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部長  運野 良夫  作者: 犬 文男
2/7

第二話 バツゲーム編

君子危うきに近づく?

ブラック銀行融資部に配属となった運野。

黒田の部下という

運野にとって、圧倒的不利な状況の中、

運野と黒田の壮絶な戦いの火蓋が

今、まさに、切られようとしていた。



<ブラック銀行 融資部 事務室>


[黒田]

 まさか、お前が、俺の部下に

 なるとはなあ。

 せいぜい、可愛がってやるぜ。


[運野]

 お手柔らかにお願いします。


[黒田]

 まあ、どうせ半年後には

 お前も、ウチの傘下に入るんだから

 それまでに、みっちり

 こっちのヤリ方を、学んでおけ。

 それでは早速、ブラウン商事に

 取り立てに行ってもらおうか。


[運野]

 人の嫌がりそうな仕事を

 あえて選んで、させる。

 それって、パワハラですよね。


[黒田]

 また、訴えるとでも言うのか。

 そんなのは、ここでは通用しないぞ。


[運野]

 いえ、その仕事、やらせていただきます。

 ただし、一つ条件があります。


[黒田]

 条件? なんだよ。


[運野]

 私の遊びに付き合っていただきたい。


[黒田]

 どんな遊びだ?


運野、黒田の耳元で、コソコソと説明する。


[黒田]

 ワッハッハー。くだらねぇー。

 お前の考えそうなことだ。

 いいだろう。

 上司たるもの、部下の誘いにも

 付き合ってやらないとなあ。

 こう見えても、俺は高校時代

 演劇部にいたんだ。

 決して、勉強ばかりしていた

 わけではないんだ。

 この世界で出世するには、

 俺のようなエリートでありながらも、

 お前の様なバカなヤツの相手もできる

 器の大きい人間でないとダメなんだ。


[運野]

 そういうことなら、早速、

 お付き合いお願いします。


[黒田]

 おう。

 

運野、500円硬貨を投げて、

両手でキャッチ。


[運野]

 表か裏か。


[黒田]

 う〜ん。裏だ。


運野、手のひらをゆっくりと開けて


[運野]

 残念。表でした。


[黒田]

 くっそー。


[運野]

 では、お約束のバツゲームを

 お願いします。


[黒田]

 ああ、やってやるよ。


運野と黒田は、

同じフロアの男子トイレへと向かう。



<男子トイレ内>


[運野]

 さあ、お願いします。


[黒田]

 個室が一つ、うまっているようだ。

 後にしよう。


[運野]

 ダメですよ。

 すぐにって、約束したでしょう。

 それに、このフロアには、

 約200人の男性職員が

 働いているんです。

 ですから、トイレにだれもいなくなる

 ことなど、滅多にないと思いますよ。

 それとも、黒田さんは、ここでずっと

 人がいなくなる瞬間を

 待ち続けるおつもりですか。

 周りの人から、変に思われますよ。

 小便している人がいないだけ、

 マシじゃないですか。

 個室からは、顔は見えませんから。


[黒田]

 わぁかったよ。そんなことで熱弁するな。


[運野]

 では、お願いします。

 ちゃんと、大きな声で

 しっかりやってくださいよ。


[黒田]

 勿論だよ。


黒田、中腰で、股割りのポーズをとり、

大声で、


[黒田]

 ウンコド〜ン! クッセ〜ェ〜。


二人、トイレを出る。


[運野]

 いやー、お見事。

 さすが、元演劇部。


[黒田]

 そうだろう。

 この程度のことは

 俺にとっては、朝飯前なんだよ。

 

[運野]

 これが本当の黒田バスーカ。


[黒田]

 なんか言った?


[運野]

 いえ、なにも。

 ところで確か、頭取室も

 このフロアでしたよねぇ。


[黒田]

 そうだけど。それがどうした。


[運野]

 さっきの個室の主が、頭取でなければ

 いいなあと思いまして。


[黒田]

 んっ?

 キサマ、さては謀ったなあ。


[運野]

 謀るだなんて、人聞きの悪い。

 大丈夫ですよ。

 確率は200分の1ですから。

 では、お約束通り、

 ブラウン商事に取り立てに

 行ってまいります。


運野、立ち去る。

黒田、自席に戻る。


[黒田]

 200分の1か。0ではないなぁ。

 あ〜、気になって仕事が手に付かない。

 おのれ〜、運野のヤツ。



<黒田家の寝室 AM1:00>


[黒田]

 くっそー、あの事が気になって

 眠れない。

 あれっ、鬼黒オニグロ頭取、

 こんな時間にどうしたんですか?


