39,アリスの家
家の中は、普通の家という感想しか出てこない。
何か特別変わったところもない。まあ別になにも期待してなかったが、
オレ達はまず、アリスちゃんの部屋に案内された。
オレ達を案内してくれている母親は、細い声で少し痩せ細っている。
この家は2階建てなのだが、アリスちゃんの部屋は1階の奥の方にあった。
階段の横を通って、その奥の部屋に案内される。
部屋の扉には、「アリスの部屋」と書かれた看板があった。
部屋の中は、机とベットがあり、ベットの上には沢山のぬいぐるみがあった。机の上はきちんと整理整頓されており、部屋の隅には、おもちゃ箱と書かれた箱に沢山のおもちゃが詰められている。
今見たところ、たいして手がかりになりそうなものはない。
とりあえず母親に質問していく。
「この部屋は2年前からこんな感じですか?」
「はい。まあ捨ててしまったおもちゃや新しく買ったおもちゃなどはありますが。」
「では、2年前から残っている物が何か分かりますか?」
「まあ全ては分かりませんが、少しなら。」
そう言って母親はおもちゃ箱を漁る。
中から出てきたのは、誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントで買ったものしか覚えていないらしい。まあ2年以上前なら無理もないか。おもちゃの違いなんてあんまり分からないしな。
オレ達は、そのおもちゃに注目する。
「そう言えば、これはちょうど2年前ぐらいに買ったものですね。あの子がとても欲しがっていたので買ってあげたんです。たしかあの子の誕生日の少し前に買ったような気がします。」
「その日、アリスちゃんはどうしていましたか?」
オレ達の中で一番頭が良いイリアがそう問いかける。
「えっと、少し自信がありませんがたしかそのおもちゃでずっと遊んでいたと思います。その日のあの子の喜びようが印象に残っています。」
「とりあえず、家の中にはいましたか?」
「はい。それはたしかそうだったと思います。」
「なんだ?何か分かったのか?」
「いや…アリスちゃんは”ドッペルゲンガー”を無意識に発動したわけでしょ?
だからその発動条件がどんなのか考えてたんだけど、おそらく欲求の葛藤じゃないかなって。」
「葛藤?」
「簡単に言えば、したいことがいっぱいあるってこと。」
「なるほど、それでか…」
「うん。多分アリスちゃんはこのおもちゃで遊びたいって欲求とあともう一つしたいこと、もしくはしなければならないことがあったんだと思う。」
「それが分かってどうするんだよ?」
「つまり、アリスちゃんは誘拐された可能性が高いってこと。」
母親の顔が若干引き攣る。
「なんでそんなことが分かるんだ?」
「私の憶測が正しければ、アリスちゃんはおもちゃで遊びたい欲求と外に行って何かしたいこと、もしくはしなければいけないことがあった。それでその外に出ていったアリスちゃんが本物で、そのアリスちゃんが戻って来なかった。ここまではいい?」
「ああ。」
「なら、何故戻って来なかった、いや、戻って来られなかったと思う?」
「そりゃ、どこか遠くへ行ったとか?」
「確かに誰にも発見されないような場所へ行ったんなら、可能性もあるけど、そんな場所この近くにはないし、そんな場所に行く目的も分からない。だからほぼほぼないと思ってるよ。」
「だから誘拐された可能性が高いってことか。でもその可能性が高いのはこれを見る前から予想されてただろ。」
「でもこれでほぼ確信に変わった。おそらくアリスちゃんがいるのは首都のツァンバルよ。」
「なんで、そんなことが分かるんだ?」
「まず、”ドッペルゲンガー”の性質を調べたんだけど、実際に会うと死んでしまうという都市伝説があるの。同じ都市にいて偶然二人が会ってしまったりしたら誘拐した意味がないでしょ?だからここは除外。ユウライは小さい街だから誘拐してからの拠点には向いてないし、何よりこのライアスから近い。よって消去法でツァンバルってわけ。」
「なんか良く分からんけどお前が正しそうだな…」
イリアは本当に頭がいい。
まあこれは、あくまでイリアの憶測が当たっていればこそだが、
「っというわけで、まずは近隣の人にそのおもちゃを買った日に何かあったか聞きましょう。何もないかもしれないけど、もしかしたら何かあるかもしれないし。そのおもちゃを買ったのはアリスちゃんの誕生日の少し前なんですね?」
母親が頷くと、
早速イリアがこのことを大人達に伝えに行く。
何だかよく分からないが、順調そうだ。




