始まりの旋律 歌視点
幼いときから作曲家の道を目指し、小中高それ以外のことには目もくれずにこの道を進んできました。
そのためもあるのでしょうか。男性や娯楽などにはあまり興味がありませんでしたし、大学進学を果たした今でも変わっていないものだと思っていました。彼に会うまでは。
出会いは学校のキャンパスの中でした。ぼんやりとゼミから歩いている途中のことでした。最近あまりうまくいってなかったので、そのままぼんやりと歩き続けました。
ふいに机で何かをしている男性に気づきました。彼は消しゴムを落としているのに取ろうとしません、柄ではありませんでしたが、私はそれをとろうと手を伸ばしました。
「痛っ!?」
痛みに顔をしかめながら見ると私の手は彼の足によって踏まれていました。その足の主を見ようと顔を見上げたとき、彼と目が合いました。
電気が走った気がするほどの衝撃でした。ほんの一瞬、いえ私の勘違いかもしれませんが。彼がニヤリと笑いました。
……あぁ、どこかおかしくなってしまったのでしょうか。その見下すような表情に、私は……一種の興奮を覚えてしまいました。
「ご、ごめんなさい」
不覚でした、一瞬でしたが私は彼に物ほしそうな、そんな表情を見せてしまった。
「こ、これ」
変に思われてしまったでしょうか? それも仕方ありません。もしかしたら私を気持ち悪いと思ったのかもしれません。
あぁなんて私はだめなんでしょう、そんな彼に対していまだに熱を帯びている。
こんな捻じ曲がった出会いが私と彼の出会いだった。
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