お姫様とマッチョ
昔々、ある国に、王様とお姫様が住んでいました。
王様は立派に国を治めていて、その娘のお姫様はそれは美しく賢くて、みんなに慕われていました。
ある時、王様は、国で一番強い若者をお姫様と結婚させようと考えて、国中にお触れを出しました。
自分こそがお姫様の夫にふさわしいと、国中から力自慢の若者たちが集まって、力比べの大会が開かれました。
厳しい勝負を最後まで勝ち残ったのは、筋肉モリモリのマッチョな青年でした。
逞しい若者に、王様は大喜び。
国で一番強い若者がそのマッチョに決まると、お姫様はマッチョにこう言いました。
「あなたは国の若者の中で一番強いですが、それは若者だけの話。森のどう猛な獣にはきっと敵わないでしょう」
それを聞いたマッチョは、勇ましく森へ分け入ると、森で一番大きな熊をひと殴りで仕留めて帰ってきました。
王様は大喜び。
すると、お姫様はこう言いました。
「あなたは森の獣より強いですが、それは相手が獣だからです。知恵を持った人間の軍隊が相手では、きっと敵わないでしょう」
それを聞いたマッチョは、国の将軍が指揮する百人隊と戦いました。将軍が泣いて降参するまで戦いました。
王様は大喜び。
すると、お姫様は今度はこう言いました。
「あなたはとても強いですが、わたくしと結婚するのなら、この国を支えるくらい強くなければいけません。それを証明してください」
そう言われたマッチョは、王様たちが住む宮殿の壁に手をかけると、エイヤッと気合を入れて、宮殿を丸ごと持ち上げて見せました。
王様は大喜び。
お姫様はしばらく目を見開いて何も言えずに黙っていましたが、やがてこう言いました。
「あなたはとても強いのですね。あなたの力は、この国を支えるだけではもったいないです。きっとこの世界も丸ごと支えることができるはずです」
ようやくお姫様に認めてもらえたマッチョは嬉しくて、得意な気持ちになりました。
いい気分で地面に手をつくと、えーいやっ、と、さっきよりもっと気合を入れて、なんと地球を持ち上げてしまいました。
地球が動いた衝撃で、世界中で地震と竜巻が起こり、火山という火山が噴き上がり、海は荒れ狂い海流が乱れ、人々は大混乱に陥りました。
もちろん王様は大喜び。
そしてお姫様は混乱に乗じて逃げました。
地上では大混乱が発生しましたが、宇宙の理から見れば地球の位置など些細なこと。
天変地異もやがて落ち着き、世界に平和が戻りました。
それ以来、私たちは、ひとつ分ズレた地球の上で暮らしているのです。




