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来世は良い人生でありますように  作者: 三ki
アリス編
49/121

49,シトラの戦い

父親を名乗る男は、右腕を異様に変形させてシトラに殴りかかる。シトラはかなり分厚い氷の盾を作り、その攻撃をガードしようとするが、男の攻撃はその氷を破りシトラの腹へと到達した。


「ッッ!!」


シトラはそのまま吹き飛び、後ろの壁へとぶつかると、シトラが血を吐いた。

その場にいた誰もがシトラを心配するして駆け寄るが、シトラは平然としていた。


「おじさん結構強いんだ。ただのモブかと思ってたよ。」


そう言いシトラは右手周りに多数の氷の礫を作り、それを男めがけて放つ。男は右手でその氷の礫を砕く。

シトラは軽く笑みを浮かべていた。


「何故、今のパンチをくらって平然としていられる。どんな小細工をした?」


「ああ凄いパンチだったね。多分おじさんの”スキル”が関係してるのかな?確かに痛かったよ。

でも、もっと痛いの知ってるからあんまり効かないんだよね。」


初めは強がりだと思っていた男だったが、シトラの顔を見てその判断を変える。

(こんなガキが…一体どんな過去を持ってるんだ?)

男の”スキル”は”パワー”。

自分の力を増大させる”スキル”である。

男は今まで幾千もの実戦をしてきたが、自分の全力の右ストレートをまともにくらって、立ち上がった者は数える程しかいない。なのに、目の前の少女が平然としているのに、驚きを隠せなかった。

(これは…マジになった方が良さそうだな。)

男は、氷の壁を破壊し、家の中へ入っていく。

逃げたのか、と思いすぐに追いかけようとしたシトラだったが、逃げるような雰囲気ではなかったため立ち止まる。


「あいつは私がやる。みんなは離れたところで見てて。あと、人払いをお願い。」


シトラがそうみんなに言う。

周りを見ると、騒ぎを駆けつけた人がたくさん来ていた。

この捜索隊に参加している大人のメンバーは全員捜索が専門であり、皆戦力は臨めない。そのため、シトラ達ルーグラン校生が最大戦力なのだ。だから大人達はすぐにそれに従う。

アンは「自分も戦う」と言ってきたが、アリスを守る必要があるので、渋々同意した。それと、シトラの戦闘を見てみたい気持ちもあった。


「1人で大丈夫なの?」


「問題ないよ。」


「じゃあ頼むね。」


アン達が離れたところへ移動する。



しばらくすると男が出てきた。右手に斧を持っている。


「何?その斧。」


「お前は全力で戦うべきだと思った。だから持ってきた。」


「そう。高い評価を感謝するよ。」


「悪いがあまり時間がない。行くぞ。」


男は足に”パワー”を送り、超スピードでシトラの前までやってきて、斧を振りかぶる。

シトラはそれを左に避け、左右の手に大量の氷の礫を作り、男の周囲を包囲すると、一斉に発射する。

男は一方向の氷の礫を壊し、回避に成功した。


「お前の攻撃はその氷の礫だけなのか?ならいくらでも対策がつくぞ。」


「もちろんそんなわけないでしょ?ただちょっと確かめてただけ?」


「確かめる?」


「あなたの”スキル”は力を増大させるだけで、防御までは無理なんでしょ?さっきの攻撃を避けたのが良い証拠。」


「さあな、分からんぜ?ただ”スキル”の体力使うのが嫌だっただけかもしれないだろ?実際、さっきの回避方法で俺は無傷だ。」


「忠告ありがとう。気持ちだけもらっておくわ。」


シトラは白い歯を見せ、地面に手をかざす。

すると次の瞬間、男とシトラを囲むような壁が出来上がり、屋根がつく。これは氷で出来た部屋だ。

縦15m横10m高さ4mの部屋である。


「なんだここは?」


「アイスルーム。私の必殺技の一つ。」


「俺が逃げるとでも思ったのか?生憎だが、俺は逃げるつもりはないし、仮に俺が逃げようとしてもこの程度では俺を閉じ込められない。」


男は右手に”パワー”を送り、斧で壁へと攻撃を繰り出す。

壁は壊れ、すぐに出ていける状態に…なったと思ったらすぐにまた氷で塞がった。


「そんなわけないでしょ?勝つ方法ならいくらでもあるんだけど、これが一番早く終わりそうだったからこれを選んだだけ。」


シトラは天井に手をかざす。すると天井から氷柱が生成される。しかもどこにも逃げ場がないように。


「どうしたの?何をそんなに焦っているの?やっぱり防御は強化出来ないんだ。」


「焦っている?俺のどこを見てそんな感想が出てくるんだ?」


「さっきからずっと天井見てんじゃん。」


「来ないのかと待っているだけだ。」


「ふーん。じゃあいくよ。」


シトラはもう一度天井に手を向けると、氷柱が降ってくる。

男は斧を構えて、氷柱を砕こうとする…が、男の背中と腹に激痛が走った。男はそれで気を失いそうになるが、なんとか上の氷柱を壊すことに成功したようだ。

男は自分の腹を確認する。

すると、尖った氷が自分の背後から突き刺さっていた。

その氷は、男の後ろにある壁から出ていた。

シトラを見ると、部屋の壁に手をかざしている。


「…お前…卑怯だぞ。」


「卑怯?それは悪役が使う言葉ではないよ。

それに、多方向からの攻撃はさっきもやったでしょ。むしろヒントを与えてあげて優しいと思うんだけど?」


シトラは男に刺さっている氷を消す。すると傷口から血が沢山噴き出る。

(くっ、いや…しかしこれは逆にチャンスだ。氷が消えたお陰で動きやすくなった。)

男は足に”パワー”を送り、シトラに向かって全力で向かおうとした。だが男は滑ってしまう。

よく見ると、床がカチカチに凍っていた。


「くそっ このっ!」


男は右手に”パワー”を送り、床を砕く。

しかし床はすぐに氷で直り、男の右腕を飲み込んだ。

男が今度は左手に”パワー”を送るが、近づいてくる足音が聞こえそれを中断する。シトラの足音だ。


「もう勝負ありだね。大人しく降参したら?」


「…ああ、そうだな。お前は一体何者なんだ…強すぎる…」


「じゃあ、大人しく凍ってね。」


シトラが近づく。やがて男の左手が届く範囲までくると、男は素早く左手に”パワー”を送り、シトラを攻撃するために後ろに拳を引く。

しかし、その瞬間左肩を細く鋭い氷が貫いた。シトラの氷だ。

それにより、男はシトラに攻撃することが出来なかった。

シトラはゆっくりと男の体に触れる。


「じゃあね。おそらくもう2度と会うことはないから。」

シトラがニコっと笑った瞬間、男は全身が凍った。

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