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来世は良い人生でありますように  作者: 三ki
アリス編
47/121

47,拷問

外からアン達を”透視”していた男は2度大きく驚いて声を漏らす。

1度目はシトラがシャッターを壊した時、

2度目はシトラが地下に入った瞬間、消えたからだ。

これは、外から見る者に、地下の部屋だけを幻覚で見せていたということを表す。


シトラはすぐに地下へ向かった。

遅れてアンとソラも続き、その後を管理人の男、そしてさらにその後に同伴していた大人が続く。


初めにシトラが目にした光景は、地下の階段をダッシュで降りていたシトラを数秒止まらせるほどの異様なものだった。

階段を降りている時に、管理人の男が「やめろっ」っと叫んでいたので、大体察していたが、シトラの想像以上であった。

この前に地下で見た子供達が、上裸で横2列に等間隔で整列している。これが今何をしているのか、シトラには皆目見当も付かないが、明らかに普通ではないということはすぐに分かった。

入ってきたシトラに目もくれず、何の反応もない。

遅れてアンとソラが地下に入る。2人も同様に足を止めてしまった。

そしてその後ろから管理人の男がいつの間に取り出したナイフを片手に持ち、アンめがけて突き刺す。

アンは、呆然としていたにもかかわらずその攻撃を軽く避け、すぐにナイフを奪うと、後ろに回ってすぐに男を床に倒して拘束する。

男は、アンの動きにかなり驚いているようだ。


「ッッ!! おい! お前達!!

今すぐこいつらを殺せ!!私を助けろ!!」


子供達の方に向けてそう叫ぶ。

すると子供達はスイッチを押された機械の様に動き出してシトラ、アン、ソラに襲いかかってくる。

しかし、シトラに触れるその前にソラが”バリア”を張って壁を作る。

“バリア”は少し緑がかった透明の壁のようなものなので、”バリア”の向こう側がよく見える。

その向こう側を見ると、”バリア”に狂ったように殴りかかっている。

その異常性にまた少し怯んでしまったが、すぐにシトラは後ろを向きでアンが拘束している男の方を向く。

すでに同伴していた大人は地下へ入っており、アンは指示を飛ばす。


「おそらくこの孤児院にはまだ仲間がいるでしょう。その拘束をお願いします。ここは3人で十分です。」


大人達は了解の意を示すと、この男の仲間を逃がさないようにとすぐに上へ向かう。


「さて、知っていることを全て話してもらいたいんだけど?

あっそれと、アン。もう拘束を解いていいよ。」


「えっいいの?」


「うん。その方がやりやすいしね。」


何がやりやすいのだろうか、そう思いながらアンは拘束を解いた。するとすぐに男は起き上がり、シトラに襲いかかるが、腹にパンチを打たれ壁まで吹き飛ぶ。

すると男の体が壁から離れない。氷でくっついていた。アンはシトラが何をやりやすいと言ったのかが分かった。拷問だ。

確かに情報を引き出すなら一番効率が良いが、実際に見るのが嫌で、少し目を逸らす。

シトラはルビアのように大貴族出身の者は、戦争で役に立つために小さい頃からの英才教育を受ける。その際に、人を殺す訓練もしていたようなのだ。つまり、シトラにとっては拷問は躊躇なく出来ることだった。

ちなみに、貴族出身という意味で、イリアも人を殺す訓練をしていたようだ。


シトラが男の首に、いつの間にか作り出した氷のナイフを近づける。

男は何も喋ろうとしない。

するとシトラは、持っていたナイフで男の腕を切る。


「ッッ!!!」男はかなり痛そうな声を上げる。


「もしかして氷だから切れないとか思ってたかもしれないけど、普通のナイフよりはよく切れるからね?」


シトラはまたナイフを男の首に近づける。

男はシトラを強く睨んでいる。


「まず話してもらいたいのは、この子供達は何?」


「………」


シトラはナイフを男の腕に突き刺す。

ナイフは腕を貫通し、壁まで刺さっている。

シトラがもう一本ナイフを作っている。


「………俺の”スキル”である”洗脳”で俺の命令に従うことにした子供達だ。」


「じゃあ次、アリスって名前の女の子知ってる?」


「知らない!それは本当に知らない!!」


「あなた達は何者なの?ただの組織じゃないよね?こんな大きい孤児院を運営しているんだからね。」


「………」


シトラがナイフを男の顔のすぐそばの壁に突き刺す。

少し当たっていたようで、頬から血が垂れている。

シトラがまたナイフをもう一本作っている。

そして同じ質問をして、どんどんと脅していく。

しかし男は何も答えない。


「…この部屋に幻術を仕掛けたのは誰?」


「……俺の同僚だ。」


「まあ、他にも聞きたいことはいっぱいあるけど、とりあえず聞く。今話したことをあなたの仲間にも同じようにするけど、その場合は本当のことを言った者を生かして、嘘を言った者は殺すけどそれでいい?」


「………どうやって真偽を確かめる?」


「調べれば分かること。例えばあなたの”スキル”が本当に”洗脳”かどうかとか、子供達がどんな”洗脳”をされているのか、とかはすぐに分かる。」


男が沈黙している。


「すぐに答えないってことは、嘘をついてるってことでいいんだね?」


シトラが男の首にナイフを軽く当てる。


「っま、待て!一つだけ嘘をついた。」


「何それは?」


「………」男がまた黙ってしまう。


「何?」シトラが今持っているナイフを突き刺す前にもう一本ナイフを作ることで、まだまだ拷問を続ける意志を見せると、ようやく男が口を開いた。


「………アリスは…ツァンバルにある家に監禁している…」



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