90,裏切り
塀の中に入ったので、次は建物の中に入ろうとする。
すると、また見張りがいたので、さっきと同じ方法で気絶させて建物の中に入った。
とりあえずまずは、事前の打ち合わせ通り支部長室を目指す。と言ってもどこにあるか分からないので、それっぽい部屋を見つけたら入るだけだ。
途中、警備が何人かいたが、オレの”サイコキネシス”やウェアの”瞬間移動”でなんとか切り抜けた。
そしてようやく支部長室っぽい部屋を見つけた。
周りは静かなので、小さな声でもバレかねない。
そのためオレ達は、ハンドサインで扉に入ることを伝え合う。
扉を開けようとすると、当然だが鍵が掛かっていた。
だが、オレの”サイコキネシス”なら、鍵がなくとも、鍵を開けることが出来る。
中に入ると、目の前に大きい机が一つ。その上に書類が大量に置いてある。
左を見てみると、ずらっと何かの本でいっぱいで、右には小さな椅子と机観葉植物が置いてある。
部屋には窓一つないが、その代わりに誰かの肖像画が何人か飾られている。おそらく歴代支部長とかそんな感じか?
やはり支部長室で間違いなさそうだ。
とりあえずオレ達は書類が大量に置かれてある大きい机から調べてみることにした。
暗くて懐中電灯がないと何も字が読めない上に、難しいことばっかり書かれていて読むのに時間がかかる。
これは相当苦労しそうだ。
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アデン少将とラース先生は、遠くからリエル達が潜入した支部を見つめていた。
「あいつらが侵入して、もう約1時間かかってますが、大丈夫でしょうか?」
「ヤバくなったら逃げるくらい、あいつらなら出来るだろ。
それがないってことはまだ調査中だってことだ。」
少し心配なアデン少将だが、ラース先生の言葉に納得したのか、何も言わずに支部をずっと見続ける。
「むしろ、こんな早くに出てきたら俺らの作戦がパーだ。折角窓のない部屋まで誘い込んで、大量の書類を用意したのにな。」
「? どういうことです?」
ラース先生の言葉の意味が分からず、ラース先生に振り返りながら尋ねる。
その瞬間、アデン少将の腹を剣が貫いた。
アデン少将が血を吹き出す。
「こういうことだよ。」
驚いてラース先生を見るアデン少将。そのラース先生を見ると、剣をもう一本作り出していた。
「ど…どういうことだ!?」
なんとか声を振り絞ってラース先生に尋ねるアデン少将。そんなアデン少将の顔に剣を近づけながらラース先生は答える。
「まだ分からないのかね? 私はアルタミラ人だ。」
目を見開いて驚愕するアデン少将。
「悪いけど、あとほんの1、2年後くらいには、クラントはこの世界から消え、アルタミラになっているだろうね。」
「は…はじめから…だまし———」
その時、アデン少将の首はラース先生に斬られた。
それから数分経つと、ラース先生の元に人が1人やってきた。
「中将殿、部隊の準備が整いました。」
それを聞くと、ラース先生はニヤリと笑う。
「よし、全員行動開始だ。
これより、かわいいかわいいモルモットの捕獲にかかる。」
そう言ってラース先生は支部へと歩き出した。




