹴って、ガデットがわめく。
「うっせぇ! 銃がなんだってんだ! 俺の剣は古ぼけてんじゃねえぞ! 親父から受け継いだ由緒ある聖剣だ! そんな玩具みてえな銃になんか負けねえぞ! ……たぶん」
八つ当たりが終わり、座り込むガデットにディージェイが声をかけた。
「何なの、あいつ?」
「ロブ・フォリオ、金持ち貴族フォリオ家の長男、去年の勇者だ。すっげーヤなやろーさ」
「去年? 赤トカゲひっつかまえたって、あれか」
「レッドドラゴンだ!」
「いいわよ、どっちだって似たようなもんじゃないの。ふーん、あんたの恋敵ってわけね」
からかうディージェイだったが、ガデットは溜息で返すだけだった。
「あんなやろうでも銃闘士だもんな。来年辺りは銃騎士か。ちっ! ロブなんぞにリッシュを取られてたまるか!」
「あんたも少しくらい言い返しゃいいのに。言われっぱなしじゃないの」
呆れた顔でディージェイが言った。
「俺だって言いたいことは山ほどあるさ。でも、あのやろうのいった事も本当さ、悔しいけどな。今時、剣士なんて流行んねえし、剣で銃にかなうわけもないし……」
「そうとは言い切れないわよ? 要は腕次第ってね」
「なぐさめはいいさ」
冷めた表情のガデット、ディージェイのほうはにこにこしていた。
太陽が随分と高くにある。そろそろ昼だ。
「もう昼か、急がねえと、あっという間に日没だな」
「ほーんとね」
険しい表情のガデットに比べ、ディージェイは何も考えていない風だった。
「なあディージェイ、もっと真剣にやってくれよ。この大会で俺の一生が決まるかもしれないってのによぉ」
「大袈裟ね。真剣にったってねえ、あたしの出番なんて全然ないじゃんか」
と、その時。近くで大きな銃声が聞こえた。
「近いわね」
「行ってみようぜ!」
「何で?」
渋るディージェイの手を引き、ガデットは銃声のした方へと駆けていった。




