22,入学試験(13)
この第五訓練所にいる全ての人がオレ達2人の戦いを見守る。
いきなりウェアがオレの前に”瞬間移動”してきた。そしてオレの腹にパンチを繰り出す。流石に何度もされれば慣れる…ことはなく、オレはまた攻撃を食らってしまう。まあ、慣れたと言えば、一瞬にして目の前に現れるウェアに対する驚きには慣れた。
オレはまたウェアを捉えようとするが、”瞬間移動”で逃げられる。
(何のつもりだ?痛みでオレの体力を削る気か?ならば逆効果だぞ。それなりの距離を一瞬の間に2回も”瞬間移動”するお前の方が体力を使うに決まってる。)
オレがそんなことを考えていると、またウェアがオレの前に”瞬間移動”をして、オレの腹にパンチをする。そしてまた”瞬間移動”で逃げる。同じところを2回連続で殴られたので、流石に痛く、オレは膝をついてしまう。
(それにしても、本当に何がしたいのか分からない。)
ウェアはああ見えてもそれなりに頭もきれる。無策でこんなことをするとは思えない。
そしてまた、ウェアが”瞬間移動”した。しかし今度はオレの目の前ではなかった。
(どこだ?後ろか?)
っとオレが後ろを振り向くと、上から嫌な気配がしたので、”サイコキネシス”で自分を操って、横に緊急回避をした。するとすぐに凄い衝撃音が聞こえて、オレの右足を激痛が走った。
(なるほど、同じところを連続で攻撃してきたのは、オレに膝をつかせ、注意を下に向けるのと同時に、動きを制限するためか。長期戦ではなく一気に勝負をつける狙いか。)
どうやら、ウェアがオレの真上に”瞬間移動”して上から踵落としをしてきたようだ。その衝撃に、辺りは土煙が少し上がっている。
オレはそれを見て、良い作戦を思いついた。
が、その前に言いたいことがある。
「お前な、オレを殺す気か?普通に今の攻撃、頭とかに当たってたらヤバそうなんだけど…」
「大丈夫大丈夫、お前はその程度じゃ死なないよ。気絶させてからゆっくりと場外へ落とそうとしただけだから。」
「…」
死ななきゃ良いってもんじゃない。
(それに確かに死にはしないかもしれないが、当たりどころによってはかなり危ないところまで行くんじゃ…)
っとオレは思うんだが…まあいいか、そっちがその気ならこっちも殺す気でいく。オレはさっき思いついた作戦を実行する。
このリングの床は石で出来ているのだが、それは1枚の大きい石板ではなく、小さい石板が何枚もぎゅうぎゅうに詰められている。この小さい石板なら、”サイコキネシス”で操れそうだ。
そう思い、オレはオレから半径40m以内の全ての石板を”サイコキネシス”で操り、上空へ。その上にオレとウェアも乗っている。周りの観客が急なことに驚いて、ざわめいている。
「! なんだ!?」
ウェアが驚いて、地面が揺れてるのもあって尻餅をついてしまう。オレは上空30mぐらいのところへ行くと、”サイコキネシス”を解除する。
石板がオレとウェアとともに落ちる。オレは空中浮遊で、ウェアは少し上に”瞬間移動”して落下の衝撃を回避したようだ。だが、オレの狙いは落下の衝撃ではなく別にある。
「なんだ?何も見えねぇ。」
そう。オレの狙いは土煙でウェアの視界を悪くして、”瞬間移動”を封じる狙いだ。ウェアの”瞬間移動”は視線が通るところへしか”瞬間移動”出来ないからな。
しかも石板が割れたことで、石礫という強力な武器まで作れる。一石二鳥の作戦だ。
「ウェア、そんなに視界が悪かったら”瞬間移動”出来ないよなぁ?今のうちに場外へ落ちるなら、痛い目にあわずに済むぞ。」
「上等だ。」
ウェアはまだ諦めないようだ。まあいい。
「…知らないぞ。さっきのお返しだ。殺す気でいくぞ。」
まあ、ウェアなら死なないだろうし大丈夫だ。
さて、オレはどうやってウェアを攻撃するのか?ウェアの”瞬間移動”を封じたのはいいが、こっちも視界が悪く、ウェアが見えない。だが、別にそんなことはどうでもいい。
オレは近くにある無数の石礫を”サイコキネシス”で操作する。そしてそのまま、オレの周りを高速で移動させる。風を発生させ、土煙を払ってしまうことになるが、まあそんなに問題はない。すぐに片が付く。
すると、2時の方向の30mぐらい先でヒットした。そこに、オレは大量の石礫で攻撃し、オレもそこへ向かう。
ウェアが見えたので、ウェアを”サイコキネシス”で捉えて動きを鈍らせる。そのままウェアがアンにやったみたいに、ウェアを追い詰める。辺りはまだ土煙がたってて視界が悪く、ウェアが”瞬間移動”出来ない。そしてそのまま場外へ。
「……まあ、今回はオレの負けか。良い作戦だったな。」
ウェアがそんなキャラじゃないことを言ってきた。正直気持ち悪い。良い言い訳が思いつかなかったんだろうか。
「どうした急に?なんかキャラじゃないぞ。」
「オレのキャラどんなだよ!」
そんな風な会話をしていると、ようやく土煙が晴れてきた。
周りの観客が驚いたようにこちらを見ている。まあそりゃそうか。急に土煙で見えなくなったと思ったら決着がついてたんだもんな。しかもウェアは結構怪我を負ってるし。
オレの石礫で、大きい怪我はないものの、軽傷が大量にある感じだな。一応謝っておくか?
まあいいか。なんか煽りみたいになるし。
こんな感じで5次試験が終了した。
するとアンがすごい勢いでオレ達のところへ来た。
「ちょっと、ただでさえ不利な私に2体1ってどうなのよ。これはもう私の勝ちでもいいんじゃない?」
そうだアンのことを忘れてた。オレ達は試験の疲れもあったので、適当にアンを流す。
残る試験はペーパーテストだけだ。




