64,劣勢
一方リエル達防衛組は、作戦とは大分異なったものとなっていた。
本来なら、防衛組は前線には出ず前線を突破された敵だけを相手にするはずであったが、予想以上に敵の兵力が強く、多少前線に出るしかなくなっていた。兵力が強いというのは、強い”スキル”使いが多いということだ。
今ここにはルーグラン校生Sクラスが6人いるので、2人ずつの3組で行動することとなった。
オレとウェア、イドラとソラ、アンとティアラの3組だ。
それぞれが言われたところへ向かって戦う。
一方、ルビアとシトラは相手のエガーに2人相手でも苦戦していた。
その理由は単にエガーが強いというのもあるのだが、ルビアとシトラの相性も悪いというのもある。性格の相性はもちろんのこと、”スキル”の相性も最悪だ。
ルビアは炎でシトラは氷、例えば2人が同時に攻撃したとしたら、2人の攻撃が互いに相殺して威力が弱まるというわけだ。
「ちょっとルビア!! あんたの炎邪魔なんだけど?」
「はぁ? それは俺のセリフなんだが?」
戦闘中だと言うのに睨み合う2人。
その2人に対して、エガーは一気に距離を詰めてボディーブロウを入れる。2人とも急なことで驚くが、ルビアはなんとかガード出来た。しかしシトラは頭部をガードしてしまったため、もろにくらってしまう。
エガーはそのシトラに追い討ちをかけるように蹴りを繰り出した。そしてシトラが後方に吹っ飛んでしまう。
ルビアもそれに合わせてエガーから距離を取る。
エガーの蹴りはシトラの頭部に当たったらしく、頭から流血して、白い髪が少し赤に染まってしまっていた。
「戦いの最中によそ見とは、随分と余裕だね?」
「ええ、余裕よ! あいつさえいなければね!!」
っとシトラはルビアを指差して言う。
それに対して言い返すルビア。
それを見てエガーは大きく笑い出した。
「こちらの軍の2人を瞬殺した時は、私も気を引き締めないとなぁとか思ってたのに、これならカートに移動してもらう意味が無かったねぇ。」
それに対してキレたシトラが、氷の礫を作り出し、エガーに放つが、エガーはそれをノーガードで受け、それもノーダメージだ。
「さっきからそうだけど、あんたの”スキル”って何なの!?」
「わざわざ教える義理はないね。どんな相手でも私は油断しないよ。」
そう言ってシトラに向けてゆっくりと歩き出すエガー。
シトラは、足元を凍らせて動きを封じる狙いに変える。すると足の動きを止めることには成功したのだが、足元の氷を手で破壊され、すぐに自由になってしまう。
そしてまたシトラに向かって歩いていく。
シトラは考える。どうすればエガーを倒せるのか。
(あいつの”スキル”は”肉体強化”とか?…かな?
仮にそうだとしてどうやって倒そう。私の攻撃ほとんど通じなさそうだし…
一応私の”氷結”の絶対的な必殺技として、敵の内部を凍らせるというのがあるけど…戦闘中に成功させるの結構難易度高いんだよね…
……やっぱりルビアの超火力に頼る……?)
そう考えた時、少し悔しくなり頭を横に振る。
そうしている内にも、エガーは段々と迫ってきていた。
シトラは分厚い氷の壁を作るがすぐに砕かれ突破される。
最後の抵抗として冷気を強く放つが、それも難なく突破され、またボディーブロウからの蹴りをくらってしまう。
しかし、この時シトラは少し違和感を感じた。
(エガーの体が異様に冷たい!?)
さっき氷の攻撃を何回も放っていたし、最後に冷気も放ったから当然かもしれないが、なんとなくシトラの感覚的にそう感じたのだ。
そして気付いたら、またエガーがシトラに向かって歩き出していた。その間に今度はルビアが立った。
「選手交代だ。やっぱりお前じゃ無理だったな。」
「はぁ? 私はまだまだ———」
「そうは見えなかったけどな。まあ見とけ。」
そう言って体に炎を纏わせるルビア。
「今度は君が相手になってくれるのかな?」
「ああ、さっきまで雑魚が相手でつまらなかったろ? オレが楽しませてやるよ。」
言い返したい気持ちでいっぱいのシトラだったが、自分じゃエガーに勝てないことをほぼ自覚していたし、ルビアの戦闘を見てみたいとも思っていたから何も言い返さなかった。
「それは楽しみだ。だがさっき2人を相手にしていた時は、君もそこの子も大して変わらないと思うのだがね?」
そう言われて分かりやすくキレるルビア。こっそりシトラもキレている。
「そぉかい。だったら見せてやるよ。」
ルビアを纏う炎が蒼くなった。
その時、空間が歪み、2人の間にゲートが現れる。
そこから現れたのは、”ワープ”の”スキル”を持つカート、それとカートと戦っていたイリアだ。
「カート!?」
「「イリア!?」」




