魔族≠破壊種
またして更新時間が少し遅れてしまい、申し訳ありません。
次話投稿は本日19時7分の予定です。
俺は魔族の軍が壊滅するのをしっかりこの目で確認していた。
なんか後ろの方でギャースカ騒いでいたやつも、樹木で造った丸太によって潰さるのを確認したし。
もう、一匹も残ってない。
人間を滅ぼす存在と聞いて「もしや」と思ったんだけどなぁ。こりゃ当てが外れたか。まぁ、大量にいると聞いた時から、うすうす感じてはいたけど。
魔族は“破壊種”じゃない。
俺の仙術ごときで殺られているような雑魚じゃ話にならない。
確かに、俺の仙術による攻撃の規模は大きかった。
術者の俺も驚いたほどだ。
仙術とは、植物から生命エネルギーを貰い、それを原動力として、様々な現象を引き起こす術。植物から貰うエネルギー量を増やせば増やすほど、起こせる現象の規模は大きくなる。
それでも、限界はある。
蓄えられるエネルギー量が決まっているからだ。個人差はあれど、そこまで大きな差はない。
限界まで溜めても、できることと言えば、せいぜい苗木を大人の樹木に成長させることぐらい。しかも、成長速度も緩やか。攻撃に転用しようにも、植物から得たエネルギーだから植物以外のことに使うのはエネルギー効率が良くない。できても、大体一メートルぐらいの火の玉を発生させることぐらい。それも短時間。
だから普通、仙術使いは、常に植物からエネルギーを貰って現象を継続させるか、自分以外の別のエネルギー貯蔵庫を作る。
今回、俺が使ったのは、後者の方だ。
馬車に乗せられた時から俺はエネルギーを集め、そのエネルギーを、馬車に乗る前に集めておいた別の植物の種や苗に蓄積させておいた。勿論、植物一つ一つにも蓄えられるエネルギーには限界があるから、蓄えられるエネルギー量が限界になったら、また別の植物にエネルギーを蓄積させる、を繰り返して。
そうして、エネルギー貯蔵量がマックスになった植物の種や苗を大量に用意していたからこそ、先の魔王軍を壊滅させたような大規模な現象を引き起こすことができた。
これが、仙術で大規模な攻撃を行えた理由。
でも、これは、仙術使いの中でもかなり長いこと仙術にふ携わってきたベテランにでもならないと使えない技法で、つまりはめちゃくちゃ難しい。
仙術は、植物という、意思がないとはいえ、別の生命からエネルギーを貰って力を行使する特性上、扱いは魔術なんか比じゃないほど難しい。
魔術は、素質があればどんな人でもかかって一年ぐらいで扱えるようになる。それに比べ、仙術は扱えるようになるまで何年、下手したら何十年とかかる。
それだけ難しい技術の中の、さらに難度の高い技法を、俺は今回扱った訳だ。逆にそれなりの規模は出せないと困る。
だとしても、今回の規模は驚いた。
前世の俺ならば、起こせても今回の半分届くか届かないかぐらいの規模でしか植物を操れなかっただろう。
まず、一度に植物から貰えるエネルギー量が大幅に違った。これは元からの素質や努力によって変わるものだけど、その量が最早異次元。一度に貰えるエネルギー量が前世の倍近くって。これだけでも、神がそれなりの肉体を用意したことが分かる。前世の俺の体とは桁違いの素質。
これだけでも凄いのだが、その後、一度に解放して操れるエネルギー量も桁違いだった。
いくら植物に力を溜め、一度に扱えるエネルギー総量を増やしていた所で、それを扱えるだけの技術がなければ意味がない。
どれだけ蓄えようとも、一度に扱えるエネルギーの量には限界があるのだ。これも、素質や努力によって変化するが。
その一度に扱えるエネルギー量が、この体はおかしいのだ。前世の倍どころの話じゃない。最早、限界が見えなかった。
これが最高品質の肉体か。なるほど、あの神は俺の要望にきちんと答えてくれたみたいだな。
これなら、前世では手が届かなかった仙術の至高にも、手が届くかもしれない。
神樹降臨・霊樹降誕・生命の伊吹───どれも、核爆弾よりも大きな現象を引き起こせる仙術の極致。
前世の俺では手が届かかなかった仙術の最奥だ。
今のこの最高の肉体なら、おそらくそこに辿り着くのも夢ではない。
───だが、この世界で俺は仙術を極めるつもりはない。
何故なら、それでは破壊種を倒せないことが分かっているから。
前世ですでに、俺より才能のある者共が仙術の至高を使って破壊種に挑み───そして敗北しているのを、俺は知っている。
俺が知っている仙術の知識では、破壊種を倒せない。そういう結論がすでに出てしまっている。
だから、俺は仙術の技量を高めるつもりはない。
ここで探すのだ───破壊種に有効そうな強力な何かを。
探し、極めなければ───破壊種を絶滅させるために。
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魔族の軍を壊滅させた後、俺は王都に呼ばれた。
俺の功績が早馬で王に伝えられたんだろう。
それに、俺は仮にも勇者召喚で呼ばれた救世主、らしい。だから、挨拶も兼ねて、て所か。
まぁ、王様と会うのはいい。俺も相談したいことがあるし。
ただし、謁見という形は取らないでもらった。
王様としては、勇者のことを民に紹介しておきたいだろう。勇者という、魔王を倒してくれる存在が現れたことを、多くの民に宣伝し、国民を安心させたい───また、高い身分の人達に協力を呼びかけることにも繋げられるしな。
でも、それは面倒だ。
俺は個室での対談を望んだ。
大分無茶を言っている自覚はあるが、俺の意見が通るという自信もあった。
俺は魔族の軍を簡単に屠るほどの実力を見せた。
この事実があれば、自分を絶対者だと勘違いしている愚王でもない限り、俺の要望を無視するなんてことはしないだろう。
予想通り、王は個室での対談を受け入れてくれた。
よし、これで気兼ねなく王と話が出来る。
俺はまた馬車に乗せられ、今度は王都へと向かう。
何事もなく王都へ到着した俺は、兵士から「王がすぐに話をしたい」と望んでいることを伝えられる。
そうして、休む間もなく俺は王がいる王城へと連れられて、王城のとある一室に案内された。
とんとん拍子だな、と思いつつ、俺は兵士に言われるがまま扉の前で待機して。
兵士が扉の前でノックして「勇者をお連れしました」と伝える。
部屋の中からは「入れ」という言葉が。
そうして、兵士が扉を開ける───と。
部屋の中央辺り、長方形の質の良さそうな木製の机を、左右から挟むように置かれた、これまた質の良さそうな赤色の長椅子。
その片方に座る、王冠を被り、豪華な衣服に身を包んだ、いかにも王様っぽい風貌の男が、こちらに視線を向けていた。
※8/31 16:16 追記
申し訳ありません。
19時更新は厳しかったです。
次回更新は深夜0時に変更させていただきます。