60,超越者vs超越者
「んじゃあ時間もないし、早速始めようか。」
そう言ってレオランは無数の鳥を召喚する。
「行け、目の前の敵を攻撃しろ!」
召喚された鳥は、みんな鋭い爪を尖らせている。
それらが10匹以上はいるが、その全ての鳥が一斉にラスト中将へ襲いかかる。
ラスト中将は、その鳥と同数の数の光の弾を手の周りに作り出し、それらが全て衝突し合い、大爆発した。
その爆発の煙が晴れると、そこには無数の鳥の死骸が転がっていた。
「へえ、全部死ぬんだ。」
「さっきの時は3匹くらい生き残ってたからな。少し強い出力にしないといけないと思っただけだ。ただ少し強すぎたようだな。」
「流石に甘くないね。」
レオランが一息つくと、次の瞬間、大きく目を見開いた。
「グリフォン!!」
レオランがそう叫ぶと、レオランの体は上半身が鷹、下半身がライオンのような見た目をした怪物の姿になっていた。
「完全に変身するのは久しぶりだなぁ。」
「なるほど、確かに鳥と言われれば鳥か…」
「悪いけど、さっきまでの僕と思わないことだね。さっきまでの僕より数段違うよ。」
「悪いがさっきまでの君をあまり知らないのでね。それよりあまり喋らないでくれるかな? その姿でその口調はあまり似合っていない。」
「…挑発のつもりか?」
「ん? 事実を言ったまでだが?」
「まあいい、そんなこと考える余裕も無くしてやる。」
「それは楽しみにしているよ。」
ラスト中将は広大な光の球を、自分の両手に一つずつ作り出す。そして、その内の一つをレオランめがけて放つ。
レオランは上空へ避難するが、ラスト中将が指をくいっと上に向けると光の球は上空のレオランめがけて飛んでいく。
レオランはそのままラスト中将めがけて凄いスピードで飛んでくるが、ラスト中将も今は全身に”エネルギー”を譲渡しているので、その突撃も少し速い程度にしか思わない。
そしてレオランの後ろから球を追尾させておいて、もう片方の手にある球をレオランに向ける。
用は挟み撃ちだ。
するとレオランは、3本指しかない右前足でラスト中将側の光の球に触れる。
その瞬間、その光の球はその大きさにふさわしいくらいの大爆発を引き起こした。
ちなみにラスト中将は、自分の攻撃では死なないように、しっかりと専用のバリアを貼っている。
レオランは死なないまでもかなりの重症を負ったと思っていると、”エネルギー”譲渡で研ぎ澄まされた神経から危険信号が鳴り響いた。咄嗟にガードするが、そのガードした部分が非常に痛い傷を負うことになった。誰からの攻撃からは言うまでもなくレオランだった。
「確かに躱しはしたが、受けたらヤバいとかは一言も言ってないよ?」
「……だが無傷では無さそうだな。」
レオランの右前足は、誰から見ても分かるくらいの火傷になっていた。
「僕よりそっちが心配だけど? その腕はもう使えるの?」
ラスト中将の両腕は、何かに抉られたような傷が出来ていて、かなりグロくなっている。
「腕が切れても俺は戦うさ。」
そう言ってラスト中将はその傷ついた両腕をまた広げ、さっきよりも大きい光の球を2つ作り出す。
「勝負はこれからだ!」
レオランも少し笑みを浮かべそれに応えた。




