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部長  運野 良夫  作者: 犬 文男
3/7

第三話 ヘルスケア編

反撃の狼煙

宿敵、黒田を倒した運野。

次は、いよいよ鬼黒との対決と思いきや、

新たな指令が、運野に下される。



<ブラウン商事 社長室>


[土屋敷社長]

 今度、新規にヘルスケア事業を

 立ち上げることになった。

 君には、そこの責任者として

 活躍してもらう。

 

[運野]

 ヘルスケア?


[社長]

 君にピッタリの仕事だ。

 詳細は、既に現場入りしている

 土山、土田両君に聞いてくれ。

 オープンは、三日後の予定だ。

 よろしく頼む。


[運野]

 かしこまりました。



<ヘルスケアセンター 事務室>


[土田花子]

 待っておりました、部長。


[運野]

 土山君は?


[花子]

 営業活動に奔走しています。


[運野]

 会員は、今のところ、何人ぐらい?


[花子]

 一人です。


[運野]

 一人か〜。

 これ、うまくいくのかな?


[花子]

 最初のお客様に、

 良い評価をしてもらえれば、

 その後、クチコミで広がる

 可能性は、あると思います。


[運野]

 その最初のお客さんって、どんな人?

 入会申込書、見せてくれる。


[花子]

 はい、こちらになります。


[運野]

 これ、なんて読むの? スエユメ?


[花子]

 部長、フリガナ振ってありますよ。


[運野]

 マダム タマコ、本名か?


[花子]

 社長のお知り合いだそうです。


[運野]

 もしかして、社長のこれ?

 (運野、小指を立てる。)


[花子]

 さあ。

 

[運野]

 ということは、サクラか。

 事実上、会員は、

 まだ0ということか。


[花子]

 いえ、本当に便秘でお悩みの

 ようでしたよ。


[運野]

 便秘? なにそれ。


[花子]

 えー、社長から何も

 聞いていないんですか?

 

[運野]

 うん。


[花子]

 運動、呼吸法、食事など、

 生活全般を通して、快便生活を目指す。

 そのお手伝いをするのが、

 私たちの仕事です。


[運野]

 なるほど。


[花子]

 では、このマニュアルを

 しっかり読んでいただき、

 オープン当日は、

 インストラクターとして

 ちゃんと成果を出すように

 頑張ってください。


[運野]

 えー! 俺がやるのぉー?


[花子]

 日々、快便生活を送られている

 部長ならではと、

 社長の、たってのご指名です。


[運野]

 マジかよぉ〜。


[花子]

 心配ご無用。

 私が、しっかり、サポートしますから。


[運野]

 頼りにしてるよ。



三日後、オープン初日


<ヘルスケアセンター 事務室>


[運野]

 お客様は、もう来ているの?


[花子]

 はい、スタジオで、お待ちです。


運野、扉の隙間から

そっと、スタジオを覗く。


[運野]

 失礼だが、

 まるで、ゆるキャラの着ぐるみでも

 着ている様な人だなあ。

 俺は、とても、マダムだなんて

 呼べないよぉ。


[花子]

 部長ー!

 お客様の苗字なんですから。

 

[運野]

 わかってるよ、大丈夫だ。


運野と花子、スタジオへ向かう。



<ヘルスケアセンター スタジオ>


[運野]

 初めまして、マダム様。

 運野良夫と申します。


[花子]

 先日は、ありがとうございました。

 今日は、アシスタントを務めさせて

 いただきます、土田花子です。


[運野]

 本日は、よろしくお願いします。


[末夢マダム 玉子タマコ]

 下の名前で呼んで。

 玉子っていうの。


[運野]

 わかりました。玉子さん。

 ところで、玉子さんは、うちの社長の 

 お知り合いと伺っておりますが。


[玉子]

 そうなの。

 私と、土屋敷さん、それに、

 ブラック銀行頭取の鬼黒さんの三人は、

 同じ小学校の同級生で、

 幼なじみだったのよ。

 だから、おたくの会社のメインバンクは

 ブラック銀行なのよ。


[花子]

 えー! そうだったんですか。

 でも、今、ブラック銀行は、

 うちの会社を乗っ取ろうと

 しているんですよ。


[玉子]

 あら、そうなの。

 それは、穏やかではないわねぇ。


[花子]

 幼なじみが、どうして、

 そんなこと、するんですかね。


[玉子]

 さあ、

 ツヨシ君は、ガキ大将だったから、

 今でも、ケンちゃんを

 服従させたいんじゃないかしら。


[花子]

 そういうもんですかねぇ。


[運野]

 それでは、まず、

 呼吸法から、はじめましょう。

 しっかり深く息を吸って〜。

 腸にしっかり、新鮮な空気が届く

 イメージで、そうです。

 次に体をひねって、大腸を少しずつ

 刺激していきましょう。


[玉子]

 こんな、カンジ〜?


