56,嵐の前の静けさ
戦争では、いくつかの班に分かれるらしい。
ルビアとシトラとイリアの前線組と
それ以外の防衛メイン組だ。
今はオレ達9人が全員同じところにいる。
それぞれの班長が話し合っている。
すると班長以外の軍の偉い人が、オレ達を気にしてか話しかけてくれる。
「お前ら、あんまり責任を感じんなよ。軍人とは言えお前たちはまだ子供なんだからな。」
「はっエルヤー大佐。しかし、国を背負って戦うので、責任を感じないというのは…」
エルヤー大佐という気の良いおじさん風な人が話しかけてくれた。この人はルビア達の班の前線組だ。
オレは一応、軍人としての返答をしておく。
「バーカ。そういうのはラストさんだけでいいんだよ。オレ達は何も考えずにただ敵を殺していくだけさ。何か考えてたらもたないからな。」
今度はピース大佐という人が話に入ってきた。こっちはちょっと若い人だ。ラストさんというのは、さっき演説していた中将の人のことだ。
「ラスト中将です。しっかりとそう呼びなさい。今は私たちしかいないからいいけど…」
そうピース大佐に注意したのはカイラ大佐だ。こちらはピース大佐と同じぐらいの若さの女性の人だ。
「別にいいじゃねーか。この前本人に直接言っても何にも言われなかったぜ?」
「そういう問題じゃないでしょ!」
オレは、ピース大佐の言葉の1つがとても気になった。
「えっ? ピース大佐はラスト中将と話したことがあるんですか?」
「ああ、あるぜ! まあ向こうは俺のこと覚えてるか怪しいけどな。軍の仕事で何回かこういう班みたいなのを組むことがあるんだけど、その時に偶然ラストさんと同じになったんだよ。」
「ラスト中将!!」
「はいはい分かった分かった。
んでその時に少し話したってだけ。」
「どんな方だったんですか?」
思い出そうとしてくれたのだろう、ピース大佐が顎に手をやる。
「そうだなぁ。まあ第一印象としては、少し厳格そうな人だと思ったんだけど、案外そんなことなかったな。よく超越者って頭のネジが外れてるって言われてるじゃん? でも俺と話した時にはそんなの全く感じなかったな。まああの人に近しい人に聞いた話じゃあ、酔うとヤバいらしいけど…」
超越者の話には皆興味をそそられ、話に食いついている。
ちなみに、超越者が頭のネジが外れてると言われているのは、超越者に覚醒する過程にある。超越者は自身の”スキル”を限界以上まで極めた人のことを言うが、その”スキル”を極めるには、スキレイトと言われるものが脳を侵食することによって極められる。そのスキレイトも侵食しにくいところがあって、そこを侵食したのが超越者だ。だから、侵食されたので頭のネジが外れてると言われている(と授業で言ってた。詳しくは授業を見てくれ)。だが、ピース大佐の話を聞いた限りでは、そんなことはなさそうだ。
「そうなんですか。貴重なお話をありがとうございます。」
大佐達のお陰で少し空気が和んだ気がした。




