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短編とかその他

勇者のビー玉

作者: リィズ・ブランディシュカ



 ビー玉は光る。


 キラキラ光る。


 勇者様の大事なもの。


 とっても大切な宝もの。


 生まれた時から持っていたから、たぶん死ぬ時までずっと一緒。


 何か意味があるのかもと思い続けて、持ち続けて、ずっとだから。


 愛着がわいてしまって、手放せなくなってしまった物。






 青の塔を攻略した勇者は、休憩中にビー玉を眺めていた。


 勇者は新たな力を得るために、試練の塔という特別な場所をおとずれていて、赤の塔と紫の塔を攻略した後だった。


 炎と毒、水の魔法を得て力が強くなった勇者。


 けれど、心はまだまだ弱い。


 戦いたくないと悩む勇者は、ビー玉を見つめて自分を奮い立たせる。


 きらきらと光るビー玉の光を見つめていると、自分の中から勇気が湧いてくるようだった。


 元気を得た勇者は休憩を終えた後、他の塔へ挑戦していく。


 すべては強くなるために。


 強くなって、この世界に生きる弱い人たちを守るために。






 七日かけて、試練の塔にある、七つの塔を攻略した勇者。


 勇者は、人々を困らせている魔王に対峙するために手掛かりをもとめて、旅を再開させる。


 あちこちで暴れまわる魔王の配下、四天王やモンスターたちは、とても強く、勇者はそのたびに苦戦した。


 けれど、どんなに強い敵が相手でも、ビー玉に励まされた勇者は立ち上がる。


 勇気の光を胸に宿して、人々の敵を打ち滅ぼす。


 そうして旅を進めた勇者は、ある賢者と出会う。


 なん百年も前から生き続けていた、長生きの賢者。


 その人物は先代の勇者を知っていた。








 先代の勇者は、数十年前に死亡している。


 魔王との戦いで、一歩及ばずに敗北していた。


 その先代勇者は、今の代の勇者と性格がよく似ていた。


 臆病で弱くて、勇気がなかなか出てこない。


 そんな勇者だった。


 だから、命をかけた戦いでは、今一歩ふみだせず窮地に陥ることがよくあった。


 そんな勇者は、幼馴染からもらった小さな水晶をずっと大事にしていた。


 弱気になったときは水晶を見つめて、自分を奮い立たせていた。


 しかし、その水晶をくれた幼馴染は天寿を全うできなかった。


 モンスターの被害にあってなくなってしまったからだ。


 勇者はそのとき、臆病な性格のせいで、幼馴染を助けることができなかった。


 だから過ちを忘れないようにと、戒めとして水晶を肌身離さず持つことにしたのだった。







 今代の勇者は先代の生まれ変わりかもしれない。


 賢者はそういって、魔王幹部の情報を教えた後に去っていった。


 今代の勇者はビー玉を眺める。


 キラキラとした輝きを放つビー玉を。


 目利きのいない故郷の村では、ものの良し悪しや品質などは詳しくわからなかった。


 だから、もしかしたら専門の鑑定士に見せれば、そのビー玉がビー玉かどうか、わかるかもしれない。


 しかし今代の勇者はそうはしなかった。


 今の世界を守るためには、今のこの世界に生きる人たちを思うことが重要だと、結論付けたからだ。


 今代の勇者は亡くなった人を思って戦うより、生きている人のことを考えて戦うことにした。






 ビー玉をふところにしまった勇者は、また旅を再開させる。


 いつかこの世界に生きている人たちのために、弱さを克服して魔王を倒すために。



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