[運野]

 あー、いいですねぇ。

 大腸が少しずつ、動いてきますよ。

 さらに、上から手で、

 大腸を揉んで、刺激していきましょう。


[玉子]

 あたし、握力ないのぉ。

 運野さん、揉んでぇ〜。


[運野]

 はぁ、はい。かしこまりました。

 では、ちょっと失礼。


[玉子]

 いゃ〜ん。


[運野]

 (うゎ、メチャ硬い。

  まるで、鉄筋コンクリートの様だ。

  手で砕くか、いや、ダメだ。

  大腸を傷つけてしまう。

  どうしよう。

  水で少しは柔らかくなるか?)


[運野]

 土田君、水を持ってきてくれ。


[花子]

 はい。


[運野]

 玉子さん、少し水を飲んで下さい。


玉子、水を飲む。


[運野]

 (マズイ、水が便に全然

  染み込んでいかない。

  こうしているうちに、今も便が

  増え続けている。

  このままだと、あと少しで

  腸が破裂してしまう。)


[玉子]

 なんとか、してよぉ〜。

 あなた、糞部長なんでしょ〜。


[花子]

 部長、いつの間に、本部長に

 なられたんですか。


[運野]

 ちがうよぉー。


[花子]

 ?


[運野]

 玉子さん、先程の呼吸法を

 しばらく練習していて下さい。


[玉子]

 わかりました。


運野、花子を連れて、事務室に行く。



<事務室>

 

[運野]

 マズイ、このままだと

 腸が破裂してしまう。

 今、すぐ、病院へ連れて行こう。


[花子]

 それはダメですよ。

 第一号の客が

 いきなり病院送りとなったら、

 我がヘルスケアセンターの評判は、

 ガタ落ちですよ。


[運野]

 人の命が、かかっているんだぞ。


[花子]

 とりあえず、玉子さんの脇腹に

 日光を当てながら、

 揉んでみてはどうでしょうか。


[運野]

 それ、なんか科学的根拠あるの?


[花子]

 とりあえず、ダメもとで、

 私に、やらせて下さい。

 ダメだったら、それから病院でも

 遅くはないでしょう。


[運野]

 わかった。やってみよう。



<ヘルスケアセンター スタジオ>


[運野]

 どうですか、玉子さん。


[玉子]

 う〜ん、あんまり変わらない感じ。


[運野]

 では、気分転換に

 外へ出てみましょう。

 今日は、天気も良いですし。



<隣の公園のベンチ>


[運野]

 玉子さん、服をめくって

 左脇腹に、日光を当てて下さい。


[玉子]

 ヤッダァ〜、恥ずかしい。


[運野]

 左脇腹だけですから。


[玉子]

 こんな感じ。


[運野]

 そうです。


[花子]

 では、今度は、私が揉ませて

 いただきます。

 失礼します。


[玉子]

 あら、よろしく。


[花子]

 (手で揉みながら)

 ヤワくなあれ〜、ヤワくなあれ〜。


[玉子]

 なんか、少し楽になってきたみたい。


[花子]

 だんだんと

 柔らかくなってきてますよ。


[運野]

 本当か! 奇跡だ。ゴットハンド!


[玉子]

 なんか、トイレに行きたくなったわ。


玉子、公園内のトイレに行き、

しばらくして、戻ってくる。


[玉子]

 あー、サッパリした。

 運野さん、土田さん

 今日は、本当にありがとう。


[運野]

 あー、よかった。



その後、玉子のクチコミと

土山の営業努力の甲斐あって、

ヘルスケアセンターは

大盛況となった。

また、同時に、運野が編集長となった

月刊誌『快便生活』の売上も

順調に伸びていった。



<ブラウン商事 社長室>


[社長]

 運野君、よくやってくれた。

 さすが、糞部長。


[運野]

 社長、お願いですから、

 もうそれ、やめて下さい。

 全ては、土田君と土山君の

 活躍のお陰です。


[社長]

 このまま順調に進めば、

 四ヶ月後の返済期限までに

 全額返済も夢ではない。

 引き続き、頑張ってくれたまえ。


[運野]

 はい。



しかし、このヘルスケアセンターの

盛況ぶりは、

眠れる獅子、ブラック銀行を

奮い立たせることに、なるのであった。


   <第三話 ヘルスケア編  完 >


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