46,作戦決行
作戦通り、アン達は孤児院へ再度入る。
警備員の人には、軍の者というだけで良い。
そして庭を抜けて建物の中に入る。
すると、管理人の男の人がどこからか早速やってきて出迎えてくれる。
見たところあまり驚いていない様子、いや、怪しいフィルターで見ているからそう見えるだけかもしれないが…
「どうされたのですか?またこのようなところへ。」
「いやぁすみません。肝心なことを忘れてしまっていましてね。もう一度奥で話をさせていただけますか?」
これは予め考えてきた言い訳だ。
地下への階段を見ると、何故かシャッターが閉まっていた。
このシャッターは”透視”の人は反応しなかったのか?
流石に大人の人が質問してくれる。
「何故地下への階段にシャッターが閉まっているのですか?」
「それは今回の要件に関係があるのですか?」
それを聞いて言葉を詰まらすが、横から援護が飛んでくる。シトラからだ。
「関係はないです。ただ喧嘩していて階を分けているというのを聞いて、今は仲直り出来ているのか心配で…
シャッターがしまっているというのは、今は地下を使っていない、つまりもう仲直り出来たということですか?」
「いえ、今はまだ仲直りは出来ていません。むしろ悪くなってしまっていましてね、それでシャッターを閉めているんですよ。ついさっき決まったばかりです。」
何故”透視”の人が何も言わなかったのか、それはこのシャッターはアン達が庭を歩いている時に閉まったからだ。ますます怪しさが増してくる。
「シャッターを閉めるとさらに仲が悪くなる気がするんですがね。見えない壁だったのが見える壁となったことで…」
「時には時間を置くことも大切です。今のままで会わせると、またさらに喧嘩をして仲が悪くなるのは目に見えています。」
「そうですか、では地下は今どんな様子なのですか?」
「非常に仲が良く、さっきも遊んでいましたよ。」
「何故地下の様子が分かるんですか?」
「シャッターの横に扉があります。そこから我々は入ることが出来るのですよ。」
実際に見に行った記録があるかを、もう一度”透視”の人に確認に行くことも出来るが、おそらくあまり意味がないだろう。
“透視”はより多くの障害物を通ると、より体力を消耗する。
地上から地下を見るというのは、一見普通の透視に見えるが、実はかなり体力を使うものなのだ。
したがって、ずっと”透視”を維持するのは難しく、必ず10分に一回は2分くらいの休憩を挟んでいた。
その間に見に行った可能性があるため、証拠とはならない。
そして、この孤児院の組織が強大であればあるほどスキル波検知装置を持っている可能性が高く、おそらくいつ”透視”されているかだって分かるはずだ。
「私達もそこから入ることは出来ますか?昼間会ったので、もう一回見に行きたいのですが。」
「無理です。」
男は即答する。
「何故ですか?」
「…この際だから言いますが、実はシャッターを閉めたのはあなた達が原因でもあるんですよ。あなた達が地下へ行ったから、自分も地下に行っても良いと勘違いしたこの階と2階の子供達が増えましてね、それで仕方なくシャッターを閉めたのです。ですので、もしまたあなた方が地下へ行こうものなら、無理やり下へ行こうとする子供達が出るかもしれません。」
「子供達は喧嘩しているのでしょう?地下へ行きたがっているのですか?」
「元々全員が喧嘩していたわけではないですからね。」
ここで会話が止まる。
管理人の男が、もう奥へご案内しても良いですか,と視線を同伴の大人に向ける。
「ねぇシャッターっていくらぐらいだっけ?」シトラがアンとソラに小声で話しかける。
「さぁ、20万ぐらいじゃない?」ソラが小声で答える。
「なんだじゃあ安いのね。」
「えっ?」今まで小声で話していたのに、2人がそれなりに大きい声で言う。
2人が声を上げた瞬間、シトラは管理人の男の正面に立つと、
「勘違いならごめんなさい。必ず弁償します。それもシャッターを壊す子供達が増える可能性も考慮して、さらに硬いシャッターを。」
そう言いシトラが管理人を見たままシャッターに手を伸ばす。管理人はシトラが話し始めた途中から、「まさかっ」っと言い、止めに入ろうとするが、もう遅い。
シトラは伸ばした手から、尖った氷を複数生み出すと、それをシャッターに向けて飛ばす。
シャッターはすぐに壊れ、凄い音がする。
ちなみにこれは、作戦会議で出ていた作戦だ。もし地下へ入るのが禁止されていたら、強行突破でも良いだろうと。
しかし、危険が大きすぎるという理由から最終手段とされていた。
子供が怪我を負うようなことがあったりするかもしれないためだ。
にも関わらずシトラがシャッターを壊したのは、この孤児院が黒だと確信を持ったからだ。
シトラはシャッターを壊すと、すぐに地下へ向かう。
それに少し遅れて、アンとソラも続く。




