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会談②

次話投稿は明日の深夜0時7分の予定です。

「知らないか? 植物から生命エネルギーを分けてもらい、それを様々な現象を引き起こすための燃料とする」


「……知らんな。そんな(すべ)があるのか?」


「はぁ……」


 この世界の発展のしてなさに、思わず溜め息が出てしまう。

 こんな世界で、俺は破壊種を倒す方法を見つけることができるのか?


 ……いや、ものは考えようか。

 この世界は他の技術に浮気なんかせず、魔術一筋で発展してきた。

 なら、俺の知らない魔術の極致があるかもしれない。


「とにかく、俺は仙術ならそれなりに使えるが、魔術の練度はそこまで高くない。だから、ここらで魔術レベルを上げておこうと思ってね」


「……何故、そこまで力を求める? アングを瞬殺するほどの力をすでに持っているじゃないか。貴殿はもう十分な力を持っていると私は思うのだが───」


 王が訝しげにこちらを見る。

 わざわざ大きな力を持っているのに、明らかに劣っている連中から何かを学ぼうとするなんておかしな奴、とでも言いたげだな。




「───全然足りねぇよ」




「───ッッ」


 俺の言葉に威圧され、王がたじろぐ。

 何も知らねぇ奴が、勝手なことヌかしてんじゃねぇよ。


「……魔族の幹部があの程度の強さなら、そのボスの魔王だって、上手くやれば今の俺でも倒せるかもな。でも、そんなんじゃ全然足んねぇだよ。()()()()を絶滅させるには全然足りねぇ」


「アイツら……?」


「俺の目標はとある種族の絶滅だ。それを成すには()()()()()()なんだよ」


「………」


 王は、俺の要領を得ない話に困惑していた。


「貴殿が言う『アイツら』とは、一体なんなんだ?」


「“破壊種”」


「ハカイシュ?」


「出現したらなんもかんも破壊していく最低最悪な化け物だよ。例え植物だろうが虫だろうが動物だろうが、そいつの前では等しく破壊対象だ。世界そのものを破壊し尽くすまで、そいつは止まらない」


「そいつは……魔王よりも強いのか?」


「間違いなく」


 俺は即断言する。

 今、この世界において一番の存在とも言える魔王でも勝てない存在がいる───それを聴き、王は分かりやすく動揺していた。


「ほ、本当にそのような存在が……それはまたなんとも……」


 俺の話を聴き、王は思考を巡らせ始める。


「だ、だが、貴殿の『センジュツ』とやらは天変地異にも等しい力だったと聴いたぞ。そんな力を持ってしても、勝てないと言うのか?」


「あぁ、勝算なしだ。仙術じゃ、傷すら付けられないだろうよ」


「そんな馬鹿な……」


 動揺し、またしても王は思考を巡らせる。


 ・・・。


 俺から言っておいてなんだが、この王、随分とあっさり人の話を信じたな。

 いくら国を救った恩人とはいえ、会って間もない人の話をここまで真剣に受け取れるもんかね?

 本当に大丈夫か? こいつ。


 まぁいいか。


「俺は破壊種を殺すための手段を探している。破壊種(アイツら)は強い。だから、今はなんでもいいから情報が欲しい。魔術を学びたいと言ったのもその一環だ。俺は、破壊種(アイツら)を殺せるならなんだって使ってやるッ」


「……」


 俺のただならぬ決意を感じたのか、王はまたしても気圧されているようだった。


「安心しろよ。ちゃんと勇者の務めは果たしてやる。この前、相対して分かったが、魔族(アレ)は俺の嫌いな人種だ。破壊種絶滅の前哨戦として、きちんと魔族(アレら)も全滅させてやるさ」


「……」


「だから、とっとと紹介しろよ、この国で一番の魔術師を。俺に、魔術の知識を寄越せッ」



   □□□



 勇者と王の会談が終わり、すでに勇者が去った応対室にして。


「よろしかったのですか? 王よ。あのような勇者の横暴な態度を許して」


 護衛の内の一人が、未だ応対室に残り、窓から外を眺めている王に、先ほどのことを問う。


「よい」


「しかし、あれでは舐められてしまうのでは?」


 また違う護衛が王に問う。


「よい。こちらに敵意を向けられるよりマシだ」


「「……」」


 王が「よい」と言ったので渋々引き下がるものの、護衛達はあまり納得していない様子だった。

 仕える主人が下に見られれば、あまりよい気はしないのは当然だ。


「……勇者に反旗を翻された方がマシだったか?」


 そんな護衛達の心情を見抜いた王。

 彼らに向けて問いを投げかける。


「そ、それは……!」


「先の早馬からの報告。キサマらも聴いていた筈だ。ここで意地や欲を見せてみろ。待つのは王国の崩壊だぞ」


「し、しかし、彼は勇者としてここに召喚されました。そんなものが、そのような行動を起こすとは……」


「絶対にないと言いきれるか?」


「……」


 勇者とは赤の他人だ。勇者(かれ)のことをほとんど知らない状態で、断言などできる筈がない。


「だが、このまま引き下がり続けるのも愚の骨頂だ。なんでも引き受けるつもりはこちらもない。それに、先の戦いの結果が『センジュツ』と呼ばれる力によるものだとするならば、ぜひともその知識は手に入れておきたい」


「……では何故、先ほどそのような条件を突きつけなかったのですか?」


 先ほど、王は勇者になんの条件も突きつけず、この国最高の魔術師と会わせる約束をした。

 しかし、『センジュツ』という知識が欲しいのならば、紹介する側になったのだから、その時に条件を突きつければよかったのでは、と護衛が突っ込む。


「たわけが。仮にもこちらは『国を救ってくれ』と頼んでる側だぞ。条件を突きつけれるのは勇者(あっち)であって自分(こっち)ではない」


「しかし、それでは知識が手に入らないのでは……?」


「安心するがよい。そこら辺はあの男に任せておけばいいのだ。あの男が、目の前にある飛び切りの力に食いつかぬ筈がないからな。それに、私は頼んだ側になるが、あの男は逆に頼まれた側になる。あの男からの方が条件も突きつけやすかろう」


「あの男……」


「そう、全てはあの男に任せておけばよいのだ。この国最高の魔術師───エグジスト・ファストネードにな」

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