69,終戦?
一方その頃、ラスト中将とレオランの超越者同士の戦いは、激しいものになっていた。
まず、レオランは右前足がなくなっていて、他にも指が数本なくなっている。そして多数の火傷のあとがある。
そして、ラスト中将は両腕がさらに抉れ、骨が見えているところもある。それと両足にも深い傷を負っており、自らの身体に”エネルギー”を送ることで何とか戦えている状況だ。
どちらが優勢か、それは分からないが、いくら超越者といえどもお互いに限界が近づいているのは確かだ。
ラスト中将が、抉られた両腕をかろうじて上げ、無数の光の球を作る。それをレオランの周りに漂わせるように配置してさらに大きい球を作る。
「…!! まさか!!」
「逃げ場はないぞ!」
そう言って放たれたラスト中将の光の球は、レオラン目がけて一直線に到達する。
「朱雀!!」
レオランがそう言うと、グリフォンの姿だったレオランが、朱雀へと変身する。
そして、その大きな羽で、自らを包み防御する。
レオランの”スキル”、”鳥”は普通の鳥だけでなく、神話などに登場する鳥にも複数変身出来る。
したがって、今レオランが見せた朱雀は、南方を守護すると言われる神鳥で、守護という役割があるため、防御することに長けている。
「……それでも無傷とはいかないか…」
そう言いながら、レオランは痛そうに身を屈める。
「そんな便利な能力があるなら初めから使っとけば良かったのに。」
ラスト中将がそう言うと、レオランは首を横に振って答える。
「変身は体力を多く使う…多用は出来ない。
そこで提案だ。戦いはこのくらいで終わりにしないか?」
「なんだと?」
「お互い損傷が激しいし、体力もなくなってきた。
このままじゃどっちが負けてもおかしくない。いや、仮に僕が勝ったとしても、そのあとにそっちの兵隊から逃げられる程の体力が残っているとは思えない。だから僕にとってはもう戦う意味がないんだよね。」
「自分の国のために最後まで戦おうとは思わないのか?」
「ないね、それに自分の国のためを思うなら、僕を生かしていた方がいいと思うし。」
「逃げたいのなら逃げるがいい。俺は戦い続ける。」
そう言われると、レオランは悪い笑みを浮かべて、人型(背中に翼が生えてる)に戻る。
「分かった、じゃあねー。」
そう言ってレオランは自軍の方へと戻っていった。
これにて、ラスト中将とレオランの超越者同士の戦いは終わる。これによって、戦争も一時的に終わりの雰囲気が流れ、何故かヴァルランダ軍が退行していき、ひとまずクラントの勝ちということになった。
クラント軍では声援が上がり、それと同時に失った者の大きさに悲観する。
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一方、ヴァルランダ軍では、
「何故逃げてきた?」
「言ったでしょ? ピンチになったら逃げてくるって。
それに僕が殺さなかったとしてもどうせ殺すんでしょ?」
レオランが申し訳ないというよりは、何故わざわざそんなことを聞くのか不思議そうに答える。
「確かにラストはどの道殺すが、お前が殺すのが最善だったのだ。もう少しぐらい任務に忠実であってほしいものだ。」
「ごめんって、でもヤバいと思ったのは本当だよ。あのまま続けてたらどっちかが死んでたし、もし僕が勝ってたとしても、クラントの兵にやられてた。その見解は本当だよ?
見てよこの傷!」
そう言ってレオランは自分が負った傷を全て見せるように一回転する。
「…確かに酷い傷だな……よく平気でいられるな…」
「全然平気じゃないよ。笑っているのは、癖みたいなもんだから。実は今も泣き叫びたいぐらい痛い。だから早く治したいんだ。人払いは完了?」
「ああ」
そう言われるとレオランは呼吸を整える。
「フェニックス!」
レオランがそう言うとレオランの体はフェニックスに変身し、傷が癒やされていく。
そしてすぐに変身を解除した。そしてレオランはその場に座り込んでしまう。
「ふぅー、やはり体力がもたなかった…でもちょっと痛みはマシになったな。」
そう言ってレオランは復活した手と指を動かしている。
レオランの傷は中途半端に治った状態で終わってしまっている。
「やっぱりフェニックスは体力使うなー、とてもじゃないが戦闘中では使えないな。」
「全回復まであとどのくらいだ?」
「さあ、分かんない。体力回復したらまたフェニックスになって傷を癒すから…最低でも3日はかかるんじゃないかな? まあもうしばらく休んでもいいでしょ? 今回の戦場で、相手の超越者に出来るだけ傷を負わせるという最低限の任務は十分に果たしたと思うし、あとはロードさんに任せようよ?」
「…それもそうだな。
とりあえずはロード・デイバードの最重要任務は
ラスト・オールダーの抹殺だ。」