[鬼黒]

 私のウンコは臭いか? 黒田。


[黒田]

 いえいえ、滅相もございません。

 どうか命だけは、お助けを。


黒田、目が覚める。


[黒田]

 なんだ、夢か。悪夢だ。

 


<翌日、ブラック銀行 融資部 事務室>


入行2年目の黒川クロカワ ハジメが黒田に

 

[黒川]

 黒田部長、頭取がお呼びです。

 至急、頭取室へお願いします。


[黒田]

 わかった。今、すぐ行く。

 (まさか、あれか?

  いや、そんなハズはない)



<頭取室>

 

[黒田]

 失礼します。


[鬼黒]

 入りたまえ。


黒田、入室する。


[黒田]

 (あれ、黒岩副頭取もいる。

  ブラック銀行の秘密警察長官と

  行内で言われている男。

  あの男のことだ。

  何か確たる証拠を掴んでいるに

  ちがいない。

  あの男に追及されて、

  逃れられた者は、

  一人たりともいない。

  ここは、尋問される前に、

  謝った方が、少しは

  罪が軽くなるかもしれない。

  それしかない。)


黒田、突然、頭取の前で土下座する。


[鬼黒]

 んっ?


[黒田]

 申し訳ございませんでした。

 頭取のウンコは決して

 臭くなんてありません。

 あれは、運野に脅されて

 無理やり言わされたんです。

 どうか、信じてください。


[鬼黒]

 どうした。

 たぶん、日々の激務で、

 疲れてしまっているんだなぁ。

 今日は、もういいから、

 しばらく、家で、ゆっくり

 していなさい。


鬼黒、電話で黒川を呼ぶ。


黒川、頭取室に入る。


[鬼黒]

 黒川君、

 黒田部長は体調がすぐれない様だ。

 悪いが、車で黒田部長を

 部長の自宅まで送ってもらいたい。


[黒川]

 かしこまりました。


[黒田]

 頭取、どうか寛大な処分を〜。


黒川、黒田を連れて、退室する。


[鬼黒]

 大丈夫か? アイツは。


[黒岩]

 精神鑑定でも

 受けさせた方が、よさそうですね。


[鬼黒]

 とりあえず、当分の間、

 彼を在宅勤務とし、

 一旦、全ての担当から外させよう。

 せっかく、黒岩さんの後任に

 なってもらおうと思っていたのに。

 というわけで、黒岩さん、

 申し訳ないが、もうしばらく

 後任が見つかるまで

 ウチにいてもらえないだろうか。


[黒岩]

 わかりました。


[鬼黒]

 そういえば、さっき、黒田は、

 ウンノがどうこう、言ってたが。

 

[黒岩]

 はい、あれは、

 ブラウン商事の土屋敷ツチヤシキ社長から、

 返済期限6ヶ月延長のお礼に、

 自社で最も優秀な社員を

 無償で貸し出したいとの申し出があり、

 それで、当行に受け入れた

 運野という者のことです。

 私が見る限り、

 ちっとも優秀なんかじゃない。


[鬼黒]

 土屋敷のことだ。

 何か企んでいるにちがいない。


[黒岩]

 企む?


[鬼黒]

 例えば、スパイとか。


[黒岩]

 まさか。

 そんな高度なことができる様な

 ヤツじゃ、ありませんよ。


[鬼黒]

 いずれにせよ、

 ウチに置いておく必要は、なさそうだ。

 今すぐ、ブラウン商事に

 返してやってください。


[黒岩]

 了解しました。



数日後

<ブラウン商事 財務部 事務室>


[土田花子]

 お帰りなさい、部長。

 敵の陣中で、敵を倒すなんて、

 スゴすぎます。


[運野]

 これが、ある意味、本当の

 「虎穴に入らずんば虎児を得ず」

 だなぁ。


[花子]

 キャー、ステキ。


[運野]

 照れるなぁ。


[花子]

 ところで、部長、もしかして、また、

 ウンコネタ使ったんですか?


[運野]

 「目には目をウンコにはウンコを」だ。


[花子]

 はあ?


[運野]

 社長に挨拶してくるよ。



<社長室>


[運野]

 失礼します。


[土屋敷社長]

 お帰り、フン部長!


[運野]

 えー!

 私が、営業本部長にですか。

 ありがとうございます。


[社長]

 ちが〜う。よく聞きたまえ。

 君はいつもウンコネタばかりだから、

 さしずめ、フン部長だと

 言っているんだ。


[運野]

 な〜んだ。


[社長]

 期待しているぞ。

 糞部長  運野 良夫


[運野]

 は〜ぁ。


     <第二話 バツゲーム編 完>


 

 


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