54,任務
ヴァルランダからの宣戦布告を受けた我が国クラントは、どこもかしこも大騒ぎだ。
まずヴァルランダ国境付近に住んでいる人達は、内部へと避難した。それにもちろん軍も大忙しだ。どうやら昨日の内に会議みたいなものがあったらしく、うちの父さんが、元とはいえ少将という地位にあったので召集された。
とりあえずオレは学校から何も言われなかったが、今日の学校ではどんなことを言われるのか分からない。Sクラスは戦場へ、みたいなことを言われてもなんら不思議ではない。自分で言うのもなんだが、オレ達ルーグラン校1年生Sクラスはすでに大きな戦力だ。
学校への足取りが重い。
オレは人を殺したこととかないので、実際に戦場に行っても多分あまり役に立てない。まあある程度の教育は学校で受けているので、完全に何も出来ないというわけではないだろうが…
戦場に行けとか言われたらどうしよう、とか思いながらオレは学校へ向かう。
学校に着くと、もうすでに皆んなが来ていた。
オレは朝礼ギリギリに行ったので、オレは皆んなと少し挨拶を交わす程度で終わった。
朝礼をするためにマイク先生が教室に入ってくる。
「皆さん。おはようございます。ではまず出席をとります。」
そう言って出席をとり終わると、一呼吸置いてからまた話し始めた。
「さて、皆さんはおそらくもう知っていると思いますが、我が国クラントがヴァルランダに宣戦布告を受けました。」
皆んな知っていたことなので、この場で動揺する者はいない。しかし、あまりの内容に少し雰囲気が暗くなった気がした。
「理由はヴァイシオン王家暗殺事件関係です。何の証拠もないのにね。あの国は絶対王政だから、こういったことが起こるんですね。」
ヴァイシオン国王は、妻や息子が殺されてから明らかにおかしくなった。そりゃ身近な人が殺されたとなったらそうなって当然かもしれないが、そんなので一国の王が務まるのか、とも思う。当時から仲がそれほど良くなかったという理由だけで疑ってくるんだから。
「それでは、皆さんが一番気になっているであろうことを教えたいと思います。この宣戦布告を受けて、自分達はどうなるのか、です。今回皆さんには、戦場への出撃が命じられました。」
…………正直、オレが思ったことは「やっぱりか」であった。もちろん、軍人を志した時からこのぐらいは覚悟している。というより、軍人の仕事というのはこういうことなのだから、むしろ望んでいたとも言えるかもしれない。だが、実際に直面するとなんとも言えない…
もちろん、自国のために戦うのは誇り高いことだとは思うのだが…
「しかし、今回皆さんに与えられた任務は攻めではなく防衛と支給です。主にこちら側で構えて敵の攻撃を防いだり、物資の運搬などが主です。ただ戦局次第で変わるかもしれませんが…
皆さんはまだ子供です。まだ人を殺す訓練もしていない人の方が多いでしょう。
これは皆さんに対する軍からの配慮です。」
これは唯一の救いだった。オレは今回の任務に全力で応えようと思った。
逆に、ルビアのように人を殺す訓練を受けている戦闘狂はむず痒いかもしれないがな。
「おそらく皆さんは、初の戦場で多くの悲痛な思いを感じることになるでしょう。ただし、そこで挫けてはいけません。それを乗り越えた者こそ、本当の意味で軍人になれるのです。皆んなで協力して、ヴァルランダを迎え撃ちましょう!」




