不幸な僕。 1
僕には産まれたときから2つの体質がある。
1つは不幸体質。
今僕は町外れで一人で暮らしているのだが、その理由も僕の不幸が周りをも不幸にするというもの。
確かに僕が両親と暮らしている時は、不審火5回、家に雷が落ちた事3回、突然の地盤沈下2回、突然の爆発1回など、という周りに迷惑をかけまくりだった。
でも、一人暮らしを始めてからは雷が落ちる事も、地盤沈下も無くなり、割と一般人なみの不幸しか無くなったので、最近はちょっと幸せを感じている。
2つ目は、やたら女性に嫌われる体質。
何かキモい、何か変態、生理的にダメは当たり前。
1才から80才まで、ましてや動物や魔物まで性別がメスだった全て関係無く僕を嫌う。
だから、今まで母親を含めても女性と会話したことなんか一度も無い。
こんな僕に訪れた幸運、それは2丁の魔銃を拾ったこと。
その2丁の魔銃があれば魔物や盗賊なんて恐くない。
そう、僕はこの町を出れる。
「エルト、旅に出るとは正気か!?」
60才くらいの白髪混じりの男が、息を荒げて迫ってくる。
この人は町の長老さん、両親にも見捨てられた僕に唯一優しくしてくれる人。
だから、僕は長老さんだけに旅に出るのを伝えに来た。
「うん!」
「魔物や盗賊もでるんだぞ!」
魔物とは戦争の兵器として造られた物が野生化し人を襲うようになったもの。
盗賊とは職の無い荒くれ者が集団となり、山や街道などに居着いたもの。
2つとも100年前の戦争の傷痕。
その2つがあるから、今だ人々が剣を棄てられないし町を出れない。
「僕にはボルトとポルタがいるから」
ボルトとポルタとは、僕の2丁の魔銃の名前。
僕は魔銃を拾った時から今日のために2年間練習し続けた。
そのおかげで、この2丁の魔銃が有れば僕はどんな敵にでも勝てる自信がある。
「しかし、お前は体格だって良い方じゃないんだし、なにより運が全く無いじゃないか」
息を荒げ僕の事を心配してくれている長老さんに、思わず目頭が熱くなる。
僕は改めて長老さんの優しさを噛み締める。
「僕は、僕の居場所を必ず見つけだしますから」
長老さんは僕に良くしてくれた。
いつ捨てらるかビクビクしていた僕のために、町の外れに家を作ってくれたけど、町の皆はそれでも僕のことを嫌っている。
僕の居場所はここではない。
「長老さんまで不幸になっちゃうから、僕はもう行くね」
感極まり涙が出てきてしまったので、僕は振り返り家を出ようとする。
「死ぬんじゃないぞ」
「僕は死にませんよ!」
僕はそのまま長老さんの家を後にし、町に出る。
町の人は僕が来ているのを知って一人も外に出ておらず、町には風の音以外しない。
「見送りは風だけか・・・」
いいさ、僕が悲しいだけで皆が不幸にならないならそれで。
町の門を目指してゆっくり歩き出す。
この町に良い思い出はほとんど無いけど、いざ町を出るとなると少し寂しい気もする。
こんな僕でも、やっぱり生まれ育った土地に愛着があるんだ。
僕は目からとめどなく出てくる涙をぬぐう。
僕が町を出たら皆喜ぶんだろうな。
まぁいいか、皆が喜んでくれるなら。
「みんな、じゃあね」
僕は町の門を開け、新しい土地に向けて歩き出す。
女神様
女神様が本当にいるのなら
僕に
僕だけの
誰にも迷惑かけない土地を与えてください。