43,孤児院の地下
管理人との話を終えた同伴の大人の人が、アン達のもとへとやってきた。
どうやら、地下は8歳以上の子供のフロアらしい。
最近、7歳以下の子と8歳以上の子で激しい喧嘩をしてしまって、今は一旦別れさせている状態らしい。
そのため、怒りからか地下への階段にすら近寄らないようだ。
ただ、気性が荒い子が多いためオススメはしないが見学は出来るらしいので、アン達3人は地下へ行くことにした。
一応、大人が1人ついてきている。
地下に入ると、強い視線を沢山感じる。その視線の正体はすぐに分かった。子供達だ。
8歳以上と言っていたので、中にはアン達と同じぐらいもしくはアン達よりも年上っぽい子供もいた。
子供達は上のフロアと同じように遊んでいる者もいれば、遊びに飽きたのかただ寝転んでいる者など様々だ。
しかし、その遊んでいた者達も遊びを辞めて、こちらに視線をやる。
シトラはこの雰囲気に違和感を感じる。
(子供達からすれば、私達は新しくこの孤児院に入った仲間ともとれるはず…なのにこの強い視線は何?
まるで私達のことを歓迎していないというか、拒絶しているような気さえする。
それに、おもちゃが床に散らかっていない。いや、正確には散らかっているのだが、そのおもちゃは一箇所に集中している。まるで今まで遊んでました、と言いたそうな感じで、)
とりあえず、アリスちゃんらしき子供を探そうと、周りを見回すが、そのような子供はいない。
「あなた達は誰ですか?」
おそらく、この孤児院の8歳以上組のリーダー的存在である男の子が話しかけてきた。その男の子は、アン達よりも年上そうで、体格もアン達より大きい。
気のせいかもしれないが、何故かやっぱり敵意を感じる。
「ある女の子を探してここに来ました。名前はアリス・ロカートナーといいます。何か心当たりは?」
嘘をつくことも出来たが、あまり良い嘘が思い浮かばなかったのと、もう既にここの管理人には言っているので、ここは正直に話すことにした。
「特にありませんね。この孤児院には名前すら分からない子もいるので、もしかしたらその中にいるかもしれませんが。用はそれだけですか?」
早く帰ってくれと言わんばかりの口調だ。
やはりあまり歓迎されていない様子だ。
ちなみにアリスちゃんは自分の名前は分かると思うので、その候補にはない。
このまま帰るわけにはいかないので、シトラがなんとか粘る。
「皆さんは普段どんな生活をしてるんですか?」
「その質問はその女の子とやらを探すのに必要なんですか?」
「彼女が普段どんな生活をしているのかの参考になるかもしれない。」
「まあいいでしょう。普段は仲良く遊んでいますよ。」
「そうは見えませんが?」
「あなた達がいるからですよ。来賓の方がいるというのに無邪気に遊ぶわけにはいかないでしょう?」
「私達は邪魔ですか?」
「そのようなことはありませんが、そう感じられたのであれば謝罪いたします。」
そう言って軽く礼をする。
「まだ何か用が?」
シトラが何も喋らないでいると、向こうからそう言われる。
このまま質問を繰り返しても平行線のような気がする、と思いシトラ達は帰ることにした。
「…いえ、もう十分です。ありがとうございました。」
シトラ達は上への階段を登る。流石に地下でのことは、地下に行った全員が違和感を感じたようで、後々に”透視”の”スキル”で見てもらうことにした。
管理人との奥との話では、アリスちゃんのことは何も分からなかったそうだ。もちろん”ドッペルゲンガー”のことは何も言わないでだ。
とりあえず今は、もう一組との合流を優先しよう。




