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来世は良い人生でありますように  作者: 三ki
アリス編
51/121

51,再会と別れ

ある病院にアリスちゃんの”ドッペルゲンガー”とアリスちゃんの両親が来ていた。


「お母さん、どうして泣いてるの?大丈夫?」


家から病院に来るまで、ずっと母が泣いている。

それなのに心配して理由を聞いても一向に話してくれない。

父も同様に母に寄り添うだけで、自分には何も話してくれない。

そんな2人に少しの苛立ちを覚えていたら、病院に着いた。

中には人が1人もおらず、電気もついていない。少し不気味な雰囲気をアリスは覚える。

ドアを開けて、その雰囲気に少し萎縮して入れないでいると、両親も何故か入ろうとしない。

もしかして両親も怖いのか? そんなことを思っていると、コツコツと足音が聞こえてきたのでそちらの方に注意を向ける。

すると1人の大人の男の人が、こちらへ向かっているようだ。


「ロカートナーさん、お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」


父が少し挨拶をして、大人の人についていく。アリスもそれに着いていく。やはり廊下も電気がついておらず、薄暗くて不気味である。


「こちらです。」


2階に登って少し奥へ行ったらドアを指してそう言った。そしてゆっくりとドアを開ける。ドアから眩しい光が漏れでる。


「奥にいます。」


何がいるのか? そう問いかけようとしたが、周りの3人の大人の真剣な雰囲気を感じ、なぜか問いかけることが出来なかった。

やがて説明された奥の部屋へと入る。

そこには、背もたれのない回転する椅子に座った1人の少女がいた。母が勢いよく飛びついてその少女に抱きつく。そして「ごめんね」と繰り返し言っている。

父もその少女に近づいて、軽く背中を触っている。

その少女は顔さえ違うが、何故かそれが誰だか私には分かる。


「…わ…たし……?」


父と母が私を見る。その瞳は優しいようでもあるし、何かもっと別の感情を抱いている気もする。

その少女も私を見る。こっちの瞳は確実に良いものではなかった。明らかに私に対して何か負の感情を抱いている。

父が少し私に近づいて説明してくれた。


「…えっ……なにそれ…? 私が…”ドッペルゲンガー”…?私の”スキル”は分からないんじゃなかったの?」


「……ああ、実は分かっていたんだがな…言うべきでないと思った……いや、言えなかった…すまない……」


「ていうか………私って…これからどうなるの…? 消えちゃうの…?」


私の瞳から涙が無意識に溢れてくる。

その質問に答えたのは父ではなかった。


「それは———」


「そんなの決まってるでしょ?あなたはもういいの。今までお疲れ様。」


「おい、アリス!」


私の質問に答えたのはその少女、本物の私だった。

父はそんな本物の私を少し強めの声、と言っても小さい声で叱責する。


「…何よ。父さんは私よりあっちの方が大切なの?…2年間も一緒にいたらやっぱりそうなるの?」


「いや、それは言い方が———」


「急に現れてもう用済みって何よ…」


私は不満を口にする。私からしたら、ずっと平穏に暮らしていただけだ。


「2年間も幸せな暮らしが出来たんだからもう満足でしょ?そこを代わってほしいだけなの。」


「私のことが邪魔なの?」


「うん。」


「あなたが生み出したくせに。」


「…そう。私が生み出したんだから、あなたは私の物なの。私の言うことは聞いてくれるでしょ?」


「もうよせ!2人とも!!」


父が私達の言い合いを、物理的に間に入って遮る。


「俺達は、どちらかを捨てようとは思っていない。」


「な、何でよ!本物は私なんでしょ!?

なら偽物は早く捨てなきゃ…」


「俺達にとってはどっちも子供だ。”ドッペルゲンガー”は本物と何一つ変わらない。どちらかを捨てるなんて…出来ない。」


「で、でも…じゃ、じゃあどうするの?」


「2人とも一緒に暮らそう! アリス、たしかお前、昔に兄弟が欲しいって言ってなかったか?」


私と本物の私の目が合った。


「言ってた気がするけど、これは兄弟じゃないでしょ。同じ人なんだから。」


「2年間も違う環境にいたら、もう違う人間さ。」


人間、という言葉を聞いて私は少し冷静になった。

この父の言葉は、私にとっては喜ぶべきなんだろうが、私には喜べなかった。

なぜなら、私が消えないのはスキルブレイクというもののせいで、それがいつ解除されるか分からない。つまり私は、いつも消えてしまう恐怖に怯えながら暮らすことになる。それに、父は言葉ではああ言ってるが、本当は本物の方が大切なはずだ。だってさっきから本物の私の近くにずっと立っているから。

母は、ずっと本物の私から離れない。

きっと父も母も本物の私と居たいはずだ。

そんな本物の私と私が一緒に暮らすなんて、想像しただけで苦しそうだ。

どおりでこの前に病院に行ってから、少し私に対して冷たい感じがしたんだ。


「…もう、いいよ。私は。」


「もういい?どういうことだ?」


「もう私は生きるのはいい。父さんと母さんもそっちの私といた方がいいでしょ?」


私の言葉に、父も母も本物の私さえも目を見開いて驚いている。


「そ、そんなことはない。お前だって俺達の子供だ。」


「私を受け入れようとしてくれるのは嬉しい。でも、それはそう思いたいだけでしょ?本当はそっちの私の方が大切なんでしょ?」


父さんが何か言いたそうな感じを出しながら黙ってしまう。

そこで黙ったらダメじゃないか、っと思いながら私は死のうと思った。

その時、私の指先が消え出した。

「えっ?」っと思わず声を漏らしてしまう。

私はスキルブレイクによって生み出された存在。つまり私が消えるというのは、スキルブレイクが解除されるのと同義だ。スキルブレイクが解除されるのは稀中の稀と聞いていたが…

よく見ると足元も消え出している。


「アリスッッ!!」父と母が駆け寄ってくる。

そして父が私の頬に触れる。その頃には私の腕はほぼ消えていて、父の手を触ることは出来なかった。

父と母は本当に悲しそうにしていた。私はそれを見て少し後悔の念を浮かべるが、やはり決めたことは変わらなかった。


「最後にこれだけは言っておきます。今までありがとうございました。」


私はゆっくり目を閉じた。


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