32,リエルvsルビア
審判はソラがするらしいので、ソラがオレ達の真ん中に”バリア”を貼り、その”バリア”が消えたタイミングが開始の合図らしい。
向こうを見ると、ルビアがすでに体から炎を出している。もう準備完了ということか。
ちなみにルビアの”スキル”は”炎上”だったな。
オレも、リングの石板を壊し、無数の石礫を構える。
ちなみに、どうやら修復が楽なようで、リングはいくら壊しても良いらしい。
「じゃあ、始めるよー」
ソラがそう言うと、オレもルビアも、さっきよりもさらに臨戦体制に入る。
オレも、いくら嫌々だと言っても手加減などするつもりもないのだ。それに、いつかルビアとも戦いたいとは思っていたので、良い機会だと思うことにした。
いよいよ目の前のバリアが消えた。
すると、ルビアがいきなりオレに向かって炎を放ってきた。
おそらく軽い様子見程度だろうが、当たると致命傷になりかねないので、オレは近くのまだ壊してない石板を”サイコキネシス”で操り、オレの前に移動させバリアの要領で炎を防いだ。
そしてそのまま、その石板をルビアに向けて放つ。その後ろに石礫を潜ませておきながら…
ルビアは、オレの石板攻撃を、横に避けてかわし、そのままオレに向かってくる。オレはその後ろからルビアを石礫で攻撃しようとしたのだが、ルビアはその石礫をしっかりと砕いて、オレの攻撃を防いだ。
「遠くからうぜえ攻撃しやがって。」
ルビアはそう言ってオレに向かってくるが、顔は笑っている。うざいと言われても、これがオレの一番勝率が高い戦いかたなのだから仕方がない。
そしてルビアがすごい勢いでオレの近くまでやってきている。オレも一応”サイコキネシス”でルビアの動きを鈍らせてるのだが、あんまり効いている様子がないな。そんなにルビアの力は強いのか?
ルビアがオレの5m先ぐらいの地点まで来たところで、オレはルビアが踏んでいる石板を勢いよく上空へ移動させ、それと一緒にルビアも上空へ移動させた。
そして、今オレが操れる全ての石礫をルビアの全方位から攻撃する。
「空中じゃ防ぎきれないぞ?」
オレがそう言うと、ルビアは楽しそうに不敵な笑みを浮かべる。
これから攻撃されるというのに、随分と余裕だな?まあいいか。
オレはルビアに向けて攻撃する。
するとルビアは、自身の体を”炎上”させ、蒼い炎を出すと、オレの石礫を溶かした。
オレは流石に驚いた。
石を溶かすには、どれくらいの温度がいるのか知らないが、尋常じゃないくらい高いのは確かだ。しかも、石礫になって小さくなっていたとはいえ、一瞬で溶かしていたので、ただ石を溶かすだけの温度より高いのは事実だ。
離れたところへ移動し、遠くから見ていたこっちまで暑くなってきていた。
「驚いたぞ。そこまで”スキル”を極めていたのか…」
「お褒めにあずかり光栄だよ。だが驚いてる場合じゃないぞ!」
そう言って、一気にオレとの距離を詰めにくる。
オレは堪らず上空へ避難する。
そのオレを追って、ルビアが炎を放つ。
しかも、最初にオレに放ってきたのよりさらに温度が高そうで、蒼い炎だった。
今度は石板でも防げないかもしれない。そう思い、オレは全速力で更に上空へと避難する。そして作戦を考える。
(しかし、どうやって勝とうか…あの蒼い炎で纏われたらオレの攻撃が通じない。しかし、まあ流石にあのレベルの炎を出すにはそれなりの体力が要りそうだ。だったら持久戦か?
いやでも、それはオレも体力が持たなそうだし、石板が無くなりそうだ。
やはり攻めるしかないか?このリング上の全ての石板を集めて簡単には融解出来ないようにするか。)
などと、安直な作戦を思いつくが、まだ石板を使い切るには早いと思い、却下する。
「おい、いつまでも上にいないで降りてこいよ。」
ルビアが退屈そうだったので、とりあえずさっきの石礫みたいに攻撃する。
「またか、その手は通じないぞ。」
ルビアはそう言うと蒼い炎を纏った。オレはその瞬間にルビアの炎に当たらないところで石礫を止めた。そしてそのまま止めておく。ルビアは炎を消すに消せない。
そう、オレの狙いは、最初に思いついた持久戦に変更した。
それをルビアが黙って見ているわけではない。
ルビアは炎の範囲を広げ、少しずつ着々とオレの石礫を融解していく。
オレは、新たな石礫を作り、さらにルビアの周りで止めておく。
すると、ルビアはようやく力尽きたのか、纏っている炎を消した。試しに石礫で攻撃してみると、攻撃が成功する。
オレも、体力の限界だったので、ルビアから離れたところに降りたった。
ルビアは炎を使わずに石礫を何とか防ごうとするが、そう上手くはいかない。
この辺で、そろそろ石板が尽きそうだった。
すると、ルビアがまた炎を放ってきた。尽きたんじゃなかったのか!?
オレはまた上空へ逃げようとするが、ルビアの炎はそのオレが逃げようとする上空へ。
オレは逃げ場を失い、気がつくと周りが炎で囲まれていた。
そのオレに向かってルビアが向かってくる。
オレは、残っていた全ての石礫でルビアを攻撃するが、それを蒼い炎で防がれる。
力尽きたように見えたのは演技だったのか…
ルビアの炎の拳が、オレに直撃する…直前で、ソラが”バリア”でオレを守ってくれた。
オレは尻餅をついてしまった。
「ちょっとルビア!!いくら僕が”バリア”で守れるとは言え、そんなに強い攻撃はダメだよ!!」
ソラがルビアに文句を言う。
「大丈夫だって、当たりそうなら寸止めするつもりだったし。」
ルビアがそう答える。
オレは負けてやはり悔しかったが、とりあえず起き上がるとルビアと会話する。
「流石に強いな。同年代でここまで強い奴がいたとは思わなかった。」
「まあ、幼い頃から死ぬかもしれないって訓練を一日中されてたからなぁ。それにお前も十分強かったぞ。同年代でここまで強いライバルがまだいて良かった。」
「え?他にも戦ったことがある奴がいるの?」
流石にまだ入学して一日目だし、昨日はティアラの家に行っていたので、戦う機会がいつにあるのか?
「ああ。あの氷女だ。あいつとは昔っからずっと命懸けの戦いしてたからなぁ。」
あの氷女とは、おそらくシトラのことだろうな。
「なるほど,アドランス家とオーケニアス家同士で関わってたのか…しかしその2貴族は仲が悪いと聞いているぞ。」
「ああ、仲最悪だよ。だからあいつとも戦うのは修行じゃなくて、マジの戦いみたいなもんだな。親同士がどっちの子供の方が強いかとかで喧嘩になったりするからな。まあ大抵決着がつく前に止められるんだけどよ。そんなんだからあいつとオレの仲も悪くなった。」
確かにルビアとシトラが話しているのを見たことがない。しかし、喧嘩しているところも見たことがない。
喧嘩するほど仲が良いと言うが、本当に仲が悪い奴同士は話すことすらしないのか。
「じゃあシトラもルビアと同じくらい強いの?」
ルビアは少しムッとして、
「いや、オレの方が強いがな、」
っと本当か嘘か分からないようなことを言った。
それにしても、ルビアとシトラがこんなに強かったとは…
オレもまだまだ修行不足だなぁ




