28,ティアラの過去(1)
オレは音がしたところを見る。
するとそこは確かに仏壇だった。
近くまで行ってもう一度聞いてみる。耳を澄ますと、やはり何か聞こえる。
(下か!?)
オレは下から音が聞こえるような気がして、床に耳を当ててみる。すると、何かが鉄のようなものを叩いている音が確かに聞こえた。
オレは、一瞬パニックになった。
(中にいるのはお父さん?もしかして閉じ込められてる?)
もしかしたら掘り起こそうとか思ったのかもしれないが、後ろからティアラの声がして正気に戻る。オレはティアラの気配に気づけないほどパニックになっていたのか…
「……何…してるの?」
「! ティアラ!! この下から…音が聞こえるんだ!」
「………ああ……それね…」
そう言うと、ティアラはしばらく黙ってしまった。
「…とりあえず、後で説明するから今はみんなのところへ戻ってくれない?」
「…わかった。」
そう言って、オレ達は仏壇のある部屋から出る。
「じゃあ私はトイレに行ってくるから、先に行ってて。あと…さっきのことは…本当にちゃんと説明するから、誰にも言わないでね。」
そう言われてオレは部屋に向かった。
(あ、オレもまだトイレしてなかった。)
部屋を出た目的をすっかり忘れてしまっていたが、まあ我慢するか、と思いみんなの元へ向かう。
部屋に入ると、
「遅かったね?何してたの?」っとアンが聞いてきたが、道に迷ってたことにした。それに遅いと言っても、実際にオレはトイレをしていないので、全体的な時間で見ればそれほど遅くはない。さほど不思議なことではないだろう。
少しすると、ティアラが部屋に戻ってきた。
ティアラは一瞬チラッとオレを見たが、すぐに目線を外し、みんなと会話を始めた。
おそらくオレだけが気づけるぐらいの変化だが、ティアラは少し悲しそうだ。
「それじゃあ、今日はこのへんでお開きにしようか。」
あれからしばらく経ち、外も暗くなってきていたので、今日はこの辺で終わることになった。
ティアラとティアラのお母さんがお見送りをしてくれる。
そして帰りは8人で歩いていたが、オレはティアラとの約束があったので、もう一度ティアラの家に向かう。
今日解散した後に、もう一度私のところへ来てっと、さっき言われたからだ。
「あ、やべ、財布忘れた。悪いけど先に帰っといて、ちょっと取ってくるから。」
そう言ってオレはみんなから抜けて、ティアラの家へと再び戻った。すると、ドアの前にティアラが立っていた。
「待ってたよ。折角だし、中で話そうか…」
ティアラの表情は真剣そのもので、いつもの陽気な笑顔は見る影も無い。ティアラの表情につられて、こっちも真剣な表情になる。
オレは、さっきの仏壇がある部屋に案内された。
普通にしていたら何も聞こえないが、耳を澄ませば、やはり微かに聞こえる。オレは座るように促され、静かに床に座る。
「まず、もう気づいてると思うけど、お父さんが医者をしてるってのは嘘なんだ…まあ正確には、医者だった…が正しいかな。」
ティアラはオレを見ずに話し始める。
オレはその様子を見ただけで、かなりティアラの心を抉る話だと悟った。
「大丈夫か?話したくなかったら話さなくても良いんだぞ?」
「……ううん、大丈夫。これは、私自身への戒めでもあるから…」
そう言って、ティアラは話を続ける。
オレはそれを、終始無言で真剣に聞いていた。




