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歳ノ差恋愛事始

http://reviews.bookstudio.com/author/10794/10728/2.htm

2008年07月17日(Thu) 09時54分に投稿



僕コソ君ヲ愛シテイル。



確かにそう言った。ように聞こえた。


耳で聞いたのではなく。


いや違う。耳ダケで聞いたのではなく。心の耳と耳たぶの付いた耳と、両方で聞いたのだ。


鼓膜に刺激を感じたというより、どっちかというともう少しスピリチュアルな現象に違いなかった。


何にしても気が遠くなるような出来事。いけめん。いけめんもいけめん、ほぼ超人的な顔だちと言いたい。


浅黒い色は彫りの深さがひときわ深く目に映る。固くシャープな鋼鉄の鼻筋。一点曇りのない瞳。CMの文句ではないが、輝くような白い歯とは、彼のことをいうのだ。


足だってめちゃくちゃ長い。腰の位置を見ろ。Y次郎なんか比じゃないし。何たってこっちはアメリカ人だ。骨組みからして違う。まず完璧ー!


完璧なカレシを選んだ。


もう、かっこいいい!そんな人に逆告されるなんて。


微笑んでいる。ダイアかとばかり見る糸切り歯が眩しい。


白い歯が好きなのである。芸能人は歯が命だというけれど、そう思う。なにげにそこへ唇をつけた時だった。途端に顔が燃えるようになった。気が動転して自分が自分でない感じだった。


「今のがうちのファーストキス!一番目のキス!」


心のわめくのを抑えると、続けて囁いた。


「Aさん、うちはあなたが好き。うちはあなたしかいない」と。


そうして聞いたのが「僕コソ君ヲ・・・」だった。無論英語で。


ハリウッドのムーヴィースターだから本名なのではない。芸名ですらない。多方面へ配慮しつつ、ここでは仮にAとするのである。


Aは絶え間なく秋波を送ってくる。コートダズュールに建てた別荘のテラスより。一枚の写真の中より。きょう本屋さんで買ってきた写真集の、中でもお気に入りの一枚だ。





このらぶらぶ、直らぶえっちに進むのだが、七十一歳年長のカレシであってみれば、究極の年の差系というわけであろう。


また聞こえた。


「愛シテイル。君ヲダ」


たまらずうつむく。


98年10月、若菜十五の秋の日の一幕である。


http://reviews.bookstudio.com/author2.php?id=10794

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