55,エネルギー
ヴァルランダが戦場に選んだ地は、ヴァルランダとクラントの国境付近にあるローズン平野だ。
ここは、よく戦場として使われる平野だ。
今オレ達は列車でそこに向かっている。
ヴァルランダがいつ攻めてくるのか分からないが、そう遠くはなさそうだ。マイク先生が”千里眼”で様子を見ているのだが、すでに攻め込む準備を始めていたらしい。
列車には武器や食糧を詰めている。それも出来るだけ多く運べるように、ソラの”バリア”とオレの”サイコキネシス”でさらに多くの物資を運んでいる。
「調子はどう?」
“スキル”的に物資を運ぶのに適していないからといって何もしていないアンが話しかけてくる。オレもソラもそんなアンの言葉に少しイラッとするが、正直言って、普段の訓練に比べればそこまでしんどくない。
「まあそこまでしんどくはないが、何もしないよりは断然しんどいよ!」
っとアン含む、何もしていない同クラスの連中を睨みながら言う。するとソラもオレと同じく睨んでくれた。ソラもオレと同じ思いだったようだ。
「まあまあ、手伝いたいのは山々なんだけどー私達の”スキル”じゃあ手伝えないからねー。」
っとシトラが満面の笑みで言う。
「例えば物資を列車に氷で接合させるとか出来ねーの?」
「…」
「出来るのかよ!」
その後シトラも手伝った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
オレ達はやっとローズン平野の近くの街、ローズンに着いた。もうここに住んでいる住民はすでに避難していて、この街にある大きな体育館みたいなところに待機することになっている。
オレ達の任務は基本的にここの防衛らしい。
しかし、人を殺す訓練をしているルビアとシトラとイリアは前線の方へ行くらしい。まあそれでも最前線ではないらしいが。今回のオレ達は、あくまで戦争の体験がメインらしい。
しばらくすると、何かの集合に呼ばれた。
まあ戦争前にリーダーがする激励みたいなやつだ。
軍の偉い人が何人か前に立つ。
「まず初めに、私は軍中将のラストである。
よく”エネルギー”の超越者として知られている者だ。」
その時、少しザワつく。超越者はクラントに3人しかいない。だが、超越者は国家の最大戦力であるがために情報はほぼ伏せられる。強いて分かるのが名前と”スキル”ぐらいで、今目の前で演説しているラスト・オールダーは”スキル”が”エネルギー”というのと名前しか知らされていなかった。”エネルギー”って一体どんな”スキル”なんだ?
「諸君らの動揺も当然であろう。私が今正体を明かしたのはより勝率を上げるためだ。実際の戦場では互いの”スキル”を知っていた方がより高度な連携を取れるし、”スキル”を明かした者の方が信頼が出来るだろう?誰一人死なずに…とはいかないだろう。だが、最低限の損失で勝利をおさめよう!」
周りから歓声が聞こえる。
その歓声には演説の内容だけでなく、超越者という者が味方にいるという頼もしさもあるだろう。無論、相手にも超越者がいるかもしれないが…




