34,ドッペルゲンガー
「…”スキル”は…”ドッペルゲンガー”です…」
科学者達がみんな驚いていたり、どんな気持ちなのか分からないような表情をしていた。
何故、科学者達がこんなに動揺しているのか?オレ達は引率の教師含め誰一人分からなかった。
それに、オレ達に研究所を案内してくれた人もピンときていない様子だった。
「どうしてそんなに同様しているのですか?」
オレ達を案内してくれた人がそう聞く。
「あ、ああ…説明しよう。まず、この子が”スキル”を使っていない状態の脳を解析しようとしたんだが、それが中々出来なかった。何故だと思う?」
「……分かりません。」
「それはこの子が2年間以上”スキル”を使い続けていたから…いや、使い続けていた状態だったからだ。」
「…?どういうことですか?」
「…スキルブレイクだ…」
それを聞いて、この科学者の人はピンときたようだ。
一人で納得して、そしてまたなんとも言えない表情をしている。
一体どういうことだ??
すると、こっちを振り返って説明してくれた。
「この子は…人間ではなく……この子は…約2年前に作られた”ドッペルゲンガー”です。この子は…アリスちゃんは…おそらく、2年前に不意に”ドッペルゲンガー”を作ってしまい、そこで何かが起こってしまい、アリスちゃんが気絶…そしてその”ドッペルゲンガー”がスキルブレイクで消えなくなってしまったのです。そして、親がアリスちゃんと”ドッペルゲンガー”を間違えて連れて帰ってしまったのです…」
この子は、アリスというのか。この科学者の人も、説明が追いついていない様子だ。
正直オレも完全に理解出来なかった…だが、この子がどんな状態にあっているのかは、なんとなく分かった気がする。
「…どうして、この子が”ドッペルゲンガー”だと分かるのですか?親が連れ帰った方が本物のアリスちゃんだったということはないんですか?」
引率の教師がそう質問する。
その質問に、すぐに答える。
「この子の脳は2年前からずっと”スキル”を使っている状態になっていました。もしこの子が本物なら、”スキル”を使ってない状態になっているはずです。スキルブレイクが起こっている時には、脳は”スキル”を使っていない状態になります。おそらく”ドッペルゲンガー”は”スキル”を使った状態のアリスちゃんをコピーしたのでしょう。」
オレ達はみんな黙ってしまう。
なんと言ったらいいか分からなかったからだ。
本当にこの人達の言う通りなのか?
今ガラス越しに見える少女が、本当に人間ではないのか?
今も、両親と普通に話している。
そして、検査の結果がどうなのか楽しみそうにしているように見える。
「……この結果は報告するのですか?」
「…そりゃあすべきだと思う。」
「どうして?知らない方が良いことだってある。」
「これは、スキルブレイクなのだぞ?ならば急に何故か解除されることもある。そうなればどうだ?人が急に消えることになる。そっちの方が問題だ。」
「しかしそれは稀ですよ。それが起こってから説明するということでも良いんじゃないですか?」
科学者達が必死に議論している。
正直、どっちが正しいことなのか分からない。
言うのと言わないの、どちらの方が良いのか。
結局は両親だけに言うことになった。
今、両親だけを別室に呼び出している。
部屋の内容は、オレ達には分からないが、とても辛いことだということは分かる。
話し合いが終わったようだ。両親が部屋から出てきた。
母親は泣いている。
父親は、そんな母親に寄り添いながら、真剣な面持ちで下を向いている。
話し合いを終えた科学者が、オレ達の元へ向かってくる。
なにやら話があるようだ。
「本物のアリス・ロカートナーを探してほしい。」




