18,入学試験(9)
オレ達はまた広場に戻っていた。
辺りはもうすでに少し暗くなっている。
それと、オレ達と同等レベルのやつも段々と分かってきた。
受験番号501〜1000の氷使い,2001〜2500の炎使い,2501〜3000に2人,4001〜4500に2人
つまり合計6人いる。
“スキル”を司る部分は脳の中にあり、”スキル”を極めるということは、その部分が成長するということである。だから、子供の頃の方がより早く極めることが出来る。子供の頃の方が物覚えが早いのと同じようなものだ。父がオレの”スキル”が分かり次第、修行に入ったのはそのためだ。
成長スピードが早いということは、それほど差が開きやすいということである。だから、規格外の奴が毎年数人生まれるのだ。それに、”スキル”を極めるには、才能と努力もかなり大切である。
「”スキル”の早分かり」と「才能」と「努力」
この3つが揃った者が、今年はオレ達を含めて9人ということだな。
ちなみにこのことは、それなりにマイナーな情報のため、親が知らない可能性も十分ありえる。オレのところは親が元軍少将だから知っていて当然だが。
多分オレが知らないこともまだまだある。
父が「詳しいことは学校で聞け」と言っていたから、学校に入ればもっと詳しく知れるだろう。
オレ達は、第一訓練所へ呼ばれた。
主に身体能力の試験らしいが、どういったものなんだろう。
第一訓練所へ着くと、崖だった。それにかなり大きくて高い。
だが、こんなに高い崖がルーグラン校にあるなんて聞いたことがないが、まさか”スキル”で作ったのか?
ルーグラン校のことだからあり得る…
崖の周りは、第二訓練所と同じようなグラウンドの小さいバージョンだ。だが、この崖の部分もグラウンドなら、ちょうど第二訓練所と同じぐらいの大きさのような…まあいいか。それより試験に集中しよう。
例によって、また教師が前に立って説明する。
「この崖は、我が校の教師が”スキル”で作った崖です。」
…やっぱりそうだったのか…この大きさの崖を作ったとなると、かなり”スキル”が極められている。いや…もしかしてこれを作ったのは、ガイア・ラマスタートさんか?
ガイア・ラマスタートさんとは、我が国クラントに3人いるとされる超越者の1人で、”地形生成”の”スキル”を持っている。
超越者とは、”スキル”を究極まで極めたとされる者のことを言う。超越者は問答無用で軍の中将以上であり、この学校に教師としている可能性がある。
(確かに、ガイア・ラマスタートさんならこのくらいの崖ぐらい余裕だろうな。)
オレがそう思うぐらい、超越者は凄い存在なのだ。
教師が続けて説明する。
「この崖の上に、このバッジが置いてあります。」
そう言って、ルーグラン校の校章の入ったバッチを見せる。
「皆さんにしていただく試験は、”スキル”を使わずにこの崖の上まで登り、このバッジを取ってから降りていただきます。今回の試験は、そのタイムを測らせてもらいます。」
(なるほど、試験の内容は分かったが、”スキル”の不正使用をどうやって見つけるのだろうか。)
オレがそんなことを考えていると、すぐに答え合わせをされた。
「なお、皆さんの中には知っている方もいるかもしれませんが、”スキル”の使用を確認する装置がございます。それによって、皆さんが”スキル”を使っていないと判断させてもらいます。」
そんな装置があるのか。やはりまだまだオレの知らないことは沢山ありそうだな。
「なお、皆さまの安全性についてはご安心下さい。崖から落ちても、すぐに救助出来るように人員を配置させております。それでは、全員で登るのは少々窮屈だと思いますので、100人ずつ試験を行いたいと思います。」
いくら大きい崖と言っても、流石に500人が一斉に登るには無理がある。
「では、受験番号1501〜1600番の方は、崖の下へ移動して下さい。」
いよいよ試験が始まるようだ。




