94,オレのせい
腹部を見てみると後ろから剣が突き刺されていた。
「気づいていないとでも思ったか?
大丈夫、死にはしないようにしてるから,
大事な実験体に死なれては困る。」
ここでラースの雰囲気が何か変わった気がした。
「だが、”サイコキネシス”の能力者は実験しにくいから最悪殺しても構わないと言われている。どうやら実験するたびに気絶させないといけないらしい。そうじゃなきゃ研究者が殺されるから。」
ラースの雰囲気がどう変わったかが分かった。
明らかに…威圧感が増した…!
「さて、じゃあ今から拘束するために気絶してもらう。
余計なことはするなよ? 分かるな?」
ラースが剣を片手にオレの方へ近づいてくる。
そしてオレは何もできないまま、オレとラースの距離が縮まっていく。
そしてラースは剣の峰の部分をオレに向ける。
(オレはどうしたらいいのか…抵抗したら殺される…!!
殺される…? 逆に、生きて何になる?
ここまま生きてしまったら、オレは一生実験体として扱われ、なんの自由も与えられないだろう。
なら…最後に悪あがきしてこのまま終えるか…)
オレはアンとウェアの方を見て微笑んだ。
ラースの剣がオレの首めがけて振り下ろされる。
オレはそれを直前で止めた。
それと同時に扉を破壊し、アンに刺さっている剣を抜いた。
「アン!! ウェア!! 逃げろ!!
お前らなら逃げられる!!!」
「こいつ……」
ラースの驚いた声が聞こえる、と同時にオレの後ろで”剣”が生成されるのを感じた。おそらく約1〜2秒後、オレは死ぬだろう。だが最後の悪あがきはラースにとっても痛手のはずだ。おそらくラースの部下がこちらに向かってきているだろうが、ウェアの”瞬間移動”を使えば逃げられるはずだ。
アンとウェアが本国に情報を持ち帰ればいくらでも対策は立つ。最強のグラム大将もいるんだ。将来的にはクラントが必ず勝つ。
オレはここで死ぬが、クラントのために死ねるのだ。
何の悔いもない…と言えば嘘になるが、少なくとも無念ではない。
オレはゆっくり目を閉じた。
だが、約4秒経ってもオレは生きていた。
何事かと思い目を開ける。
ラースの”剣”が放たれたと思われる後ろを向いてみる。
するとそこには、ウェアがオレの代わりに剣で串刺しになっていた。
「………え…?」
直後ウェアが膝をつき、オレの方に倒れてきた。
オレはそれを受け止める。
「な…なんで…」
そう聞くが、ウェアからの返事は無かった。
オレは怖くて横を見れないでいると、突然ラースに蹴り飛ばされた。
蹴り飛ばされたオレは壁に打ち付けられ、ウェアは元々いた付近に倒れる。
「クソが!! お前のせいで大事な実験体が死んだじゃねーかよ!!」
っとラースがオレに剣を向けて言う。
大事な実験体…? それはウェアのことか…?
ウェアがオレのせいで死んだのか…?
オレの目には自然と涙が溢れていた。
すると、ラースの部下が入ってきた。
「隊長、指示通り来ました。
これは…?」
入ってきた部下が、転がってるウェアを見てラースに問いかける。
「言っとくが俺のせいじゃないぞ。あいつだ!
あいつが全部悪いんだ!!
上に何も余計なことを言うなよ?」
ラースが部下の方を向きながらオレの方を指差す。
「オレのせい…」
オレにはその言葉が何か引っかかり、直後見たこともない記憶が溢れてきた。




