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報道記者UTUBO

作者: SAME


 ぎやああああああああっ!!!


 呼人は新聞を置いて、慌てて声の方へ向かった。

脱衣所で、娘の藻琴がウナギ(…いや、ウツボかな?)に手足が生えたような妙な生物と対峙している。


 「んなっ…だ、誰だお前…!!!!!!」


 言葉が分かるのかどうかも考えずにウツボを怒鳴りつけると、意外にも普通に返事が戻ってきた。


 「いや、怪しいもんじゃありません…ちょっと地球のドキュメンタリーを作成している宇宙人でして。えっと…ここは日本国か…名刺名刺…はい、私こういう者です。」

 「読めないんだけど。」

 「えー、早い話、この国のNHK?みたいな真面目な局の者なんですよ~、ええ。」

 「ウソをつくな!私の着替え撮してたじゃないっ!!」


藻琴が顔を真っ赤にしてわめく。ウツボは両手を広げ、ヤレヤレというポーズをとった。

 「ハァ、ほ乳類なんかの着替えなんて、エロの範囲にはいらんでしょ。」


 「 な ん だ と 魚類がぁぁっ!!!」


 「おっと、暴力反対ー。こんな辺境の星の狭くて汚い小市民の生活を取材したんだから、ありがたいと思ってもらわないとー。」


 「生意気だな、お前。なんだ、マスコミは特別だとでも思っているのか?」


 「ひょひょひょ…怒っちゃいました~?怖い怖い。これだから発展途上星人は…。ま、面白い物色々撮れたし、色々編集しまくってネタにしちゃおうかな~。地球人の低レベルな日常、なんちゃって。では、私はこれにて~。」


 ひょいっと小さな棒を天井にかざすと、天井をすり抜け、光が降りてきた。その光に包まれウツボが上へ上がっていく…。


 「ば~はは~い♪」


 「逃がさん!!!」

 「ぐは。」


 藻琴の怒りのキックがウツボ腹部にクリーンヒットし、その衝撃で手に持っていた小さな棒を落としてしまった。呼人がそれを拾い上げる。


 「これ、宇宙船のカギ?」

 「ちょ…返して下さいよっ。スペア無いんだから。帰れないじゃないですかっ!」

 「誰が渡すか。散々、我が家と地球をバカにしやがって。謝れ。」


 「…ふっ…ふふふふ…、いいんですか?そんなこと言って。昨日あなたのお嬢さんがした『あんなこと』や『こんなこと』をオールフルカラー無修正で全宇宙に放映しちゃいますよ~?このカメラは単体でも200万光年離れている中継基地まで映像飛ばせるんですからね…。」

 「なっ…何?!」

 「ちょっ、何言ってくれてんの!昨日は何もやってないわよっ!」





 「昨日『は』?」


 「お前はー!柄の悪い連中と付き合ってるんじゃないだろうなー?!いつも何してんだ、カツアゲか?万引きかー?!!」

 「何でそーなんのさ!自分の娘を信用しなさいよ!ってゆーか、友達バカにすんの止めて!」

 「おぉ、いい画だ。親父vs娘!迫力の素材が~!  ぐふっ!!」

 「あ~ら、いい踏み心地。」


 藻琴は黒い笑いを浮かべながら、足でゴロゴロ、ウツボを転がした。


 「さて…お父様、コイツどーしましょーか?」

 「ふむ、市場に持ってって刺身にしてもらうか…鍋もいいかも。」

 「ヤメテ!その何でも食おうとする考え方、ヨクナイ!ヨクナイヨ?」

 「ウツボはコラーゲンたっぷりで、たしかどこかの地域でよく食べられているはずだなぁ。色々調理法があるんだよ。コイツはどうか知らんけど姿似てるし、多分成分も同じだろう。」

 「コラーゲンたっぷり!!」

 藻琴の目の色が変わったせいか、ウツボは両手を合わせて泣き出した。


 「うっ…すみません、調子のりました。マスコミやってるとつい…。失礼なこと言ってごめんなさい…星には妻と可愛い子供が待ってるんです…だから…だから…うぅ…。」


 藻琴が足を離しても逃げもせずに、そのまま小さくなって拝んでいる。


 「う…なんか罪悪感が…。」

 「…まぁ、今回は許してやるから、家で撮った映像のデーター全て渡してもらおうか。」

 「はい、これです、コレ…。」

 「随分枚数多いわね。」

 「3日前から撮ってたんで、どーも。テヘ☆」

 「むかつく…!!こいつむかつく!!」

 「まぁまぁ。これで全部だな?もう二度とやるんじゃないぞ。」

 「ハイ。」

 「じゃぁ、返してやろう。」


 と、差しだそうとした物をひったくり、ウツボは勝利の雄叫びを上げた!


 「はーははははは!!ばーかーめー、取った動画は自動的に宇宙船へコピー転送されるんだよーっだ!そんなメディア意味ないもんねーっ!」

 「こ、こいつー…!!反省してないじゃん!!」


 「よくもコケにしてくれたなー発展途上星人風情が!!星に帰ったら編集しまくってしまくって、地球の悪い噂流しまくってやる!!報道の力を甘くみんなよー!!クソじじいにクソガキ、さらばっ!!」


 カチッ


 「…あれ。」

 「それ、ペンライト。」

 「んなっ…!!!」


 「……藻琴、魚安に電話。ちょっとさばいて欲しい物があるから家にきてくれって。」

 「はぁーい。」

 「い、いやあぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 その時、外から妙な機械音が聞こえてきた。

 「ん?」

 「なんだ…?上の方から何か…」

 「キター♪」


 「ケケケ、カメラの転送ボタンはずっとONのままだったんだよーっだ。今までの一部始終映像を見て助けに来てくれたのさ。残念だったなー、ケケケ!」


 3人の前に光の筋が下りてきて、中からこれまたウツボが1人現れた。


 「部長ぉー!!」

 「いやぁ、さっきの映像今までで一番よかったよ。あの緊迫感!」

 「ありがとうございます!!」

 「で、上と話し合って決めた結果、キミ、ここに残って活動続けてくれたまえ。」

 「え」

 「ここの星は実に興味深い。宇宙旅行もできないのにここまで文明が発達しているとは…キミ、ここの住人に会ったのは何かの縁だ。協力してもらい、色々と取材してきなさい。」

 「え?な…え?」

 「…これまでキミは真の報道について心構えがなっていなかったからな。いい勉強になるだろう。それじゃぁ。」

 「え、まってっ!部長―!まってぇ!!」


 そうして、ウツボ部長は光の中へ戻っていった。


 「………。」

 「………。」

 「………。」


 「あ、あの~…そういう訳なので…私これから仕事に…。」


 「藻琴、魚安に電話。」

 「はぁーい。」

 「いやああああああああっ!!」





お読みいただきありがとうございます。



魚安「えー魚人ですかぁ?…勘弁してくださいよ。」と断られる模様。

で、うやむやで結局ウツボはこの家にいつく、と。

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