65,協力
「カート!?」
「「イリア!?」」
エガーとルビアとシトラがほぼ同時に驚きの声を出す。
ちなみにエガーが驚いたのはカートが現れたことではなく、カートが体中から流血していたからだ。
「どうしたんだ!? そんなに傷だらけで!?」
「敵にやられました。油断もあったかもしれませんが、私の想像以上に強く、エガーさんを現実世界に返すついでにお力を頂こうかと思っていたのですが…」
「ああ構わないが、敵から逃げてきたのか?
敵前逃亡は本来重い罰が下るが、お前は”スキル”が優秀だから特別に許してやろう。ただし覚えておけよ! 特別だぞ!?」
「は、はい。」
エガーの怒りはある程度予想していたが、実際に目の当たりにしてみるとかなり怯んでしまう。
「それでその敵というのがあの娘なんだな?」
「は、はい。あの娘もルーグラン生のようです。」
「ほぉ。」
一方ルビア達は、この場にイリアが乱入してくるなど予想もしておらず。かなり混乱しているようだ。
「な、なんでここにイリアが!? ていうか少し怪我してるけど大丈夫なの?」
イリアは両腕と右足から軽く流血していた。
「このぐらいは平気よ。それよりシトラ、あなたの方が大丈夫なの? 頭から血が出てるけど…」
イリアとシトラどっちの方が重症かと聞かれれば、間違いなくシトラの方だ。
「このぐらいは別に痛みの内に入らないから!
ってだから、なんでここに現れたのよ!? まあなんとなく分かるけど…」
「あの”ワープ”使いと戦ってたの。で、あいつが逃げたから追いかけてきたってわけ。」
イリアは少し誇らしげに言う。
「で、あんたらはあの男に苦戦中ってわけね。やっぱりバケモノも真のバケモノには敵わないのかな?加勢しようか?」
「別にいらない。それに多分イリアの攻撃じゃあいつにかすり傷さえつけられないよ。」
「まあ私のスナイパーライフルを脳天に当ててもなんともなかった奴だからね。確かに意味ないかも。」
「あ、やっぱり最初のあれってイリアだったの?」
「そうだよ。」
「おい、おしゃべりはそのぐらいにしとけ。そろそろ動き出すぞ。」
ルビアが2人に言ったことで、3人とも真剣モードに入る。
見ると、エガーがこっちに向かって歩き出していた。
それに対してルビアも歩き出す。
「えっ? 1対1? なんで?」
イリアが少し嫌悪感を出してシトラに問いかける。
その間にルビアとエガーの拳がぶつかり合う。
「…私とあいつの相性最悪だからね。攻撃が相殺されてまともな攻撃が入らないのよ。」
「本当にそれだけ?」
「…そうだけど? じゃあ私達はあの”ワープ”使いを相手しようか。」
「あいつは私1人で十分よ。それよりこのままだとルビアが心配よ。シトラは大丈夫だと思ってるの?」
「……」
「本当に理由はそれだけ?」
「……あいつとは生理的に合わないって言うか…だから……組んでも上手くいかないだろうし…組みたくないって言うか…」
その時、イリアが少し強めにシトラをビンタした。
「な、何するの?」
次に、シトラの両肩を持って顔を近づける。
「今どういう状況か分かってるの?」
「…えっ?」
「今外の状況は大変なことになってるの!
敵の戦力が想定以上に強かったため、リエルやアン達防衛組も戦いに参加してる。一刻も早く戦力が欲しい状況なの!」
「…でもリエル達なら大丈夫でしょ…」
イリアはそのままシトラに頭突きをする。
「そういうことを言ってるんじゃないの!
それにすぐ近くでもヤバいよ!
ここに来る前に見たけど、エルヤー大佐達かなり押されてる感じがした。」
「……大佐達なら大丈夫だって…3人いるんだし相手はたしか2人だったでしょ。あそこに”ワープ”使いがいるんだから。」
イリアは少しため息をつく。
「だからそういうことを言ってるんじゃないの。
それに敵は想定以上の戦力を有してるって言ったでしょ?
それとこれだけは言っとく。
人は結構簡単に死ぬよ。」
その時、シトラの横にルビアが吹っ飛ばされてきた。
ルビアの体を見ると、手には痣が出来ていたり流血していたり、顔からもシトラほどじゃないが流血している。
それなのにエガーは無傷といった様子だった。
「…ルビア、どう勝算はある?」
答えは分かりきってるが、何となく聞いてみるシトラ。
「……あるぜ。 あいつ俺の超火力炎を躱したんだ。
つまりそれをくらえばあいつの防御力でもダメージが入るってことだろ?」
「その攻撃って何発も連続して打てるものなの?
あとそれが命中したとして、エガーにとっては火傷程度かもしれないじゃない?
それと躱されない自信はあるの?」
「それは……」
シトラはルビアに、さっきまでの自分を重ねた。
そして大きく一息吐く。
「協力しようルビア。あいつを倒す策がある。」




