始まりの旋律 真一視点
幼いころからミュージシャンを目指し、小中高でもそれ以外のことには目もくれずこの道を突き進んできた。
そのためもあるのだろうか。女性や娯楽などにあまり興味が無かったし、大学進学を果たした今でも変わらないものだと思っていた。彼女に出会うまでは。
出会いはキャンパスの中でのことだった。机で作曲に取り組みながらぼんやりと外を見ていた。最近あまりうまくいってなかったのでただ坦々と時間を浪費していた。
ふいに机から消しゴムを押し出してしまった。取ろうという気持ちと、どうでもいいという気持ちが交じり合い、それを取るのに足を使うという行動を取った。
「痛っ!?」
靴越しでやわらかい感触が伝わってきた。その声の主を見るために机から身を乗り出した。そのとき彼女と目が合った。
電気が走ったような気がするほどの衝撃だった、痛みに顔をしかめ、瞳を潤ませ、少し頬を赤らめる彼女を見て、
……あぁ、どこかおかしくなってしまったのだろうか。あろうことかその苦しそうな表情に、俺は……一種の興奮を覚えてしまった。
「ご、ごめんなさい」
不覚だった、一瞬だったが私は彼女を見下すような、そんな表情を見せてしまった。
「こ、これ」
彼女は私の机に消しゴムを置くと走ってどこかに行ってしまった。
怒ってしまったのだろうか? それも仕方ないだろう。もしかしたら俺を怖いと思ったのかもしれない。
あぁなんて俺は不謹慎なやつなんだ、そんな彼女に対していまだに熱をいまだに帯びている。
こんな捻じ曲がった出会いが俺と彼女の出会いだった。
とあるキャラのかかわりの深い人物の断章です
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