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来世は良い人生でありますように  作者: 三ki
ルーグラン校編
29/121

29,ティアラの過去(2)

私が4歳の時に、父親が死んだ。

死因は病気だ。その病気は、高額の金を使ってようやく治るか治らないかの病気で、私の家は特別裕福でもなかったため、父の病気を治すことは出来なかった。


父が死んで、母やみんなはとても悲しんでいた。

私は、まだ4歳ということもあって、状況がよく分からなく、

(父さんは、ただ眠っているだけなのにどうしてみんなは悲しんでいるんだろう?)

と思っていた。

私は父が眠っているから、みんなは悲しんでいるんだと思い込み、父に「起きて」っと念じた。

すると、父は起き上がり、みんなは驚いて言葉を失っている。中には尻餅をついた人とかもいた。

これが、私の”スキル”である”ネクロマンサー”を初めて使った時だ。


私は父に、次は話してもらおうと思い、念じた時、私は力尽き気絶してしまった。

“ネクロマンサー”を使うには、膨大な体力がいるのだ。それに、私はまだ4歳だったのですぐに力尽きてしまうのは自然なことだった。


私が倒れた後のことは、母から聞いたことだが、

私が倒れた直後に父も倒れたらしい。しかし、父は倒れた後に僅かに、起きようと動いたりしていたらしい。

後から分かったことだが、これは私の”スキル”が発動中に、私が気絶してしまったことで強制的に解除されてしまったためのバグのようなものらしい。

それは、私が目を覚ました後にも続いた。


不思議なことに、私がどうしようとも父は元には戻らないかった。私の”スキル”によってこうなってしまったのだから、父を元に戻す方法も私の”スキル”にあるはずなのに、何故か戻らない。


父は、死んでしまったというのに、ゆっくり休むことも出来ずに、常に僅かに動いている。そして、不規則的にバッと起き上がり、そしてまたすぐに倒れる。そしてたまに声を発する。声を発すると言っても、誰の声か分からないような声で、なんて言ってるかも分からないが…

私がもう一度眠っても、火葬しても、骨をバラバラにしても、ずっと常に動いている。

私のせいで…


母やみんなは、そんな私に文句の一つも言わずに、ただ泣いている。私も涙が流れてきていた。




父は、土に入れてもいつの間にか這い上がってきているので、鉄の箱に骨を入れた状態で、仏壇の下に埋めた。

そして、その状態でも動いているので、音が聞こえる。

たまに大きく動いたり、声を発したりするので、普通にしていても聞こえることもある。

リエルが気付いたのはそのためだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「これで終わりだよ…ここから音がする理由…」

私はこのことを全てリエルに話した。

全部話したのは、罪滅ぼしのつもりだろうか?

話したことで、少し気が楽になった気がした。


「ちなみに軍に入ろうとしたのもそのため。”スキル”を極めることで、父さんを元に戻せるかもしれないと思ったから。幸いにも、私の”スキル”が判明したのは早かったからね。」


リエルは何も言わない。その沈黙が、辛かった。

私のことをどう思ってるのか、憐れんでいるのか、蔑んでいるのか分からなかったからだ。

だから私は沈黙を破るために言葉を続ける。


「でもあれ以来、人を蘇らせることがトラウマになってね…あまり上手く出来ないの。まあ今は少しずつ出来るようになってきたけどね。これも人を助けるためだって思い込めば、少しは楽になれたんだ。」


さらに私は言葉を続ける。


「ちなみに”ネクロマンサー”ってのは死者を蘇らせて操るだけじゃなくて、召喚も出来るんだよ。試験の時はそうやってたんだ。そうすれば、父さんに少しでも罪を償えるかな、とか思ってね…」


ここで初めてリエルが口を開いた。


「……お前、もしかして自分が悪いと思ってるのか?」


私は一瞬たじろいだが、すぐに返事をした。


「…だってそうじゃない?」


「お前はただ、みんなを喜ばせたかっただけだろ?こうなってしまったのは結果に過ぎない。」


「でも結局喜ばせてない!結果が全てだよ!!」


「お父さんが死んで、みんな悲しんでいたんだから、そのみんなを喜ばせるなんて初めから無理だったんだよ。それにその時、お前まだ4歳だろ?」


私は少しやけになって反論しようとしたが、その前にリエルがさらに言葉を続けた。


「それに、さっき自分で言ってたじゃないか。お父さんを元に戻すために軍に入ったって。なら、まだ終わってない。

これから良い結果を作ればいいんだよ。」


「…私が何もしなければ、お父さんはああならなかったんだから、私が元に戻しても…それが良い結果とは言えない。」


「なんでだ?良い結果だと思うけどな?

ならまあ付け足すが、お前が軍になって多くの人の命を救ったとしよう。そしたらみんな喜んで、良い結果にならないか?」


「…」


私は何も言えなかった。確かにそうかもしれない…そう思ったが、私はやけになっていたので言い返そうとした。するとその時、父さんのところから音が聞こえた。その次に声も。

私は、これが父さんからのメッセージだと確信した。


「……わかったよ父さん…私、頑張るから…それで、またちゃんと必ずお祈りするからね…」


私は涙を流していた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「それじゃあ、今日はありがとう。なんか気持ちがすごく楽になった気がするよ。」

私はリエルを見送る。


「オレは何もしてないよ。ただ自分の思ったことを言っただけ。」


「それに救われたよ。本当にありがとう。」


リエルはただ微笑むだけだ。


「あ、そうだ。私、これから頑張るって言ったでしょ?だから、今まで嫌ってた死者を操ることも積極的に頑張ってみようと思うんだ。だから……またいつか付き合ってくれる?こんなこと言えるの、今のところリエルしかいないしね。」


「もちろんいいよ。またいつでも言ってよ。」


そう言ってリエルは帰っていった。

私はその背中をずっと見ていた。


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