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あなたが描く私の人物像

作者: ことり


皆様は詐欺メールを受け取ったことはあるだろうか?

私はある。


ある日、気づくと迷惑メールホルダーにけっこうたまっていた。


普通なら内容も見ずに全削除一択なのだが、タイトルが気になって開いてしまった。



『◯月☆日までに慰謝料を振り込まなければ法的手段にでます。』



と書かれていた。


『慰謝料』『法的手段』という言葉に焦り、私は冷や汗を流す・・・ことはなかった。


何故なら指定された日付が半年前だったからだ。

すでに手遅れ、法的手段に出られていてもおかしくない期間が過ぎてるが、私にはなんの連絡もない。


それよりも、何故突然『慰謝料』『法的手段』になるのか?

私が一体何をしたというのか?


さらにスクロールすると、『弁護士』と『母親』と『マサト』という人からのメールが気になった。


始まりは『慰謝料振り込み』のさらに2ヵ月ほど前のマサトからのメールだった。



『なんで、待ち合わせに来ないの?』



・・・意味が分からない。


とりあえず、私は待ち合わせをすっぽかしたらしい。



私は気になってマサトからのメールを次々と開いていく。



『俺、なんかした?』


『返事ちょうだい。』


『もしかして自然消滅狙ってる?』



この辺りでマサトが私の『恋人』という設定だと気づいた。


芸が細かいなというのが、最初に思った感想だった。


そしてマサトは段々とヤンデレ化していった。



『どうして返事をくれないの?』


『俺をもてあそんでたの?』


『他に好きな人が出来た?』


『絶対別れない。』


『別れない別れない別れない・・・』



マサトに一切心当たりがなくても、一日何十件にもなるストーカーバリのメールをリアルタイムで気づいてたら、そりゃもう怖かっただろう。


返信をしない相手に根気があるなというのが、この時の感想だ。



そしてマサトの代わりにマサトの『母親』からメールが届いた。



『マサトちゃんが貴女のせいで傷ついて、大学にも行かずに部屋から出てこなくなったわ。どうしてマサトちゃんに返事をしないの?』



・・・おうふ、どうやらマサトはマザコンのようだ。


マザコン彼氏は嫌だというのが、この時の感想だった。


もう詐欺メールというよりも物語を読むような気分になり、『母親』のメールを開いていく。



『仕事が忙しいのかもしれないけど、誕生日にも合わないとかマサトちゃんが可哀想だと思わないの?』



・・・仕事?私は高校生ですが、何か?

ちなみにうちの高校はアルバイト禁止です。


そして、誕生日に会えない恋人同士なんて世の中いくらでもいると思うし、マサトは母親にお祝いしてもらえばいいと思います。



『貴女のためにプレゼントも必死になって選んでたのよ!』



私の誕生日だったのか!!


残念!私の誕生日は来月です。


十二分の一に賭ける度胸が凄いな。



『どうして返事をしないの!?マサトが初心だからって弄んでたのね!貴女の職場に貴女は未成年(この時は二十歳が成人)を弄ぶ悪女ってメールしてもいいのよ!!今の職場には居れなくなるでしょうね!!』



むしろやってみてください。


私が一体どこで働いているというのか?



何度でも言おう。

私は高校生。アルバイト禁止の高校に通ってます。

どうやら、二十歳以上を想像してるようだが、マサトが大学生なら私は年下です。



『未成年と交際しといて弄んで自然消滅狙うなんて大人のすることじゃないわよ!』



私も未成年です。



『未成年と交際するなんて法律違反なんだから!弁護士を通して慰謝料請求させてもらいます!』



・・・???

確かに、未成年と成人の交際はよく思われない風潮はあると思う。


でも、法律違反ではないよね。


なるほど、ここで『弁護士』が出てくるのか。


私は弁護士からのメールを斜め読みし、最後の『◯月☆日までに慰謝料を振り込まなければ法的手段にでます。』まで読み終えると、ふと思った。



マサトと私が付き合っていたとしても、マサトからの一日何十件にもおよぶメールで私がストーカー被害を訴えれば、慰謝料を貰えるのは私なんじゃなかろうか。



そんなことを思いながら、迷惑メールを全削除・・・・・・する前に人に見せて爆笑しよう!


この笑いを誰かと共有したくてたまらない!!




「ねぇねぇ聞いて。私って年下の大学生を弄ぶ悪女なんだって。」



お読み頂きありがとうございます。


この話は詐欺メールを許容するものではありませんm(_ _)m



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