98,帰郷
キラーに連れていかれた先には、1人の男がいた。
「彼はレイという者だ。
移動系の”スキル”を持っている。
大丈夫、信頼出来る人間だ。」
キラーが紹介してくれる。
ここまで付いてきたのだから、今更キラーを疑うわけがないアンはすんなりレイを受け入れる。
「すでに紹介されたが、レイという者だ。よろしく。
これから君達をクラントに送るよ。」
「よろしく。」
レイから差し出された手にアンは握り返す。
「それじゃあ、この円の中に入ってくれ。」
そう言ってレイは地面を指差す。
そこには特殊な模様の円が描かれていた。
「俺の”スキル”はある地点とある地点を繋げることが出来る。これと同じ模様がクラントにもあるんだ。」
アンは納得して円の中に入る。
続いて、キラーとレイも入る。
「さて、今から移動するが、もう何もやり残したことはないか?」
「やり残したっていうか、少し心配事なんだけど…」
「ん? なんだ?」
「私達、クラントからアルタミラを調査するために来たんですけど、その調査は2組に分かれてすることになったんです。私達は西から、もう1組は東から潜入しました。
それで、その…もう1組の方が心配というか、そこに友達が2人もいて…」
「悪いが、そのもう1組の方については何の情報も持っていないな。もしかしたら無事かもしれないということもある、がそんな希望的観測を信じていられない。ひとまず今は先を急ごう。」
「…はい、分かってます。」
アンは少し残念そうな表情になったが、すぐに覚悟を決め直した。
「じゃあ、移動するぞ。」
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「ここは…クラントのどの辺ですか?」
「クラント軍の本部の近くだ。人目につかない場所を選んだから知らなくても無理はない。」
アン達は一瞬でクラントまで移動した。
「ここから10分ほど歩けば軍本部に着く。
その時は顔つなぎを頼むぞ。」
「はい。」
そしてアン達はクラント軍本部まで辿り着いた。
しかし、アンはあまり軍本部には入ったことがなかった。
どうしようか少し考えていると、門の向こうから懐かしい声がしてきた。
「おーーーい!! アンーー!!」
そう言いながら走ってきたのは、シトラ、ルビア、イリアの3人だった。




